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    神保彰45周年記念公演|ワンマンオーケストラから豪華共演まで、”ドラマーとしての現在地”を示した一夜【Report】

    • Text:Atsuki Sano

    神保 彰のデビュー45周年を記念した『神保 彰 45th Anniversary Special Live』が、2026年4月18日、日本橋三井ホールで開催された。

    ワンマンオーケストラ、PYRAMID、かつしかトリオ、そして角松敏生を迎えた全員集合パートまで——。一夜のステージには、神保が歩んできたキャリアの広がりと、今なお進化を続けるドラマーとしての現在地が凝縮されていた。単なるアニバーサリー公演ではない。45年という時間を祝うと同時に、神保 彰という存在が、いかに多面的な音楽性を持つドラマーであるかをあらためて示す夜となった。

    ワンマンオーケストラの定番メドレーで
    いきなりピークを作り出した幕開け

    ワンマンオーケストラ

    ライブは前触れなく神保がステージに登場するところから始まる。万雷の拍手の中、上手側に据えられたリアルウッド仕様のYamaha YD-9000AJキットへと腰を下ろすと、「ツァラトゥストラはかく語りき」を開幕のファンファーレのように流麗に奏で、そのまま間髪入れず「Mission Impossible」へと雪崩れ込む。トリガーシステムを駆使し、アコースティック・ドラムのアタックと、エレクトロニック・サウンドによるメロディ/伴奏を同時に成立させるワンマンオーケストラの真骨頂が、冒頭から強烈に提示された。タムのピッチを旋律的に扱い、キックで低域を補強しながら楽曲を構築していく様は、“叩く”という行為がそのまま“編曲”に直結していることを実感させる。

    MCでは、このスタイルが六本木ピットインでスタートしてから30周年を迎えたこと、そしてレパートリーが約400曲に達していることが語られた。長年の試行錯誤の蓄積があってこそ成立する演奏形態であることをあらためて印象づけるエピソードだ。ディズニーのアニメ映画『ライオンキング』で使用された「Circle of Life」ではフロア・タムを主体とした大地の鼓動のようなビートの上にメロディと伴奏が重ねられ、そのすべてを1人で担いながら観客に手拍子を促す余裕すら見せる。そして『パイレーツオブカリビアン』のテーマ曲で、ワンマンオーケストラの代表的なレパートリーである「彼こそが海賊」では、タムをフルに使ったリニアなフレージングと高速キック・ワークで一気にボルテージを引き上げ、通常はラストを飾る楽曲を序盤に配置することで、いきなりピークを作り出す大胆な構成で会場を圧倒した。

    時間と世代を横断する
    PYRAMIDのアンサンブル

    PYRAMID

    続くPYRAMIDパートでは、鳥山雄司、Gaku Kano、そしてマニピュレーターのマキノゲンが加わり、下手側のコンパクトなセットへと移動。ここではバンド・アンサンブルの中でのドラマーとしての神保の側面が際立つ。結成21年目を迎え、鳥山とは高校時代から約50年のつき合いという関係性が語られる一方、Kanoが東京藝術大学を卒業したばかりという世代差も提示され、プロジェクトの時間的な厚みと更新性が同時に浮かび上がる。

    「Night Flight」ではライドのツブ立ちを生かしたスムースなタイム・キープが光り、「Runnin’」では一転してタイトなフィールで音の輪郭を明確にする。フィルインは決して過剰にならず、しかし確実に楽曲のダイナミクスを押し上げる配置で、グルーヴの流れを精密にコントロールしていく。鳥山はMCで、初共演時にBob Jamesの楽曲を“レコードとそっくりに再現するドラマー”として神保を認識したと語り、その特異性を振り返る。ハードロック全盛の時代にクロスオーヴァー・ミュージックを1人で追求していたというエピソードは、神保の音楽的立ち位置を象徴するものだろう。

    「Sun Goddess」ではメトリック・モジュレーションを織り交ぜた時間感覚の操作が際立つ。拍の解釈をズラしながらもグルーヴの芯を失わないコントロールによって、キーボード・ソロへの移行をリズム面から演出する構成力が光る。ラストの「Street Life」では、レイドバック気味のシャッフルを維持しながらスネアのアクセントで前進力を生み出し、観客の身体を自然と揺らしていく。実際に立ち上がって踊り出す観客の姿も見られ、会場はダンス・フロアのような熱気に包まれた。

    年齢を超越した密度で圧倒する
    かつしかトリオのエネルギー

    かつしかトリオ

    その熱量を受けて、向谷 実、櫻井哲夫が加わり、かつしかトリオのステージへと移行する。「3人の年齢合計200歳を超えた新人ユニット」という紹介が象徴するように、ユーモアと圧倒的実力が同居するこのユニットは、「M.R.I_ミライ」から“神々の遊び”のような超絶技巧を展開。トリオ編成とは思えない音圧とダイナミックレンジ、そして音数で観客を圧倒する。

    「Spaceman’s Shuffle」では、拍をスリップさせるポリリズミックなアプローチでキーボード・ソロへと展開し、そこから歌心溢れるベース・ソロへと接続。「Living In The Universe」では浮遊感のあるサウンドにサンバ・フィールが重なり、宇宙遊泳のような空間を描き出す。「a la moda」ではラテン語法を的確に使い分けたバッキングからソロへと流れ込み、フレーズを断絶させることなく音楽的なストーリーを紡いでいく。「Zero G」ではスラップ・ベースと4分キックによる強烈な推進力を生み出し、「Red Express」では高速ユニゾンとキメの応酬の中で反射的な対応力を示した。

    トークでは、カシオペア時代からの盟友としての関係性、出会いなどが語られ、花束のサプライズも含めて温かな空気が流れる一方、「誰かが倒れるまでやります(笑)」という言葉に象徴されるように、その音楽的エネルギーはなお衰えを知らない。

    角松敏生も加わった全員集合セッション
    45周年にふさわしい大団円

    角松敏生を加えた出演者全員でのパフォーマンス

    終盤には角松敏生が加わり、全員集合パートへ。「Mid Summer Shuffle」では歌うようなギターに対し、神保が自由度の高いフレーズで応答。「Sea Line」ではあえてボトムを支える役割に徹することで楽曲の魅力を引き立てる。「OSHI-TAO-SHITAI」では複雑なキメの応酬を余裕すら感じさせる精度でこなし、本編は圧巻のアンサンブルで締めくくられた。

    アンコールでは神保1人によるドラム・ソロが展開。水滴のような繊細な音像から始まり、ラテン、ドラムンベース、さらにはブラスト・ビートへとジャンルを横断しながら構築されていくその演奏は、単なる技巧の提示ではなく、1つの音楽作品として成立していた。

    そのまま全員が再登場し「Jimbo Jamboree」へ。観客の手拍子が加わり、メンバー全員がソロを回す祝祭的な展開の中で、会場は完全な一体感に包まれる。45周年という節目にふさわしい高揚感と充実感を残し、ライヴは大団円を迎えた。

    神保 彰45周年記念アルバム

    1月1日にリリースされた34枚目となるソロ・アルバム『34/45』(数量限定盤)。1986年〜2023年に発売された全ソロ・アルバムから36曲を集めたDisc1〜3と、新曲9曲を収録したDisc4の4枚組。後者は今回のアニバーサリー・ライヴにも出演した角松敏生、Gaku Kanoを筆頭に、フィーチャリング・ゲストを迎えた最新の神保サウンドを楽しめる内容。まさに集大成と呼べる作品に仕上がっている。
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    バックナンバーで振り返る神保彰の45周年

    45周年アニバーサリー・イヤーを経た今だからこそ、あらためて辿りたい神保彰の軌跡。ドラム・マガジンでは初めて表紙を飾った1984年10月号から、45周年アニバーサリー特集の2026年1月号まで、40年以上に渡って神保さんの活動を追い続けてきました。現在につながるドラム哲学や機材観も詳細に語られています。サブスク会員なら、この全アーカイブが読み放題(月額990円/いつでも解約可能:こちら)。その原点と変遷をぜひ通してご覧ください。