d：デイヴ・ウェックル

タッチとトーンに細心の注意を向けた表現力は“芸術的”
幾多のドラム経験がストローク1つ1つに注ぎ込まれている

アコースティック・バンドとしては91年のライヴ盤『アライヴ』に続くリユニオン・ライヴ。この3人は長年ずっと共演してきている印象なので、このユニットとして3枚目というのは少々意外な感じも。20年ぶりの再集結だがトリオとしての空気感は昔と変わらず、より老練さが加わった印象である。往年の定番曲とスタンダード曲で構成され、懐かしさも孕みながら極上のアコースティック・ジャズに酔いしれられる内容。ドラム・セットはジャズに特化したようなサウンドではあるが、ハイハット脇のタムやカウベル、サイド・スネアなどウェックルらしい配置も想像できる。ブラシでのプレイが多いのも特徴で、ある意味でスティーヴ・ガッドの境地に達してる感覚も味わえ、実際にゲイル・モランを歌のゲストに迎えた曲では、70年代にガッドと共演した一連のアルバムの感覚が甦ってくる。タッチとトーンに細心の注意を向けたような表現力はまさに“芸術的”と言えるもので、これまでの幾多のドラム経験がストローク1つ1つに余すところなく注ぎ込まれている。まだ“枯れず”に熟成し続けるプレイをご堪能あれ！（菅沼道昭／る＊しろう）