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Drummer’s Disc Guide – 2025 Summer
Summer 2025
【A】=アルバム 【M】=ミニ・アルバム 【E】=EP 【V】=DVD、Blu-ray
【A】高橋幸宏『WORLD HAPPINESS』

d:高橋幸宏/白根賢一
キレキレすぎるビート感覚とドラム・サウンド
プレイする姿と動き、そして誰よりもお洒落な装い
小学生時代にジャクソン5をラジオで耳にしてから、ひたすらブラック・ミュージック一辺倒だった自分が、中学生になってギタリストの友人宅で聴かされていきなり大ファンになってしまったのがサディスティック・ミカ・バンド! 受験勉強真っ最中に親に手紙を書いて観に行かせてもらった初めての国内アーティストが、サディスティック・ミカ・バンド@目黒公会堂……ドラム・セットなんてもちろん触ったこともない自分が、何よりも魅了されて目と耳を奪われたのが高橋幸宏のカッコ良さ……そのキレキレすぎるビート感覚とドラム・サウンドはもちろん、プレイする姿と動きとそして常に誰よりもお洒落な装い。当たり前のようにスタジオ・ミュージシャンとしての高橋幸宏、とどまることがなかったソロ活動を追いかけ続けて半世紀が経ち、その後光栄&幸運極まりない多くの共演と会話を経験させてもらって……そして何とこのタイミングでこんな映像と音源のコンピレーションが世に出るとは……感激感涙以外の何物でもない!!(沼澤 尚/シアターブルック、ブルーズ・ザ・ブッチャー、他)
◎Disc Information
【参加ミュージシャン】高橋幸宏(d、g、vo、etc.)、白根賢一(d)、細野晴臣(b、g、key、vo、etc.)、高桑 圭(b、vo)、小原 礼(b)、高野 寛/鈴木慶一(g、vo、etc.)、小山田圭吾(g、cho、etc.)、高田 漣(g)、LEO 今井(g、p、syn、vo、etc.)、坂本龍一(key、p、vo、etc.)、堀江博久(key、g、vo)、ゴンドウトモヒコ(tp、euphonium、etc.)、他
発売元:日本コロムビア 品番:COZB-2177-2181 発売日:2025.06.06
◎関連記事
【A】伊藤君子『Memories ~ Sings The Lyrics of Alan & Marilyn Bergman』

d:スティーヴ・ガッド
per:ラルフ・マクドナルド
洗練されたシンプルで美しい
ブラシのプレイが素晴らしい新録音3曲
ジャズ・ヴォーカルの“至宝”、伊藤君子さんが、アラン&マリリン・バーグマン夫妻の歌詞にスポットを当てた作品集をリリース。以前から親交のあるスティーヴ・ガッドが新録音3曲と1995年NY録音3曲で参加している。洗練されたシンプルで美しいブラシのプレイが素晴らしい新録音、95年のNY録音ではあの当時のサウンドが蘇る。この音を聴いていたら、リチャード・ティーとスティーヴ・ガッドが共演したライヴを東京で見たこと、ライヴの中で彼らの最高のデュオがあったこと、伊藤君子さんがゲスト参加していたことを思い出した。30年以上も前のことなので記憶が曖昧な部分もありますが、1992年に新宿でそのようなライヴがあったことをインターネットで確認できました。90年代と現在では日米の関係も変わってきていますが、今も変わらず国境を超えて音楽を通して交流を深める関係性に感動する。そのつながりが音楽を深く響かせて心に届くのでしょう。(坂田 学)
◎Disc Information
【参加ミュージシャン】スティーヴ・ガッド(d)、ラルフ・マクドナルド(per)、伊藤君子(vo)、ウィル・リー/エディ・ゴメス/須川崇志(b)、林 正樹/後藤浩二(p)、野力奏一(p、key)、ジョン・トロペイ(g)、マイケル・ブレッカー(sax)、他
発売元:ポニーキャニオン 品番:PCCY.01997 発売日:2025.04.23
【A】Lari Basilio『Redemption』

d:ヴィニー・カリウタ
高速パッセージをユニゾンしながら
この重みなんてまさにヴィニー
不勉強で筆者初聴きとなったギタリストの新作。ギター・インストはけっこうゴリゴリなハードからスムース、ジャズ、アコースティックまで個人的に大好物なだけに、前情報なしに聴き始めると、ハードだがキレ抜群のリフ、機微のあるメロディ、パッション溢れる伸びやかな歌心、透明感のあるトーン、それらを包括する、作為を感じない“ハートビート”……何と気持ち良いサウンドだろう、いつまででも聴いていられる。今号の“テクニック&グルーヴ”で言えば、カースケさんが迷ったように“どっちも”タイプで、まさに本作参加のヴィニー同様すべてがハイレベル。ヴィニーは、19年にバズったマイケル・ジャクソン「マン・イン・ザ・ミラー」のカヴァーをはじめ初期作からフル参加していることからも、両者の相性の良さがわかる。高速パッセージをユニゾンしながらこの重みなんてまさにヴィニー。ショーン・ハーレイとリー・スクラーのベースが剛柔交互に凸凹で聴かせる曲順もいい。(村田誠二)
◎Disc Information
【参加ミュージシャン】ヴィニー・カリウタ(d)、ラリ・バシリオ(g、key)、リーランド・スクラー/ショーン・ハーレイ(b)、マリナ・ジャシント(key)
発売元:輸入盤(配信リリース) 発売日:2025.05.16
【A】布袋寅泰『GUITARHYTHM VIII 』

d:山木秀夫
山木の生々しく瑞々しいプレイを
鮮明に捉えたM1に思わずため息
ふくよかなキックの響きと細やかなアクセントを聴かせてくれるハイハット・ワークからなる大迫力の4つ打ちからスタート。ロー・ピッチにチューニングされたスネアのファットな質感も含め、山木秀夫の生々しく瑞々しいプレイを鮮明に捉えたM1に思わずため息が漏れてしまう。その重厚感を維持しつつも軽やかなシンコペの疾走感で聴き手を扇動するM3では、中盤の手に汗握るシアトリカルな展開を経て再び疾走する際の3発キックに圧倒され、ミニマルなカッティングから始まりつつ、終盤さまざまなSE、パーカスまでもが追加されるM4では、そのすべてを受け止めるビートの器にうっとりだ。ちょっとだけトーキング・ヘッズなんかも思い起こさせる感じも何だかうれしかったです。で、うれしかったと言えば、続くCharとの共演作M5には何と「Smoky」と「新・仁義なき戦いのテーマ」からの引用が。これにはもう完全にヤラれてしまいました。くそう、カッコいいなあ。(庄村聡泰)
◎Disc Information
【参加ミュージシャン】山木秀夫(d)、布袋寅泰(g、vo、program、etc.)、Char(g)、KenKen / 井上富雄(b)、奥野真哉(key)、岸 利至/石野卓球(program、etc.)、エリカ・フットマン(cho)、他
発売元:Virgin Music 品番:TYCT-60247 発売日:2025.04.16
【A】Galactic & Irma Thomas『Audience With The Queen』

d:スタントン・ムーア
per:マイク・ディロン/ペドロ・セガンド
変化球を使わず、リズムを転がしていく
スタントンのドラミングが何とも素敵
90年代から活動を続け、2000年代に入ってからはサンプラーなども駆使し、ニューオーリンズ的なファンクネスを全面に出したジャム・バンドとしての顔を売りに、日本でも人気を博したギャラクティック。彼らがニューオーリンズの伝説的なシンガー、アーマ・トーマスと組んでR&Bど真ん中にどっぷりと浸かった作品を発表しました。ドラマーのスタントン・ムーアは、ニューオーリンズのリズムの研究家として一目置かれる存在。ジャズ、ファンクそしてロックのリズムの根幹にあるニューオーリンズの音楽のディープさを再認識。その歴史をも堪能できる傑作です。変化球を使わず、ただただリズムを転がしていくスタントンのドラミングが何とも素敵です。(芳垣安洋/Orquesta Libre、On The Mountain、他)
◎Disc Information
【参加ミュージシャン】スタントン・ムーア(d、per)、マイク・ディロン/ペドロ・セガンド(per)、クリス・アットウェル(b)、ピーター・コノリー(g、p、vo)、サージ・タンキアン(g、vo)、ロバート・マーキュリオ(b)、ジェフ・レインズ(g)、リッチ・ヴォーゲル(key、organ)、ベン・エルマン(sax)、アーマ・トーマス(vo)、アイヴァン・ネヴィル( org) 、リックG. ネルソン(strings)、エリック・ゴードン(tp)、他
発売元:輸入盤(配信リリース) 発売日:2025.04.11
【A】Paolo di Sabatino、Christian Garvez、Dennis Chambers『Groove and Melody』

d:デニス・チェンバース
シンバルとスネアのトーンの美しさ
音色と強弱のさじ加減、“歌”に常に寄り添うプレイ
何と美しく素敵なアンサンブルなのだろう。決して声を張り上げず、心の奥の囁き声を1つ1つ紡ぎ出すような繊細なサウンドに息を呑みました。その中心でリズムとダイナミクスを操る巨匠デニス・チェンバース氏のドラム。とにかく際立っていたのは、シンバルとスネアのトーンの美しさです。音色と強弱のさじ加減、全体の“歌”に常に寄り添うデニチェンのプレイは、円熟した彼の音楽性がいかに奥深く幅広いかを、このアルバム全体を通して物語っています。全員がお互いの音を1音たりとも聴き逃さず、まるで生き物のように自在にウネり、色彩を織りなす究極のアンサンブル。ぜひ静かな場所で音量を上げ、この世界に入り込んで聴いてほしいです!(今井義頼/CASIOPEA)
◎Disc Information
【参加ミュージシャン】デニス・チェンバース(d)、クリスチャン・ガルヴェス(b)、パオロ・ディ・
サバティーノ(p)
発売元:輸入盤(配信リリース) 発売日:2025.04.18
【A】The Cost『Doppler Affection』

d:エル・エステパリオ・シベリアーノ
フィルやテクニカルなアンサンブルで魅せる
エル・エステパリオ・シベリアーノのタイトな超絶技巧
フォロワーでなくともほとんどのドラマーが一度はそのプレイを目にしたことがあるであろうSNS界の超人気ドラマー、エル・エステパリオ・シベリアーノ。どんな難曲をもユーモアを交えながら難なく叩きこなしてしまうカヴァー動画で有名な彼が、自身のバンドの結成を発表してから約1年、ついにアルバムが届けられた! そのサウンドはロー・チューニングでジェント系の質感もある最先端のロックだが、歌メロはあくまでもキャッチー。そしてフィルやテクニカルなアンサンブルで魅せるエルのタイトな超絶技巧が期待通りバンドの独自色を決定づけている! M5では何とシステム・オブ・ア・ダウンのサージ・タンキアンが参加しており、こちらも聴き逃せない。(岡安鋼樹)
◎Disc Information
【参加ミュージシャン】エル・エステパリオ・シベリアーノ(d)、スタントン・ムーア(d、per)、マイク・ディロン/ペドロ・セガンド(per)、クリス・アットウェル(b)、ピーター・コノリー(g、p、vo)、サージ・タンキアン(g、vo)
発売元:輸入盤(配信リリース) 発売日:2025.03.21
【V】かつしかトリオ LIVE TOUR 2024『ウチュウノアバレンボー(仮)』

d:神保 彰
神保&櫻井のリズム体=JIMSAKUによる
ドライヴ感の溢れるグルーヴも存分に楽しめる
日本のフュージョン・シーンの礎を築き上げたCASIOPEA黄金期メンバーで結成された、かつしかトリオの待望の映像作品。作品タイトルでもある1曲目「ウチュウノアバレンボー」から、キャッチーで、かつどこか懐かしさも感じられるメロディとサウンドに引き込まれます。私が憧れている神保さんと櫻井さんのリズム体=JIMSAKUによる、ドライヴ感の溢れるグルーヴも全編通して存分に楽しめます。緊張感の溢れるユニゾン・パートや、コール&レスポンスも随所にあり、ライヴ版ならではの魅力も盛りだくさんです。ライヴ中盤の、神保さんお得意の左足クラーベを生かしたラテン・フレーズ満載のドラム・ソロも聴きどころです。(川口千里)
◎Disc Information
【参加ミュージシャン】神保 彰(d)、櫻井哲夫(b)、向谷 実(key)
発売元:ヤマハミュージックコミュニケーションズ 品番:YCXS-10008 発売日:2025.05.28
【A】T-SQUARE『TURN THE PAGE!』

d:坂東 慧
Dr.坂東の作曲センス、
端正なドラミングはさすがの一言
T-SQUAREのデビューは1978年。同じ年に生まれた僕にとっては幼少時代からさまざまなメディアで無意識に耳にしていた音楽でもある。時代ごとのメンバーや音楽性の変遷はあれど、ここまでくると、もはやT-SQUAREという名前自体が懐の深い老舗の屋号のようなもので、新作の半分は新加入メンバーが手がけた楽曲であるにも関わらず、新旧どちらのファンにとっても“ここでしか食べられない安心安定のT-SQUARE味”になっているのはすごいことだと思う。アルバムの幕開けにふさわしいM1(タイトル最高)、メロディアスな中にさまざまなリズム・アプローチが散りばめられたM7など、Dr.坂東の作曲センス/端正なドラミングはさすがの一言。(木暮栄一/the band apart)
◎Disc Information
【参加ミュージシャン】坂東 慧(d)、田中晋吾(b)、亀山修哉(g)、長谷川雄一(key)、伊東たけし(sax、etc.)
発売元:T-SQUARE Music Entertainment 品番:OLCH-10031 発売日:2025.06.04
【A】角松敏生『Forgotten Shores』

d:山本真央樹/伊吹文裕
高度なテクニックに裏打ちされた鮮やかでキレの良い山本のプレイ
3点だけでも聴き手を揺さぶる伊吹の絶妙なグルーヴ
角松敏生のライヴで個人的に心惹かれるのは、ミュージシャン、楽器、機材が、制作現場の集大成のように所狭しと並ぶステージの壮観さだ。楽器に携わる人間として、あれほど胸の高鳴る景色はない。その様子が目に浮かぶような音のやりとりがこの新譜にも満載。前作に続き、ドラマーには山本真央樹と伊吹文裕が参加。M1、5を叩く山本は、高度なテクニックに裏打ちされた鮮やかでキレの良いプレイ、M2、6に参加の伊吹は、キック、スネア、ハイハットの3点だけでも聴き手を揺さぶる絶妙のグルーヴで、それぞれの参加曲を彩る。コンピュータと共存しつつ、細部には人力によるこだわりもギッシリと詰まった“角松サウンド”は今作も健在だ。(山本雄一/RCCドラムスクール)
◎Disc Information
【参加ミュージシャン】山本真央樹/伊吹文裕(d)、角松敏生(vo、g、key、program)、山内 薫(b)、森 俊之(p、syn、rhodes)、本田雅人/高尾あゆ(sax、fl)、勝田一樹(sax)、エリック宮城/中野勇介/菅家隆介/宮城 力(tp、flugel horn)、中川英二郎/鹿討 奏(tb)、小此木麻里/亜季緒(cho)、他
発売元:Ariola 品番:BVCL-1467 発売日:2025.04.30