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Archive Interview – スティーヴ・ガッド #1〜進化と円熟を極めたドラムの“神様”〜

  • Interview & Text:Rhythm & Drums Magazine Interpretation & Translation:Akira Sakamoto Photo:Taichi Nishimaki

現在も精力的な活動を続けるドラムの神様=スティーヴ・ガッド。NAMM Show 2020で大きな話題となった、世界800台限定のガッドのシグネチャー・スネア “YSS1455SG” が、6月27日(土)に発売決定! ここではその発売を記念として、リズム&ドラム・マガジン2015年9月号の表紙特集で掲載されたアーカイヴ・インタビューの一部を特別公開! 当時70歳の節目を迎えた彼が語る“唯一無二のタイム&ダイナミクス”についてのセクションをお届け。

NYに出たばかりの頃は
グルーヴを意識して
シンプルに演奏するのに苦労した

●ちょっと遅くなりましたが、まずは70歳おめでとうございます。
スティーヴ どうもありがとう。

●先月末には、70歳記念のコンサートも行われたそうですね。
スティーヴ そう、故郷のニューヨーク州ロチェスターでね。スティーヴ・ガッド・バンドでコンサートをやって、新しい『70ストロング』の紹介もしたし、ジェイムス・テイラーがゲストとして出演してくれて3曲歌ってくれたし、とてもうれしかったよ。

●長いプロ・ドラマー人生の中で、節目となる出来事がたくさんあったと思いますが、ここがキャリアのスタートになったと思うターニング・ポイントはどこでしょう?
スティーヴ 僕はイーストマン音楽院の学生だったときにトニー・レヴィン(b)と知り合ったんだけれど、彼は大学を卒業してニューヨークに出て、僕は3年間兵役に就いた。そして、除隊後にニューヨークへ出たんだけど、当時の僕は彼と奥さんのところに居そうろうしながら、トニーがそれまでに出会っていたいろいろな人を紹介してもらって、そこから僕のキャリアがスタートしたんだ。

●最初の頃の仕事で一番思い出深いものは何でしょうか?
スティーヴ ニューヨークで思い出深い仕事の1つは、チック・コリアの『The Leprechaun(妖精)』のレコーディングかな。バンドとストリングス・セクションが一緒にライヴ形式で演奏するという難しいセッションで、音楽も素晴らしかったからね。しかも譜面を見ながらの演奏だったし、とにかくそれまでに自分が身につけた能力を総動員しなきゃならなかった。あのことは忘れられないね。もちろん、他にも忘れがたいセッションはたくさんあるけれど、あのレコーディングはそれまでに学んだことや練習したことを大いに活用する必要があったし、それまでの積み重ねがモノを言ったセッションだったんだ。テクニックの点でも譜読みの点でも大変だったからね。

●『The Leprechaun(妖精)』のレコーディングで一緒だったエディ・ゴメス(b)とは、その後も(チック・コリアのアルバムやステップス、マンハッタン・ジャズ・クインテットなどで)しばしばリズム体を組む機会がありましたね。
スティーヴ そうだね。とにかく、あの頃はたくさんの素晴らしい機会に恵まれたよ。

●では印象に残っているコンサートはありますか?
スティーヴ それもたくさんあるけよ。ポール・サイモンのセントラル・パークでのコンサートや、エリック・クラプトンやジェイムス・テイラーとのコンサート……僕はそういった人達と一緒に音楽をやる機会に恵まれて、本当に幸せだった。だから、いろいろな状況でいろいろと特別な経験をすることができたんだ。

●長いドラマー生活の中でスランプに陥ったことはありますか?
スティーヴ ニューヨークに出たばかりの頃は、グルーヴを意識して、よりシンプルに演奏するのに苦労したね。僕は大学を出て除隊したばかりで、テクニックはあったけれど、ポップスを演奏した経験はあまりなかった。だから、僕はそれまでに考えたことがなかった部分を意識しなきゃならなかったんだ。よりシンプルに演奏することや、音楽的に重要な部分に注意を払う必要があったからね。

●70歳となった現在も、パワフルかつソリッドでグルーヴィなドラミングを繰り広げていますが、コンディションをキープするために、何か特別なことをしているのでしょうか?
スティーヴ コンディションをキープするためには、運動も大事だと思うけれど、たくさん仕事をしていることが役立っていると思う。実際にキットに座っていろいろな音楽を演奏する機会に恵まれているからね。太らないよう、さっきも話したように運動をしたり、食事に気をつけたりもしているけれど、仕事をしていないときには練習により多くの時間を割いて、とにかくできるだけ演奏する時間を多くするようにしているんだ。歳を重ねるにつれて、長い間演奏しなかった後に元のペースを取り戻すのが難しくなる。だから、とにかく動き続けることが肝腎なんだ。

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