PLAYER

基礎練が大好きなんです
自分で広げていける
永遠に発展し続けるじゃないですか

●ハイハットのニュアンスで言えば、「八番街ピコピコ通り」はBメロのハイハットのアクセントが凝ってますよね。

タケイ そうですね。そういう朝日のギターのパターンに反応したくなっちゃうんですよ。何とかしてビートは維持しつつも遊びたかったんですよね。あまり自然じゃないというか、身体をそういうふうに動かしたことがなかったので、ちゃんと練習しないとできないフレーズでした。コープランドのハイハット・ワークも意識しましたね。

●おそらく、今までだったらスネアのゴーストなんかを細かく入れたりしてたのを、8ビートを維持しながらハイハットのアクセントで変化をつけたという。

タケイ そうですね。なので手クセではない、考えたフレーズですね。

●そういった手クセにないフレーズを取り入れようと思ったきっかけはあったんですか?

タケイ やっぱり去年の外出自粛期間に、家でパッド練習とか、がっつり練習する時間ができたので、そこが大きいですね。例えばルーディメンツとか、今まであまりやってきてなかったんですけど、オール・アメリカン・ドラマーを完走しようと思って、初めてちゃんと向き合ったんです。そういう中で例えばパラディドルとか、フラムとかドラッグとかを何となくプレイに反映できてるのかもしれないですね。自然と出てくるのもあるし、意識してここ使ってみようとかはしました。

●他にも意識して入れてみようかなって思ったフレーズはあるんですか?

タケイ ありますあります。「はよファズ踏めや」の2番のAメロなんですけど、ハイハットとパッドを叩くときにパラディドルを使ってますね。初めてインワード・パラディドルをビートの中に組み込んだんです。意識して取り入れたというのもありますけど、今までだったらクオリティが伴ってなくて、避けてた手順とかを自信を持ってできるようになったっていうのはありますね。

●「気になっていく」も、ネクライにはめずらしいスウィング系の楽曲ですよね。

タケイ そうですね。今までやったことない曲調で、僕自身のルーツにもそんなにないんです。スウィングしたジャズ、ビックバンド系なんかは、通ったことなかったんですよね。

●通ってこなかったジャンルを練習するときって、ビートやフィルインそのものを重点的にやっていくことが多いと思うのですが、タケイさんは基礎練習もすごく大事にしてますよね。

タケイ 基礎練が大好きなんです。ドラムは独学なんですけど、基礎練って自分で広げていけるじゃないですか。永遠に発展し続けるというか。ただ、やっぱり今になって本当に習いたいなって思ってきてるんですよ。知識とかも多分すごく偏ってるし、自分の中では広くやろうとしてはいるものの、やっぱり独学って不足が生まれてきちゃいますよね。

去年の初めにブライアン・ブレイドが来日して、見に行ったんです。めちゃめちゃ感動しちゃって、とんでもない表現力だなって。同じ楽器を使ってると思えませんでしたね。シンバルとか、1枚なはずなのに全然違う音色が聴こえてきたり。そこからブライアン・ブレイドが叩いた曲とかジャズの曲も少しずつ聴き始めたんですけど、何がどうなってるのかっていうのが理解できないんですよ。そういう部分はジャズとかをちゃんと習ったり、幅広い知識があればもう少し理解を深められるのかなって思います。

●そのスウィング系の「気になっていく」の中でも、間奏とアウトロにレイドバックしたような、最近のトレンドを感じさせるフィルが入っていますよね?

タケイ ちょっと“時空を歪める系”のフィルをやってみたくなっちゃって(笑)。今までは入れどころが難しくてやる機会がなかったんですけど、ここだって思って、5連符の1個目と4個目をハイハットで刻むみたいなやつを入れてみちゃいました。「気になっていく」の制作期間中に、ずっと真夜中でいいのに。の「暗く黒く」っていう曲を聴いて、ドラムはよっち(河村吉宏)さんで、ラスサビ前ぐらいに、思いっきり時空が歪んでるフィルが入ってたんです。それを聴いて、こういう曲でもこういうフィル入れられるんだって、勇気をもらったんですよね。

●メンバーの反応はどうでした?

タケイ もともと仮歌が入ってた部分で、ちょっとしたブレイクのつもりだったみたいなんですよ。なんですけど、このフィルをぶっこんだことによって、メロが変わり、ドラムのフィルのゾーンに変化しちゃって。もちろんシンプルにやる選択肢もあったんですけど、レコーディングでやったら面白がってくれて、よし変えようってなりました。シンプルに勝負したいっていう気持ちがこのアルバムを通してあるんですけど、やっぱりちょっとフックになるフィルとかビートを入れたい性分なので、入れてみました。

次ページ▶︎“今回アルバムを作ってて一番悩んだのが、
熱量のコントロール、テンション感だったんです”