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Lesson – Pick Up Next Generations #1

  • Score & Text:Yusuke Nagano Illustration:Yuji Shiozaki

#1 JD Beck

形を変えながら進化していく音楽の中で、めきめきと頭角を現す“新世代”のドラマー達。本連載では、次代を担うであろう、注目のプレイヤーをピックアップ! YouTubeで観られる映像をもとに、彼らのドラミング分析をお届けしていく。今回取り上げるのは、16歳の新星、JD Beck。若手キーボーディストとのセッションから、プレイをチェックしてみよう。

個性的なセッティングで届ける多彩な音色と
フレーズがエモーショナルに迫るドラミング

アメリカのドラム専門誌「MODERN DRUMMER」が行った最新のリーダーズ・ポールで、期待のニュー・カマー1位に選出された、新進気鋭のドラマー、JD Beck。テキサス州のダラスを拠点に活動する彼は、現在16歳。5歳でピアノを始め、8歳でドラムに転向。スナーキー・パピーのロバート“スパット”シーライトをはじめとする地元の著名ドラマー達の指導を受けて、その才能を見出されます。

今回は、ヴィックファースのYouTubeチャンネルに上がっている動画「vf Jams with JD Beck & DOMI」から、JD Beckのプレイを検証していきます。

まず注目なのは、その個性的なセッティング。タム類はフロア・タムのみで、シンバル類は、クラッシュとライドを兼用で1枚というシンプルな構成。ハイハットは、スプラッシュを組み合わせたと思われる超小口径シンバルをセットし、スネアやフロア・タムにはさまざまなミュート・グッズやスプラッシュなどを“アドオン”することで、余韻が短く、タイトで切れの良い音色を引き出しています。

打ち込み的なフィールを含むリズムに
ヒューマン・タッチのグルーヴを加味

曲の冒頭は、スネアを中心に組み立てたリズムからスタート(Ex-1)。細かい32分音符や16分音符を緻密に絡めて、小気味良くダイナミクスを演出します。左手はアドオンしたスプラッシュを中心に叩いて、パーカッシヴな音色を巧みにブレンドするのもポイントで、打ち込み的なフィールを含むリズムに、ヒューマン・タッチのグルーヴを加味して邁進させていきます。また、スネアのピッチはかなり高めの印象で、これも切れ味の鋭さに貢献しています。

独特の浮遊感を演出する
シンバル・ワークの多彩な音色変化

Ex-2は展開部分で、1小節目はスプラッシュ・シンバルを組み合わせた小口径ハイハットを、フット・スプラッシュから手で叩くハーフ・オープンへと振り分けて独特の浮遊感を演出。2小節目の16分刻みのシンバルの均一なタッチや、打点を徐々にカップに寄せていく音色変化も印象的です。さらにセカンド・キック的な音色のフロア・タムとクリスピーなスネアのコントラストも抜群の心地良さです。

特徴的なリニア・アプローチで
リズムがよじれるような効果を醸し出す

Ex-3は、キーボード・ソロのバッキングにおける特徴的なパターン。3連符の2打目をハットで強調して、リズムがよじれるような効果を醸し出しています。手足が重ならないリニア・アプローチにおけるフット・ハイハットの使い方もポイントです。

細かい音符を駆使して
パーツを多彩に叩き分けるプレイ

Ex-4はドラム・ソロの後半で、細かい音符を駆使しながらパーツを多彩に叩き分けるプレイが鮮烈です。フレーズを背面からリードするように踏んでいる抑揚豊かなキック。そしてアグレッシヴな高速移動でもまったくブレを感じさせないスティッキングが見事で、フレーズを緻密にまとめる安定感に舌を巻きます。

まとめ

16歳にしてすでに貫禄さえ感じさせるJD Beckのプレイを抜粋しましたが、いかがでしたでしょうか? 全編に渡ってシンプルな楽器構成から多彩な音色を生み出すセンス、クリスピーな音色を駆使した連打の躍動。さらにはメカニカルな要素を含みつつ、自在にビートを伸縮させる表現も見事で、際立つ個性と共に、フレーズがエモーショナルに迫ってきます。

年内に、共演のキーボーディスト、ドミ・ドゥギャルとのアルバムもリリースされる予定ということで、ますます注目が高まっていくでしょう。今後の飛躍がとても楽しみな逸材です。

【Another Playlist】

今回取り上げた映像の他にも、YouTubeには数々の動画がアップされている。こちらもチェックしてみよう!

◎Information
JDBeck HP Twitter Instagram

◎Profile
長野祐亮(Yusuke Nagano):15歳でドラムを始め、つのだ☆ひろ、そうる透に師事。大学在学中からプロ活動をスタートし、数々のレコーディングやアーティストのサポートで活躍する。現在はインストラクターや執筆活動を通して後進の指導も行っている。「ドラマーのための全知識」、「1日15分!自宅でドラム中毒」など数多くの著書がある。

◎Information
長野祐亮 Twitter

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