SPECIAL
4月5日に御茶ノ水Rittor Baseで開催された「沼澤 尚 the Greatest Playlist feat. ジェフ・ポーカロ#1」。本イベントでは、ジェフ・ポーカロのセッション・ワークに焦点を当て、沼澤 尚が厳選した8曲の名演・名曲をもとに、そのグルーヴの本質に迫るリスニング&トークが展開された。片手16ビート、3連ビート、ハーフタイム・シャッフルといったジェフの代表的なフィールを軸に、実演を交えながら解説が進行。テクニックとしてではなく、“バイブス”としてのグルーヴの捉え方が随所で語られる内容となった。その実演と共に解説された内容を、ダイジェスト映像で確認することができる。
沼澤 尚 the Greatest Playlist feat.
ジェフ・ポーカロ#1
実演を交え、そのグルーヴに迫る
ダイジェスト映像
沼澤 尚が選んだジェフ・ポーカロの名演・名盤8選
Title:『Way too Young』
#1. Steely Dan「NIGHT BY NIGHT」
#2. Jaye P. Morgan 「LET’S GET TOGETHER」
#3. Diana Ross「BABY IT’S ME」
#4. Deniece Williams「WHEN LOVE COMES CALLING」
#5. Al Jarreau「BREAKIN’ AWAY」
#6. Michael Jackson「THE GIRL IS MINE」
#7. Michael McDonald「NO SUCH LUCK」
#8. Syreeta「FREDDIE UM READY」
※ #8は、Spotifyでの配信がないため、プレイリストには含まれていません。

1.「Night by Night」Steely Dan
【沼澤】この曲、ジェフがまだ20歳前後のときの演奏なんですよね。自分がその年齢だった頃を考えると、ちょっと信じられないなと思います。17歳で初めてジャック・ドーティのレコーディングを経験して、そこから一気に名前が広まっていった。オファーの電話が鳴り止まなかったって、ジョー・ポーカロも言ってましたね。その流れでスティーリー・ダンにも関わるようになるんですけど、もともとはライヴを観に来ていたドナルド・フェイゲンとウォルター・ベッカーに声をかけられたのがきっかけなんです。このアルバムではジェフは1曲だけで、他はジム・ゴードンが叩いているんですが、「この1枚にすべてのグルーヴが入っているからこれを聴け」と本人が言っていたのがすごく印象的で。テクニックというより、先人の演奏を聴いて身体で覚えていく、その大事さを象徴している1曲だと思います。
関連情報:ジェフの初レコーディング作品
『Jack Daugherty and the class of nineteen hundred and seventy one』/Jack Daugherty

2.「LET’S GET TOGETHER」Jaye P. Morgan
【沼澤】これもまだ大学生くらいの年齢の頃の演奏なんですよね。この時点でこの完成度というのは、やっぱりちょっと驚きます。38歳で亡くなるまでの活動を考えると、普通の人の何倍ものことを短い期間でやってしまったような人なんですが、まさにその真っ只中にある時期の録音です。この曲はデヴィッド・フォスターのプロデュースで、後にTOTOで一緒になるデヴィッド・ハンゲイト、そしてレイ・パーカーJr.といったプレイヤーが関わっていて。白人のリズム体でありながら、ブラック・ミュージックからロック、カントリーまで対応できる柔軟さがあって、そのあたりも含めてジェフの強さがよく出ていると思います。
3.「BABY IT’S ME」Diana Ross
【沼澤】「Let’s Get Together」とリズムのパターン自体は同じなんですが、テンポが変わるだけでここまで印象が変わるのか、というのがこの曲の面白さで、だから続けて聴いてもらいました。同じリズム・セクションだけど、この曲は一気にブラック・ミュージック寄りのニュアンスになる。このコントロールを自然にやっているのがすごいところだと思います。“どれくらいスウィングさせるか”という話も、本人に聞くと意外と細かく考えているわけではなくて、フィーリングでやっているんですよね。譜面上は同じでも、出てくる音はまったく違う。その違いをどう感じるかが大事で、自分も当時それに衝撃を受けて、同じビートなのにこんなに変わるのかと思いながらずっと聴いていました。
関連情報①:片手16ビートの代表曲
George Benson 「Lady Love Me」
TOTO 「Georgy Porgy」
Michael McDonald「I Keep Forgettin’」
Bill Champlin 「I Don’t Wand You Anymore」
Boz Scaggs「Gimme the Goods」
関連情報②:デヴィッド・ハンゲイト(b)、レイ・パーカーJr.(g)との
チームで参加した作品
Bill Champlin 『Single』
Airplay 『Airplay』
Boz Scaggs 『Middle Man』
Valerie Carter 『Wild Child』
4.「When Love Comes Calling」 Deniece Williams
【沼澤】この曲は、後に“こういうフィールならジェフを呼ぶ”という流れを作ったタイプの演奏だと思います。デヴィッド・フォスター周りのチームが関わっている時期で、とにかく音が素晴らしいんですよね。今でもよく聴くアルバムの1つです。このビートは4/4としても、12/8としても捉えられるようなフィールで、いわゆるハーフタイム・シャッフルの原型になっている部分もあると思います。ただ、本人達は理屈でやっているわけではなくて、その場のフィーリングで自然にそうなっている。この時代はクリックも使っていないので、テンポも微妙に揺れているんですが、それが音楽としての説得力につながっている。そういう“人間のグルーヴ”が詰まった演奏ですね。
グルーヴの元になった曲
Sly & The Family Stone 「Hot Fun In The Summertime」(drums:Greg Errico)
ジェフの代名詞になったグルーヴが聴ける曲
TOTO 「Hold The Line」
Donald Fagen 「Ruby Baby」
Al Jarreau 「Black And Blues」
Herbie Hancock 「Paradise」
Finis Henderson「Lovers」
5.「Breakin’ Away」 Al Jarreau
【沼澤】このアルバムはジェイ・グレイドンのプロデュース。この頃のジェイ・グレイドン周りの作品にはジェフかスティーヴ・ガッドが入っていて、「この人たちが叩いていれば間違いない」という空気がもう出来上がった時代。「Breakin’ Away」はいわゆるハーフタイム・シャッフルで、ジェフ自身がバーナード・パーディーのプレイを徹底的にコピーしたと話している流れの中にある演奏です。ただ、単に真似しているだけではなくて、ゴースト・ノートの処理やフィルの組み立てなど、細かい部分がすべて音楽として成立している。本人は“たまたま入った”と言っていましたけど(笑)、そういうフィーリングの中で自然に出てくるところが、この人のすごさだと思います。
6.「The Girl Is Mine」 Michael Jackson
【沼澤】一聴するとストレートなポップスに聴こえるんですが、実はハーフタイム・シャッフルのフィーリングが元になっているんですよね。ただ、右手で3連を全部刻むのではなく、あえてそれを抜いて8分音符的にしている。だから聴いた印象は違うんですが、グルーヴの中身としては「Breakin’ Away」とつながっているというのが面白いところです。ジェフ自身、初めてマイケルのレコーディングに行ったときに“モータウンのグルーヴだった”と話していて、そのフィーリングをどう出すかをすごく大事にしていた。譜面で考えるのではなく、「この曲ってこういう感じだよね」という感覚で演奏している、その積み重ねがこの自然なグルーヴにつながっていると思います。
「Rossana」のグルーヴの元になった曲
Steely Dan 「Home At Last」(drums:Bernard Purdie)
Led Zeppelin 「Fool In The Rain」(d:John Bonham)
ハーフタイム・シャッフルが聴ける楽曲
TOTO 「Rosanna」
TOTO 「Mama」
TOTO 「These Chains」
Al Jarreau 「Mornin’」
7.「No Such Luck」 Michael McDonald
【沼澤】この時期は、デジタル機材が本格的に入る直前で、いわゆるアナログ録音の完成形のような時代。このアルバムもそうですが、とにかくドラムの音がいい。ジェフやスティーヴ・ガッドのようなプレイヤーが、その環境で演奏しているので、音としての説得力が段違いです。この曲で面白いのは、ピアノと完全に同じリズムをなぞるのではなくて、あえてずらしたり、食ったりしながらグルーヴを作っているところで。全部にアクセントをつけるのではなく、どこで抜くかをすごく意識している。その細かいニュアンスの積み重ねで、あの独特の気持ち良さが生まれているんだと思います。
ブラック・ミュージックで聴くジェフの名演
Etta James 『Deep In The Night』
Aretha Franklin 『Aretha』
8.「Freddie Um Ready」 Syreeta
【沼澤】この曲は、自分がアメリカに行ってジェフ・ポーカロをかなり近い距離で見たときのイメージと、すごく重なる1曲なんです。当時の音や空気感が、そのままレコーディングに残っているような感覚があります。この曲もシャッフルのフィーリングがベースにあって、ハイハットの動きやフレーズの入れ方を、その場で試しながら演奏しているようなニュアンスがあるんですよね。それがそのまま作品として成立しているのが面白い。演奏だけの部分もかなり長尺なんですが、普通なら整理しそうなところもあえて残している。その“瞬間の良さ”を優先している感じも含めて、すごくジェフらしい演奏だと思います。
第二弾の開催と会員先行チケットについて

「沼澤 尚 the Greatest Playlist feat.ジェフ・ポーカロ♯2」の開催が、ジェフの命日である8月5日開催が決定。有料会員向け先行&割引チケット販売も予定しておりますので、詳細は続報をお待ちください。