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    Column – アプリで変わるドラム・ライフ Gadget for Drummers ♯6

    • Text:Makito Yamamura Photo:milindri(iStock) Illustration:PCH-Vector(iStock)

    みなさんこんにちは! 今年の夏はずいぶんと雨が多いようで、ただでさえコロナ禍で動くべきでないわけですが、余計に家に籠りがちになりますね。今回は、ガジェットでドラム譜面というテーマでお送りします。音楽を聴いて、動画も楽しんで、練習したくてウズウズしているアナタ、譜面を練習や演奏のお供にしていくことは、勉強という意味でも、大きなステージを目指す意味でもとても大事なことです。譜面のデジタル化もだいぶ進化していますので、自宅時間を有効に! ぜひ譜面が苦手な人こそチャレンジを!

    Vol.06 ドラム譜を作れるスグレものアプリ

    いきなり私事になりますが、印刷用の譜面を作る浄書という分野に少し関わったことがありまして、昭和30年代の日本の浄書家は世界でも認められる素晴らしい譜面を世に残しております。

    その後パソコンが進化し、GUIが登場して画面上で譜面を作れるようになったとき、もちろんそれは夢のようなことながら、譜面というものの抽象性、記譜のルールの複雑さゆえに、相当に優れたソフトウェアでも、私達が普段見慣れていた浄書譜面の読み取りやすさ、美しさを実現するのは難しい面がありました。

    言い換えれば、パソコンを使った利便性と引き換えに、ある意味機能美を損ねた譜面が散見されるようにもなりました。似たようなことは、写植文字とか、録音のアナログ~デジタルなどでも言われることではありますが、革新的なものが登場してしばらくしてから、また古きものの良さが広まる面もありますね。

    さて、こんなクドクドとした説明をした理由は、そんな難しい譜面の世界ではありながら、そこに関わる人達の力により、デジタル上でより精度の高い譜面を再現するためのオープン・ソースも充実し、美しく進化し始めた譜面環境が容易に手に入るようになってきたということです。

    もとより、RealBookやDAWソフト、このコラムでも紹介してきた演奏補助のアプリ、ミュージシャンも資料をPDFや音源リンクで送り合い、ドラマーもタブレットをセッティングする時代であり、あらゆる環境が統合され、より一層活用される率が上がってきているのを感じます。

    ドラム譜面にガジェットを使う

    〜その1 タブレットに手書き!〜

    譜面的活用法のまず最初は、何と“手書き”です。普通に考えると、譜面専用アプリなんかで入力……という考えになりますが、最近はタブレットのペンも良くなってますし、実のところタブレット上に手書きで譜面を書くというデジタルなんだかアナログなんだかわからない使い方、これがなかなかに手軽で便利です。

    世代的にかつては何百枚も譜面を書いていたという現役ミュージシャンであれば、ある意味かなり早いのですね。何枚書いても分厚くならない、“あの譜面、家に置いてきた!”ということもありません。さらにドラマーとしては、構成がわかれば良いというケースも多く、メモ的なものでも十分だったり。実に侮れないデジタル・ガジェットのアナログな活用法です!

    〜その2 譜面用アプリを使う〜

    譜面を作る作業ともなれば、やっぱり画面の大きなデスクトップPCで……という時代もありましたが、今はスマホでもかなり譜面作れますね。PC~タブレット~スマホと互換性のあるもの、PCで作ったものをスマホでブラウズできるものなど、連携できるものもあります。

    DAWソフトでもある程度の譜面表示はできますが、やはり譜面用アプリの方がまだまだ使いやすいかなとも思います。浄書用ソフトもたくさんありますが、今回はドラム譜が作成でき、最低限スマホでもエディットできるものを2つ紹介します。

    ■Notion/NOTION Music, inc.(iOS:1,840円/手書き機能980円 *アプリ内課金あり)

    タブレットで譜面をというドラマーならばこれを使ってる方も多いのではないでしょうか。元はPreSonusという楽器業界でもよく知られたメーカーのPCソフトで、今はスマホ版を別の会社が配布しているからか、値段が多少上がって手書き入力機能なども別課金になっていますが、煩雑になりがちなドラム譜の入力もとてもわかりやすく、よくできたソフトだと思います。なかなかの高機能ですが、スマホでもけっこう普通に作業に没頭できます。

    個人的にはタブレットでタッチ・ペンを使っての入力がオススメ。音符入力時のボタン操作が確実にスピード・アップします。手書き入力は上下2段のドラム譜には対応していないですが、スケッチ的に入力するときには、やはり便利です。

    Notion Apple

    ■Flat/Tutteo Limited(PC、iOS:月額799円~ *フリー版あり)

    こちらはとりあえず使ってみるならフリーで、機能制限の解除はサブスクです。PCからはブラウザ上のWEBアプリとなり、iOSからはブラウザ上でも動きますし、専用アプリもあります。慣れるとスマホもPCも操作感が変わらないのが良いですね。ファイルはFlatのクラウド上にあるので、PC~タブレット~スマホと、ログインさえすれば端末を問わず同じファイルにアクセスできるのは便利です。

    前述のNotionも不自然さの少ない譜面表示ですが、Flatはリハーサル・マークやテンポ記号、テキスト周りのバランスが良いように思います。また、デフォルトのドラム・サウンドが何気にガッツがあり、ダイナミクスの違いも聞き取りやすいです。どの環境で開いても、動作も安定していますね。

    Flat PC Apple

    比較してみる

    さて、この2つのアプリを比較してみましょう。同じ内容を打ち込んでタブレットで表示したものです。音符部分については、なかなかに読みやすい表示を実現していると感じます。他にもいろいろと試してみましたが、どちらも一般的な譜面表記には十分に対応しており、工夫されたインターフェイスで、スマホでもコツコツ譜面入力できました。どちらもテキストの大きさや書体、配置などはもう少し融通が欲しいところもありますね。ちなみに今回Flatはフリー版で試していますので、機能制限がある中で試しています。

    そして、Notionで進行メインの譜面を、そしてFlatで多種のドラム譜を試した画像も掲載します。こういうこともできるんだなというところに興味をもった方は、ぜひ試してみてください! 私はこの記事を書きながら、あらためてタブレット新調したくなりました。夢のような時代ですなぁ! みんなでガンガン使ってどんどん進化していってほしいですね。

    Notion

    ▲マスター譜を作るときにはNotionの手書き機能も便利

    Flat

    ▲ Flatはややこしい譜例でも読みやすい

    ※画像はクリックで拡大表示されます。細かいところも比較してみてください。

    まとめ

    例えばSNSやブログの中で音源や譜例を紹介するとき、今はSoundCloud.comや、SoundSlice.comなど本当に便利かつ有用な環境が使えるようになっています。演奏動画を見ながら、譜面上でカーソルが進んでいく……素晴らしすぎる教材です。

    デジタル譜面を支える部分には、LilyPondなどの楽譜用オープン・ソースやMusicXMLなどの規格もあります。前述のFlatなどもEmbed対応だったりしますし、みんなで簡単なメモからでもデジタル譜面を使うようになっていくと、さらに統合された環境ができてくると思います。なんかややこしいこと書いてるなと思うかもしれませんが、我々が使っているスマホだって、気の遠くなるような技術の構築でできています。ついにここまで使いやすくなってきたデジタル譜面! うまく活用して、音楽とドラムを楽しみましょう!

    Gadget for Drummers

    Vol.01 ドラマー“必須”のメトロノーム・アプリ!
    Vol.02 ドラマーの練習お役立ちアプリ!
    Vol.03 変拍子を扱えるメトロノーム&ガイド・アプリ
    Vol.04 チューニングに役立つアプリ
    Vol.05 楽しく叩くためのモチベーション&インスピレーション・アプリ

    ◎Profile
    山村牧人(Makito Yamamura):ドラム・マガジンでライター・デビュー。セミナー記事や教則本出版、ドラム教室、専門学校、音大のレッスンを通して数多くのドラマーを輩出。リズム教育研究所、尚美ミュージックカレッジ、横浜ミュージックスクール非常勤講師。



    ◎Information
    山村牧人 Twitter