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Report – #STDRUMS×TOSHI NAGAIによる魂のドラム・ソロ・ツーマン RICH BUDDIES Vol.5

  • Text:Rhythm & Drums Magazine Photo:Masahito Takahatake

ドラム・セット1台で魅せる表現の多様性
コロナ禍でこそ実現した情熱のツーマン・イベント

独自性溢れる“人力ドラムンベース”を主体とした路上パフォーマンスが話題となり、平沢 進+会人(EJIN)のツアー・サポートでもそのグルーヴィなプレイとテクニックで注目を集める、#STDRUMS ユージ・レルレ・カワグチ。4月16 日、彼が主催するドラマーのツーマン・イベント「RICH BUDDIES vol.5」に、GLAYや氷室京介といった名だたるアーティスト達のサポート・ワークでも知られるTOSHI NAGAIが参戦。2人が渾身のドラム・ソロを披露し合うということで、編集部は会場の東京・渋谷RUBY ROOMへと足を運んだ。ここでは、そのレポートをお届けしよう。

この日のトップ・バッターは、TOSHI NAGAI。ステージに上がると、まずは簡単な挨拶と共に、#STDRUMSとの出会いや本イベントへの参加経緯を説明。「俺のドラムの世界におつき合いください」とトークを締め、マレットを手に持つと、早速パフォーマンスが開始された。

会場に用意されていたキットは、パールのクラシック・メイプル・シリーズで、1バス2タム1フロア・タムのスタンダードなセッティング。マイナスワン音源は使用せず、このセット1台のみで30分間に渡るロング・ドラム・ソロを繰り広げるという。タイトかつ繊細なスネア・ドラムのオープン・ロールに始まり、ダイナミクス豊かなビートを流れるように刻むと、徐々にタムを絡めてドラム・サウンドの奥行きを広げていく。

マレットを振り上げる動作も大きくなっていき、“タイコを鳴らす”という打楽器の原点を思い起こさせるような演奏で会場を引き込んだかと思うと、今度はバス・ドラムのダブルも絡めた豪快な高速ドラミングでオーディエンスを圧倒。ヘッドに打ちつけられてほつれかけたマレットの先端部からも、持ち前のパワーの強さがうかがえる。

前半の約15分間はタイコ類だけを使い原始的なビートを叩き込んだところで、TOSHIがマレットをスティックに持ち替えると、クラッシュの一打を皮切りに、金モノも絡めたドラム・セット全体のアプローチへと移行。ハイハットのオープン/クローズやスネアのクローズド・リム・ショットも用いた豊かな音色使いに、3連系のリズムやグルーヴィなジャングル・ビート、さらにはレガートを用いたジャジーなアプローチなども織り交ぜ、飽きの来ない展開で楽しませる。

終盤にかけて徐々に手数を増やし、スリリングなプレイを見せた後、いったん繊細なビートで緩急をつけたかと思うと、マシンガンのような爆発力を持つ圧巻のドラミングが炸裂! 手数足数の多さとパワーがかけ合わさった地鳴りのような轟音と共に、タイトかつスリリングなビートを繰り出すと、オーディエンスの歓声と拍手に包まれてTOSHIのパフォーマンスは終了した。スケールの大きなプレイの1打1打に長年培われた技術と経験が込められ、ドラムの表現の可能性を無限に引き出すかのような、貫禄のパフォーマンスだった。

TOSHIに続いて、主催の#STDRUMSがお馴染みの覆面スタイルでステージへ。同じドラム・セットにサイド・スネアを加えたセッティングで、まずはライドを刻み、インプロヴィゼーションのように展開していく楽曲に合わせて、アグレッシヴかつグルーヴィなビートを鮮やかに叩き込んでいく。楽曲がいったん止み、ドラムだけのセクションに入ると、細かいブレイクを効果的に織り交ぜた独特のビートを繰り出してオーディエンスを引き込む。

楽曲もさまざまな曲調のものが用意されており、#STDRUMSはブレイクビーツを用いたモダンなアプローチを軸にバラエティ豊かなプレイを繰り広げる。近未来をイメージさせるナンバーに切り替わると、楽曲と遊ぶようなビートで心地良い音世界を作り出したかと思えば、ハードで目の覚めるようなアプローチを盛り込んで会場をハッとさせる。民族音楽を想起させるラテン的な曲では、メロディをなぞるようなドラミングや、ウラ打ちのダンス・ビートに自然と身体も揺れてしまう。

ホーンの音が乗るムーディな曲に移ると、楽曲の後ろでメロディを支えるプレイから、徐々にドラムが前面に出ていくようにボリューム感を上げ、セット全体を縦横無尽に行き交うアグレッシヴなプレイへと変化し、オーディエンスからも歓声が上がる。音数を絞ったシンプルな楽曲では、細やかに緩急をつけた独特のリズム&テクニカルなプレイを存分に発揮。情感豊かなメロディを生かしつつ、ドラム・セット全体を使った奥行きのあるサウンド&アプローチで華を持たせる。

スティックとマレットを器用に持ち替えながら、千変万化するビートをシームレスに紡いでいくドラミングに瑞々しさを感じていると、終盤ではヘヴィなハード・ロック調の楽曲に変化。覆面を脱いでマイクを引き寄せ、歌いながら叩くパフォーマンスや、シンコペーションを絡めた大きなビート感でシンバルも豪快に鳴らし、会場全体を盛り上げたところで演目は終了を迎えた。

▲左からTOSHI NAGAI、#STDRUMS(ユージ・レルレ・カワグチ)。

2人のドラマーが同じキットを使ってパフォーマンスする様子を見ていると、それぞれの持ち味やドラムを用いた表現の多様性をあらためて実感させられる。職人技の光るストーリー展開と大会場を思わせる貫禄のプレイで会場を圧倒したTOSHI NAGAIと、まるで体験型アトラクションのように多彩でエンターテインメント性に富んだ演奏を聴かせた#STDRUMS。彼らの個性が遺憾なく発揮されたパフォーマンスに、コロナ禍だからこそ企画されたこの貴重なツーマン・イベントの意義を深く感じた一夜であった。

◎Information

TOSHI NAGAI
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#STDRUMS ユージ・レルレ・カワグチ
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◎Live Schedule

■渋谷奇天烈大百科
6月13日 東京・渋谷CYCLONE
#STDRUMS × 吉田一郎不可触世界バンド

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■RICH BUDDIES vol.6
6月18日 東京・渋谷RUBY ROOM
#STDRUMS × Violent Chemical

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