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DISH//が、全曲自作曲によるニュー・アルバム『aRange』をリリースした。4人が蓄積してきた100曲以上のデモから厳選し、メンバー自身の手でアレンジを施した本作は、バンドの“楽曲の幅(Range)”をダイレクトに提示する意欲作だ。本作を携えたホール・ツアーも始まったこの好機に、コンポーザーとしても才覚を発揮するドラマー、泉 大智へのインタビューが実現。4〜5年前のデモを現在の感性で再構築したプロセス、“歌に寄り添う”ことを追求したシンプルなドラム・アプローチ、そして自身がヴォーカルを務めるソロ・プロジェクトを経て再認識した“リズムが楽曲を支配する”ことの重要性まで、バンドの中核を担う泉の現在地を掘り下げる。
DISH//最新アルバム『aRange』制作秘話
100曲以上のデモから厳選された楽曲の幅(レンジ)
●今作『aRange』は「今、届けたい曲」を厳選し、アレンジした新曲群と、バンドとして楽曲の幅を感じられるアルバムがコンセプトとのことですが、100曲以上ものデモから今回の楽曲をセレクトしたそうですね。レコーディングを終えたときは相当達成感があったんじゃないですか?
泉:そうですね。やりきった感というか、最近はシングル曲とか、EPが多かったので、アルバムとしての作業が久しぶりで、立て続けにレコーディングした記憶がありますね。2020年くらいから作って溜まっていたデモが100曲以上あって、近年シングルでリリースしていた楽曲とのバランスを見つつ、DISH//として今出したいものをセレクトしていった感じですね。
●まずデモが100曲以上あるのがすごいですね。
泉:4人が全員、曲を作れるので、気づいたら100曲以上になっていましたね。デモができたら、メンバーにもスタッフにも共有して反応を見たり、どういうタイミングでリリースするのがいいかとか軽く話したりします。

●今回のアルバムには、けっこう前に出来上がった曲もあるんですか?
泉:「泣くもんさ」、「死んじゃいないよ」、「ファンタジーラブコール」なんかは4〜5年前に作ったデモをもとにしています。その時期がちょうど、みんなで作曲しようというモードになっていたときで、その頃にストックしていた曲がたくさんあります。「diorama」、「エール」は逆にここ1年くらいで作った曲ですね。
●作った当時から時間を経て印象が変わったりしましたか?
泉:アルバムを作るにあたってあらためて聴き直したら、「この曲いいね」という曲ももちろんありました。「ファンタジーラブコール」はリリースするタイミングを見ていた、寝かせていた曲ですね。いずれにしてもアレンジは、デモの段階からだいぶ変わりましたね。それこそアレンジありきで選んだ部分もあって、それが『aRange』というタイトルにつながっていると思います。
●アレンジの作業はどういうふうに進めていくんですか?
泉:いろんなパターンがあるんですけど、メンバーそれぞれがDAW上で作ることもあれば、スタジオにみんなで集まって合わせながら詰めていくこともありますね。最近だと、Carlos K.さんのスタジオに、僕とキーボードの(橘)柊生で集まって作っていくことが多いですね。
●泉さん自身はいつ頃から作曲を始めたんですか?
泉:19歳のときにアコギを弾き始めて、もともと家に楽器もあったので、そこから何となくボイスメモとかにちょっとしたフレーズなんかを録音したり、じわじわ始めていった感じですね。コロナ禍でDTMを使えるようになってからは、そういった自分の曲のアイディアを、ちゃんとデモにできるようになっていきました。
●普段の作曲はどのように進めていくのですか?
泉:DISH//は基本、アコギで作っていくことが多いです。歌モノなので、アコギの弾き語りで気持ちいいメロディとコード進行を骨組みで作って、そこからアレンジに移るパターンがほとんどですね。
●ドラム・パターンから入ることはめずらしいですか?
泉:そうですね。DISH//ではあまりないです。4人でスタジオに入ってセッション的に作っていくときは、僕がリズムを叩き始めて、そこにギターのリフやベース・パターンを乗せていくことはありますけど。1曲目の「ヒーロー」はみんなで作ったので、これはドラム・パターンから決めていった記憶がありますね。
●ドラマーがコード進行や理論を理解しているかどうかで、ドラムのアプローチも変わってきますよね。
泉:だいぶ変わりましたね。作曲するようになってから曲の聴き方がまず変わりました。それがドラムのアプローチにつながってきたと思います。ドラムって、曲のダイナミクスや流れを作れるじゃないですか。そこの向かい合い方はだいぶ変わった気がしますね。
泉 大智が語るDISH//流楽曲アプローチ
歌に寄り添う「引き算の美学」とセルフ・アレンジの裏側

●『aRange』はまさにそのダイナミクスや流れを作るという点を強く感じていて、極限まで削ぎ落とした泉さんのドラム・アプローチが、曲の展開を劇的にしているように思います。
泉:ありがとうございます。最近本当にシンプルにしていってますね。難しいフィルを無理やり入れるよりも、シンプルなものの方が好きですし、もともとわかりやすいものが好きなので。DISH//だと特に、シンプルでちゃんと突き抜けた方がいいなと思っています。
●1曲目の「ヒーロー」なんかまさにそうで、ビートで聴かせる感じがすごくしました。その中で、サビの後半だけソカに切り替わるのがアクセントになっています。
泉:アレンジャーさんのアイディアだったんですけど、サビに長さがあるので、4つ打ち一辺倒だと聴いていて変化が感じづらかったんですよね。それで展開を作ろうという話になり、いろいろなビート・パターンを試して、しっくり来たのがソカだったんです。
●他にドラム的なポイントを挙げるとするならばいかがですか?
泉:この曲に限らずですけど、歌に寄り添うことは一番意識していますね。特に「ヒーロー」は歌モノ感が強いですし、J-POPど真ん中という感じで、フィルは極力削ぎ落としているかもしれないですね。
●「いつだってHIGH!」は泉さんと橘さんによる作曲ですが、お二人で作曲するときの進め方としてはいかがですか?
泉:柊生が種を持ってくることが多いですかね。それかゼロイチで、お互いの引き出しの中に何となくあるコード進行を出し合って、「これとこれ組み合わせたらいいんじゃない?」というふうに進めていくこともあります。
●『DayDay.』のLOVEダン課題曲というのもあって、4つ打ちのダンス・ナンバーとなっていますね。
泉:そうですね。LOVEダンのお話をいただいてから作り始めたので、まずはダンサブルな曲にしようと。高校生が踊る曲だったので、踊りやすさはすごく意識しましたね。ダンス・ミュージックって、打ち込みの方がそれっぽくなると思うんですけど、それを人力でやるのがDISH//の良さだと思っているので、そこは生ドラムで向き合いましたね。
●「ヒーロー」ではどっしりとしたロー・ピッチ気味のスネアが印象的でしたが、こちらは少し高めで明るく、オープンな鳴りのサウンドになっているのも特徴ですね。
泉:スネアは毎回、ドラム・テックの方と話し合って、曲に合ったものを選んでいます。ただ、最近の曲調だとロー・ピッチが合うものが多くて、そういうチューニングにしたり、深胴のスネアを使うことが多くなりましたね。
●続いて「ごはん」は、スネアのアタマ打ちから、急にクローズド・リムに切り替わる展開がグッと引き込まれます。
泉:行進曲のようなアプローチにしていきたくて、歌とどっちが先だったとは言い切れないんですけど、この曲はリズム・パターンから組み立ていったかもしれないです。「沈丁花」のアンサーソングのような側面もあって、あの曲はスネア・ロールで始まるんですけど、それに呼応する形にしたかったのはありますね。
●「泣くもんさ」はいわゆる“ハチロク”ビートですね。
泉:実は、もともとはこの6/8拍子のデモを僕が作っていて、最後の展開がガラッと変わる部分は柊生が作っていたデモで、2人のアイディアを合体させたんです。過去のデモをいろいろ聴いていたときに、僕と柊生のそのデモのサビのメロディの雰囲気が似ていて、「どっちもいいし、どっちか選ぶならくっつけちゃえばいいんじゃない?」という話になったんです。柊生曰く、メロコアっぽい感じにしたかったらしくて、そういう疾走感は意識して叩きました。
●2コーラス目のメロでゴーストを足したり、展開をつけるというのも、泉さんらしいですね。
泉:ゴーストを入れたらどうかなとか、自分の中でプランを練っておいて、レコーディング当日にやってみてハマったから採用した、みたいな感じですね。この曲はアレンジャーさんが入っていなくて、メンバーそれぞれに任される部分が多かったので、各々のアイディアを持ち寄った感覚が大きいです。なので、バンドとして、DISH//としてのらしさがより強く出ていると思います。
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ソロ活動を始動して気づいたドラムの重要性