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社労士&ドラマーという異色のキャリアを歩み、初の著書『バンドマンが社労士との二刀流で見つけた“無理しない働き方”』を上梓した山中綾華。彼女へのインタビュー後編となるこの記事では、サポート・ドラマーとして深く関わるアーティストの話題や、ドラムの音作りの話、愛用するドラムのことなど、引き続きドラマー山中綾華の現在の姿に迫っていく。そんな彼女の基盤となる考え方がどのように生まれ、どう実践されているか、ぜひ著書も併せて読んでみてほしい。
サポート・ドラムの楽しさは
いろんな人と関わりながら
その人を際立たせること
●乃木坂46の1期生で、現在はモデルやデザイナーとしても活動する川後陽菜さんのソロ・プロジェクトもサポートしていますね。
山中:これもSNS繋がりといいますか、私がドラムと社労士でやっていきますと発信したのが、ちょうど川後陽菜ちゃんとベーシスト/プロデューサーの和田直希さんでドラマーを探されていたタイミングらしくて。そのときに私のことがパッと目に入ったそうなんです。それで楽曲を送っていただいて、私もぜひやりたいっていうところでサポートのお仕事が始まり、ありがたいことに毎回もうメンバー並みに呼んでいただいて、今はライヴにレコーディングにとたくさん関わらせていただいてます。
●昨年リリースされたミニ・アルバム『YONAKA』は、まさに人と人が奏でるバンド・サウンドの温かみを感じる音でした。そういうところでドラムを叩くのはとても気持ち良いのではと想像するのですが、いかがですか?
山中:もちろん楽曲自体が好きなのもありますし、メンバーの川後陽菜ちゃんとベースの和田さん、キーボードの橘 哲夫さんと一緒に音を出しているときの楽しさが本当にすごいんです。 結構自由にやっていいグループでもあるので、毎回フレーズが変わったりとか、アプローチが変わったときに、“じゃあ自分はこうやって応えようかな”って即座に対応するのもとても楽しくて。毎回毎回そのときにしかない音楽が生まれているところが私にとって大きな魅力ですね。
●良い意味でサウンドに隙間があり、そこも気持ち良いと感じました。
山中:ベース、キーボード、ドラムという少し変わった構成なのもあって、それぞれの楽器がよく聴こえるので、1つひとつの音に対するこだわりもより強くなりました。音数を多くするわけでもなく、極端に減らすわけでもなく、何かしらが大事なポイントで出てくるので、アレンジの考え甲斐もあります。そういう試行錯誤が楽しいし、それが結果として音になって出てくれているんじゃないかなと思います。
●それ以外にも単発でいろいろなサポートをされているようですが、サポートという立場でドラムを演奏する楽しさ、面白さとは何でしょうか?
山中:まず、いろいろな方と関わらせていただけることですね。それぞれ違うリズム感や空気感を持つ人と一緒に、同じステージで、同じ場所で音楽ができるということが、いろんな衝撃を受けたり、いろんなものを受け取る場面になる。それはサポートならではの良さの1つだと思います。 あとは、あくまでもメンバーの方を際立たせるために何ができるかという部分でドラムを演奏すること。一歩引いたところでバランスを考えたり、この人は今どういうことを考えてるんだろうって想像しながら演奏することが、私はとても楽しく感じるんです。良い意味で外側から音楽に参加できるのも、サポートの良さかなと思います。

カノウプスのバーチ・キットは
“ドラムの音はこれだ”という
イメージ通りの音がする

●ドラム・テックの仕事もされたとSNSに投稿していましたね。
山中:私のレッスンを受けてくれている子がやっているバンドがあって、レコーディングでちょっと音作りをしてほしいと依頼をいただきました。私の音が好きだと言ってくれているので、私が出したい音にプラスして、その楽曲に合う音を作らせてもらいました。
●ドラムは常に身近に置いて触っていられる楽器ではないからこそ、音作りで悩んでいるドラマーはプロ/アマチュアを問わず多いですよね。
山中:ドラムの音を最低限整えるのはプレイヤーとしても大事だとは思っているんですけれども、良い音作り、良いチューニングというのは、テックさんという仕事があるくらい、とてつもなくハードルが高いなと思います。でも、初心者の方でも良い音を出している人はいて、それって何だろうと考えると、自分の中に音のイメージがある人は、そういう音が出せたりするんですね。特にわかりやすいのはスネアで、上に響かせたいのか、下に落としたいのか、横に広げたいのか。音程も叩く人のイメージ1つで変わるので、もちろん最低限の技術は必要ですけれども、イメージがあればちゃんと音は出せるなと。そして、1つとして同じ音は出せないところもすごく深いと思うし、私自身もまだまだ学びたいなと思っています。
●そんな山中さん自身は、現在カノウプスのバーチ・キットを使っていますね。どんなところが気に入っていますか?
山中:もともと別のメーカーのドラムでしばらく活動していましたが、私はリズムを刻むときに1つひとつの音の長さをとても大事に考えていて、最初は自分の技量が足りないから音が長く鳴らなかったり、出したい音が出せないと困っていたんです。それをいろんな方に相談したら、木の材質のポテンシャルがあるということを初めて知って、いろいろなメーカーさんのドラムを聴いていったところ、カノウプスのバーチの音を聴いた瞬間に、“あっ、この音を出したかったんだ”ってピンと来ました。そこからはレコーディングもライヴもずっとバーチのキットを使ってやっています。私の中で“ドラムの音はこれだ”っていうイメージが、まさにバーチの音だったっていう感じですね。

●そしてもう1台、同じくカノウプスのアクリル・キットも使っていますね。
山中:アクリルってあまり音が伸びなかったり、音が硬すぎるというイメージがあったのですが、このカノウプスのアクリルは木と遜色ないくらいの温かみがあって、でも独特の強みや硬さもあって面白いドラムだなと思ったのが始まりです。新品ではないのですが、前の前のオーナーさんがシェルにLEDを仕込んでいて、見た目がカッコ良かったというのもあります。キックが24″とちょっと大きく、自分の表現の幅を広げたかったというのもあって導入を決めました。
●rumania montevideoの三好真美(vo、d)さんも、Ludwigの電飾入りVistaliteを叩いていたイメージがあります。
山中:そうですね。そこにも気づいていただけたり、近い音だなと思ってくださったらうれしいです。
●スネアは、よく使うものはありますか?
山中:結構長く使っているのが、LudwigのLM404(アクロライト)ですね。いろんな曲に合うし、鋭さもあるので気に入っています。あと、去年から使っているのがカノウプスのマホガニー。バーチ、ポプラ、メイプルも混ざったシェルで、ハイブリッドな音もしつつパワーもあって、でも木胴らしい独特の温かさや伸びもあって、今ライヴでは主にこれを使っています。さらに、最近導入したのがカノウプスのゼルコバ。いろんな人から“ゼルコバいいよ”と聞いていて、試してみたらやっぱり良くて。深さは5″と浅めですが、パワーがとてつもなくて、鳴り方もすごいです。その3台がメインで、それにカノウプスの刃シリーズのちょっと古いものを加えた4台くらいをローテーションしています。
1つとして同じ音はないところ
誰かといて初めて成立するところ
それが私にとってのドラムの魅力

●本を読んで感じたことでもありますが、こうしてお話を聞いていると、社労士の仕事を軌道に乗せながら、ドラマーとしての活動もとても充実しているのが伝わってきます。そんな二刀流で活動している今だからこそできる、ドラマーとしての表現があるとしたらどんなところだと思いますか?
山中:1つ思うのは、引き算が上手くなったこと。バンドで活動していたときは、勢いとかイケイケな部分を前に出して、手数を増やしたり、いろんなフレーズを取り入れてみたりというのが結構多かったかなと思うんです。でも今は、サポートでいろんな楽曲に関わっていますし、一度立ち止まった時期も経験したことで、あえて1音だけにするとか、あえて休符を使う、あえて音の長さだけを使うっていうような引き算の面白さにも気づけてきて。最近はできる限り手数を減らしたり、逆に急に詰めてみたり、緩急をかなりつけたドラムを考えるのが面白いなと感じています。
●本の中では、ライスワークとライフワークを切り分けて好きなドラムを続けていられる自分のやり方が唯一の正解だとも思わないと書かれていて、そこも素晴らしいなと思いました。音楽一筋で生きていくべきか、それ以外の仕事も持つべきかと悩むミュージシャンに向けて、何かアドバイスするとしたら?
山中:今の私の視点から言うと、自分の中でライスワークとライフワークの位置づけを決めるだけでも、いろいろなことを合理的に考えることができるようになってきたなと思いつつ、もともと私も音楽一本で、人生をかけてそれだけで活動していくという覚悟を持ってやっていたので、それも1つの正解だと思います。どちらも間違ってないので、“これだ”って決めたらひたすら突き進むというのが良いと思います。
●社労士になった今の視点から見ると、音楽業界の仕事ぶりやミュージシャンの在り方はこう見える、ということが本の中で繰り返し書かれています。そういう点で、ミュージシャンが読むと気づかされることが多い本だとも思いました。
山中:音楽の仕事ってどうしても無理をしてしまうことが多くて、それが良い結果につながることもあれば、体調を崩したり怪我をしてしまうことにつながることもあると思うので、無理しすぎない程度に自分と向き合って、線引きを考えることの大切さが、少しでも多くの人に広まってくれたらいいなという気持ちがあります。以前の私がそうだったように、仕事は1つしかやっちゃいけないと考えている方は多いと思いますが、最近は音楽に限らず、別にいくつも仕事をやってもいいよねっていう方もたくさんいて、選択肢が増えていますよね。この本で書いたことも、そういう選択肢の1つとして、読んだ人の中に何かが残ってくれたらいいなと思います。
●そういう生き方を選んだ山中さんが、これからドラマーとして挑戦してみたいことはありますか?
山中:かれこれ15年以上ドラムをやっていますけれども、まだまだ触れていないジャンルやビート、フレーズも多いので、いろんなことを挑戦させてもらえる今のタイミングだからこそ、とにかく新しいビート、フレーズ、音を吸収したいなと考えています。
●これから社労士としての仕事がさらに本格化していく中で、ドラマーの活動も続けるとなると、今まで以上に時間のやりくりが大変になってくるのでは?
山中:両方をどれくらいの比率でやっていくか、実際に仕事をしながら整えているところです。 今のバランスとしては、社労士が6割、音楽が4割くらいの感じでやっています。もともとはそれを半々くらいでやってみたり、ドラムをちょっと多くしてみたりとかも試したんですけれども、結局は今の形が良いバランスかなと。なので、このままのバランス感覚で、社労士としての業務や発信をもっと増やしていきたいし、音楽の方もいろんなレコーディングやライヴに参加していきたいなと思っています。
●そうやってバランスを取りながらいろんな活動をすること自体が、山中さんにとってのやりがいの1つでもあったりするのでしょうか?
山中:そうですね。ドラムもそうですけど、やはりトライ&エラーの部分がかなり多くて、試してみなきゃわからないっていうことはありますね。そういうことにチャレンジするのが楽しいと感じるので、とにかくやってみる、というのが私の根底にあると思います。
●そんな今の山中さんにとって、あらためてドラムという楽器の魅力、ドラムを叩く気持ち良さ、ドラマーとして活動する楽しさとは何でしょうか?
山中:自分自身で叩くドラムもそうですし、いろいろな方のドラムの音、初心者の方から経験者の方の音を聴いていると、やっぱり1つとして同じ音がない、同じビートがない、その人にしかないものがあるっていうのが、やっぱりドラムの大きな魅力だなと思います。もちろん他の楽器もそうだと思うんですけれども、特にドラムはバンドの中で一番アナログな楽器で、その人自身の感情や考えがそのまま反映されるので、そこからしか聴けない音、そのときにしか聴けない音があるというのがすごく魅力的です。私自身も、演奏しながら“あ、今こういう音が出てる”っていう楽しさもあって、とにかく音が毎回変わるところはドラムの楽しさとしてあると思います。
あとは、やっぱり誰かといて初めて成立する楽器なのかなっていうところもドラムの楽しさの1つで。もちろんソロでやられている方もいますけど、そのとき一緒に演奏する人との雰囲気やノリだったり、目が合ったときの感覚だったり、そういったものを一番広い視点で見られる。それがドラムという楽器の楽しさかなと思います。
ドラマーと社労士、2つのキャリアから生まれた初の著書

『バンドマンが社労士との二刀流で見つけた“無理しない働き方”』
第1章 好きなことを仕事にした私が、立ち止まった理由
第2章 ゼロから学び直すという、現実的な選択
第3章 社労士の窓から見た、「働くこと」の処方箋
第4章 自分らしいバランスのつくり方
第5章 社労士になって見えた 知らないと損する給与のウラ側と制度の話
著者:山中綾華
定価: 1,870円 (本体1,700円+税)
発売日:2026年07月16日
判型:四六判
ページ数:192
ISBN:9784043300549
出版社:KADOKAWA
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https://www.kadokawa.co.jp/product/322601001050/