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    山中綾華|社労士との二刀流で再発見した“ドラマーとしての原点”【前編】

    • Interview:Isao Nishimoto

    社労士(社会保険労務士)&ドラマーという異色のキャリアを歩む山中綾華が、初の著書『バンドマンが社労士との二刀流で見つけた“無理しない働き方”』を上梓した。本書の根底にあるのは、生活を支える仕事=“ライスワーク”と、人生の目的となる仕事=“ライフワーク”を切り分けることで、大好きなドラムと純粋に向き合い続けるという考え方だ。そしてページをめくるほどに伝わってくるのが、現在の彼女がドラマーとして大きな充実感を抱いていること。そこでドラマガWebでは、本書を起点に“ドラマー山中綾華”の現在にあらためて迫った。前編では、活動の柱であるオンライン・レッスンとサポート・ドラムの仕事、そして彼女がドラムに惹かれた原点でもあるバンドのサポートについて話を聞いた。

    受験勉強の期間は
    誰かと演奏したいという
    その気持ちが一番強かった

    ●今回の本では、“大好きなドラムを嫌いにならないために、一度手放す”と決めた経緯が丁寧に書かれています。そんなふうに自分を客観視できることにまず驚かされました。
    山中:私にとってドラムという楽器の立ち位置は、自分が真ん中にいるというより、全体をしっかり見渡した上でバランスを考えたり、自分がキープしている上で他の楽器が遊んでくれるみたいなもので、そんな自分のこともさらに背後から見ているくらいの視点でずっと演奏してきました。それと、もともとの自分自身の性格とが相まって、この考えに繋がったのかなと思います。

    ●その話を聞いて頷くドラマーはたくさんいそうです。ドラムという楽器を選んで、続けていける人というのは、多かれ少なかれそういう部分があるのかもしれませんね。
    山中:もちろん、人によってプレイ・スタイルは違っていて、とにかく突き進むタイプのドラマーもいれば、私みたいに後ろから見守るタイプのドラマーもいたりと多種多様です。でも頷かれるドラマーは多いと思います。

    ●ミュージシャンが社労士の資格を取るというまったく未知の分野に挑戦するにあたって、音楽の世界に身を置いていたことが心理的なハードルを下げてくれたと書いています。演奏したことのないフレーズに挑戦したり、新しいテクニックにチャレンジすることに対して積極的なタイプだったのでしょうか?
    山中:できないものがあるということを、すごく楽しく感じるタイプです。新しいもの、難しいものにチャレンジして、できるようになっていくという積み重ねがとても好きで。ロック・バンドをやっていたときも、“ラテンのリズムってどういうの?”、“ジャズのリズムって?”というのを調べるのがすごく好きでした。奏法に関しても、過去の偉大なドラマーたちがたくさん残してきたフレーズや手順に挑戦することを、とにかく楽しんでいましたね。そして周りを見ても、ドラムの人がドラムだけをやるのではなく、ギターもやってみたり、ベースをやってみたり、キーボード、ピアノを弾いてみたりというふうに、1つの音楽の中でもいろんなものをやられる方が多かったりして、新しいものを覚えていくという部分でポジティブなものを受け取っていました。そういう環境のおかげで、結構ハードルが低く感じられていたかなと思います。“チャレンジしていいんだ”って。

    7月に上梓された『バンドマンが社労士との二刀流で見つけた“無理しない働き方”』

    ●国家試験に向けての勉強に励んでいた期間は本当にハードだったと思いますが、その間もSNSに投稿したり、レッスンに通ったりしてドラムとの接点を保っていたそうですね。
    山中:社労士の道を選んだときに、社労士とドラムの両軸で仕事をしていきたいと決めていたので、受験勉強の期間も、勉強とドラムをちゃんと両立したいという気持ちがありました。レッスンは以前から通っていた村石雅行さんのドラム道場で、さすがに試験の直前はレッスンをお休みさせてもらったりしましたが、なるべく勉強との両立を続けるように頑張っていました。

    ●ドラムを叩きたいという気持ちは、そこである程度消化できていたのでしょうか?
    山中:難しいことへのチャレンジという部分では、結構消化できていたかなと思います。レッスンに行くたびに新しいことや難しいフレーズが出てきて、それも高度なものが多かったりするので。ただ、ドラムってどうしても1人だけでは成立しない楽器なので、誰かと演奏したいという気持ちは、多分この時期が一番強かったと思います。

    ●ライスワークと切り分けたライフワークとしてドラムを続けると決めたことで、ドラムを叩く楽しさをあらためて感じ直したところはありましたか?
    山中:ドラム自体もそうですし、やっぱり音楽って楽しいなとあらためて感じるところはたくさんありました。何の曲を叩くとかも決めずにスタジオに入ってみたり、その音を出してみたり、それだけで自然とリズムになって、それが自分の中で曲になってっていう風に、音楽が自然と出てきたときに、“あ、楽しいな”って思えたり。あとは先ほども言ったように、誰かと演奏したいという気持ちに気づけたのも大きかったですね。やっぱり音楽って誰かと一緒にやるもので、ドラムも1人だけのものじゃなくて、みんなと共有できるものなんだなという楽しさに気づくことができたと思います。

    オンライン・レッスンを通して
    ドラマーとして気づかされることは
    たくさんあります

    ●現在、ドラマーとしての活動の柱の1つになっているのがオンライン・レッスンだそうですね。
    山中:毎週のように受講されていたり、月1回は必ず受講される生徒さんがだいたい20〜30人くらいいらっしゃいます。あとは数ヵ月に1回とか、どこかで演奏する直前にちょっと駆け込みで受講される方もいらっしゃるので、トータルで50名くらいは継続してくださっているイメージです。年齢層は、60代の方が何人かいらっしゃる一方で、一番下は10歳と、幅広くやらせてもらっています。8割くらいは初心者の方ですけれども、経験者の方にレッスンする際は、フレーズや考え方を伝えるのに村石雅行ドラム道場での経験が参考になっています。

    ●初心者というのは、これからドラムを始める方ということですか?
    山中:“スティックを触ったこともないけど、レッスン受けても大丈夫ですか?”みたいな感じで一旦レッスンを受けてくれて、そこから継続してくださる方が多いです。SNSで生配信をしたりコメントを返したりしているときに、“もともとドラムに憧れていたけど何から始めればいいのかわからない”とか、それこそ“60代でも大丈夫ですか?”っていう方もいて、“いつ始めても遅くないので、やってみたいと思ったらぜひやってみてください”とお答えしたら、その方が来てくれたり、その回答を聞いた別の方がまた来てくれたり、という感じで広がっています。

    オンラインレッスンの詳細はこちら

    ●ドラマーとして長く活動していると、これから始める人の立場に寄り添うのは簡単ではないように思えます
    山中:レッスンを始めた当初は、右手と左手がつられてしまったり、足が入った途端に難しいってなってしまうような方に、“どうしてそうなるんだろう”という気持ちが湧いてしまったこともありますし、“どうやったらわかりやすく伝えられるんだろう”という部分での試行錯誤はありました。 私自身は、高校生のときに先輩に教えてもらってドラムを叩けるようになったので、相手が目の前にいるのとオンラインでの違いや難しさも痛感しました。

    ●ドラムは両手両足を使って演奏するので、画面越しに教えるのは確かに難しそうです。
    山中:なるべく目の前で見ている感覚に近づけるために、性能の良いマイクを使ったり、カメラも全部で4つのアングルを初めから用意しました。あとは、私自身の中で言語化する部分がだんだん身についてきて、ようやく今しっかり教えられているなという感覚はあります。楽器って感覚的に演奏できてしまうところもあるので、“どうして自分はできているのか”っていう部分をあらためて振り返らせてもらったりして、自分に何ができて何ができないか、どういう仕組みで叩いているのかを理解させてもらうことがすごく多いです。それを言語化して伝えると、生徒さんもできるようになったり、生徒さんから、“あ、そうか、こういうことですね”って返してくれた言葉が新たな発見になったりと、毎回のレッスンが発見の連続ですね。

    ●自分1人で演奏するだけだと無意識で流してしまうようなことも“なるほど”と納得したり、“なぜだろう”と立ち止まったり、そういうことがあるわけですね。
    山中:例えば一瞬休符を取ってから動き出すときに、自分は当たり前にやっていたことを、生徒さんが“えっ?それってどうやってるんですか?”って聞いてくれたことで、初めて自分の中でこういう考えがあって、こうやって動いてるんだっていうのに気づけたり。楽器って、やっぱり“人”があってこそのものだなと思います。

    ●5月にはライヴ・ハウスを使って発表会も開催したそうですね。
    山中:北は北海道、南は福岡といろんな地域から生徒さんが集まりました。中には海外から参加してくれた生徒さんもいて、来日する日程と重なったことで発表会に駆けつけてくれました。初めて曲を叩くという人も半分以上いらっしゃって、そんなみなさんがステージに立ってバンド形態で演奏する機会を作ることができたのは、自分にとっても良い時間だったなと思うし、やっぱり音楽って楽しいなということを再確認させてもらった一日でした。

    ●ずっと音楽に関わってきた山中さんでも、今まで味わったことのない気持ちがありましたか?
    山中:もちろん、始めたばかりだからうまくいかなかったりして、悔しい思いもありながら叩いてくれたとは思うんですけれども、それ以上に、“楽しい”っていう部分だったりとか、がむしゃらに叩いている姿を見て、音楽の初期衝動のようなものをひしひしと感じました。

    こんな夢のようなことが
    あっていいのかというくらい
    衝撃的な出来事でした

    ●そして、ドラマーとしての活動のもう1つの柱がサポート・ドラムの仕事ですね。
    山中:一番最初は、私が音楽を始めるきっかけになったrumania montevideo(ルーマニア・モンテビデオ)さんに声をかけていただいたのが始まりです。以前から私がSNSとかいろんな取材の場でモンテビさんが好きだとお話しさせていただいたことを見てくださっていて、社労士とドラマーの二刀流を目指すと発表したときに、“もしよかったら”と向こうから声をかけてくださいました。最初は大阪と東京のライヴでゲストとして少しだけ叩くという形でしたが、その後はワンマン・ライヴを任せていただけて。そこからしっかりサポート・ドラマーの活動が始まりました。

    ●本誌のインタビューでも、そもそも山中さんがドラムを叩いてみたいと思ったのがrumania montevideoで、三好真美さんのドラム&ヴォーカルに触れたところからだったと話しています(2017年1月号)。
    山中:そうです。特に当時は女性でドラムというだけでもめずらしかったのに、ステージの真ん中でヴォーカルというのでさらにめずらしかったと思います。初めて映像を観たときに衝撃を受けて、私もあれをやりたいなと思いました。それがずっと私にとっての音楽の原点です。

    ●そこでサポート・ドラムを務めることになったというのはすごい話ですね。
    山中:本当にうれしくて、こんな夢のようなことがあっていいのかというくらい衝撃的な出来事でした。ライヴだと真美さんはヴォーカルがメインですが、ドラム&ヴォーカルで演奏する場面もあって、それを真横で見る権利を勝ち取ったという意味では、夢が一気に2つ叶ったかなと。あともう1つ、ワンマン・ライヴのサポートでは自分のドラムを使ったんですけど、それを真美さんが叩いてくださったので、夢3つが一気に叶うというとんでもない状況になりました。昔の自分に自慢したいくらいです。

    ●同じドラムでも叩く人が変わると音が違うという話はよく聞きますが、そういうことも感じましたか?
    山中:そうですね。いつも自分で使っているはずのドラムも、真美さんが叩くとやっぱり真美さんの音がしていて。ドラムって1人ひとりで音も違うしビートも違うし、本当に不思議な楽器だなと思いました。

    ●ずっと好きだったrumania montevideoに対して、ステージを共にしてみてあらためて感じたことや、新たな発見みたいなものはありましたか?
    山中:結構シリアスだったり儚い感じの曲が多いんですけれども、皆さんの根底にあるのはすごく熱い情熱だったりしていて。やっぱり音楽って実際に会わないとわからないこともあるなっていうのは気づきとしてありました。

    *ドラムの楽しさ、魅力について語る後編は後日公開

    ドラマーと社労士、2つのキャリアから生まれた初の著書

    『バンドマンが社労士との二刀流で見つけた“無理しない働き方”』

    第1章 好きなことを仕事にした私が、立ち止まった理由 
    第2章 ゼロから学び直すという、現実的な選択
    第3章 社労士の窓から見た、「働くこと」の処方箋 
    第4章 自分らしいバランスのつくり方 
    第5章 社労士になって見えた 知らないと損する給与のウラ側と制度の話

    著者:山中綾華
    定価: 1,870円 (本体1,700円+税)
    発売日:2026年07月16日 
    判型:四六判 
    ページ数:192 
    ISBN:9784043300549
    出版社:KADOKAWA

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    https://www.kadokawa.co.jp/product/322601001050/