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    Archive Interview−コージー・パウエル ②

    本日12月29日は日本のドラマーにも多大な影響を与えたドラム・ヒーロー=コージー・パウエルの生誕記念日。ここではヤマハ・ビッグ・ドラマーズ・キャンプの講師として来日した際に実現した、1990年10月号の対面インタビューを編集を加えてWebに公開! 取材時のコージーはブラック・サバスに在籍していた頃で、参加した『Tyr』についても語っている。

    パワーの秘訣? クールに、そして楽しんでやればいいんだよ

    ●アマチュア・ドラマーに、今回の“ビッグ・ドラマーズ・キャンプ”のような場が与えられるということをどう思われますか?
    コージー
     初心者には、テクニックを学ぶ以外にも、どのようなジャンルを目指すかという方向性を決めるためのとてもいい機会だと思うよ。

    ●このキャンプに参加しているアマチュア・ドラマーをご覧になった感想を聞かせてください。特に、何か共通の欠点のようなものがあれば指摘してください。
    コージー
     力が入りすぎているみたいだね。堅くなってるよ。もう少しリラックスしてやった方がいい。それからロックをやるにしてはほとんどの人が椅子を高くしすぎてる。確かに、椅子を高くすれば客席からはよく見えるけどね。低くして叩いた方がパワーが出ると思う。顔なんか見えなくても気にしないよ。来てくれる連中は僕の音を聴きに来るんだから。

    ●最近の日本のドラマーは、手数の多いプレイをするより“一発入魂”みたいなタイプが増えつつあるようなんですが、そういうタイプのドラミングについてどう思われますか?
    コージー
     ドラムを叩き始めると、みんな手数を増やしたいと思うんだよ。注目されるようにね。しかし、グループの中で求められているのはリズムをキープすることで、叩きすぎることじゃない。ギタリストもヴォーカリストも手数の多すぎるドラマーは好きじゃないから、仕事ができなくなるよ。ドラム・ソロではやりたいことをやればいいけど、曲の中ではシンプルにやるべきだ。

    どんなときでも派手に叩きまくるドラマーをたくさん見てきたよ。ロック・ドラマーにとって一番大切なのは、シンプルにリズムをキープすることだっていうのを、多くのドラマーが忘れちまってるね。

    ●以前、ジェフ・ベック・グループでやっていたようなスタイルのドラミングをまたやってみることは?
    コージー
     あの頃は、特定の音楽に合わせたスタイルでプレイしてた。僕のスタイルはいつもとてもヘヴィだけど、あのときは少し違ってて、何て言うかジャズ・ロックっぽいスタイルだったんだ。その後プレイしてきたグループはもっとヘヴィなサウンドだったんで、僕のスタイルもよりヘヴィにする必要があった。それで歳を取るにつれてより一層ヘヴィになってきたんだな。

    ●ブラック・サバスの新作『Tyr』が完成したばかりですが、それはトータルに見てどんな作品になりましたか。出来には満足していますか?
    コージー
     グレイト! とてもいい出来だよ。ドラム・サウンドは今までいろいろやってきたアルバムの中でもベストだね。新しいヤマハのキット、僕のために作ってくれたゴールドのキットを使ってる。そのドラム自体のサウンドがすごくいいんだ。共同プロデュースもやってるし、出来には満足してるよ。

    ●今回のドラムの音作りは?
    コージー
     よりナチュラルなサウンドを大切にしたかったから、エフェクトは使ってないよ。それでいい部屋鳴りの録れるスタジオを探したりもしたんだ。

    ●トリガーを使ってサンプリングした音源を鳴らしたりするのは好きじゃないとおっしゃっていましたが、その考えは今も変わっていませんか?
    コージー
     好きじゃないね。サンプリングはナチュラルじゃないから嫌いだ。僕には向いてない。プロデューサーに言われてレコーディングでやってみたことがあるけど、個人的には好きじゃない。自分がプロデュースに関わってレコードを作るなら、使わないね。

    ●例えばビル・ブルーフォードなんかはサンプリングを使って素晴らしいサウンドを出していますよね。そういう他のドラマーのことはどう思われますか?
    コージー
     それはいいことだと思うよ。他のドラマーがうまくやっているんだったら、それはそれでいいし、個人の考え方の違いだと思う。自分は自分で、他人は他人だよ。

    ●新作では曲作りにも参加していますね?
    コージー
     ヴォーカリストとギタリストと一緒にすべての曲作りに参加してるよ。

    ●作曲するときに使う楽器は?
    コージー
     初めに僕がドラムでリズムをプレイする。僕達の曲作りはチームでやるんだ。僕の作ったリズムにフィットするパターンをギタリストが作ったり、彼のアイディアにフィイットするリズムを僕が作ったりする。それにピアノを入れたり歌を載せたりしていくんだ。

    最初は普通の部屋でアコースティック・ギターに合わせて膝を叩く、みたいな感じで始めて、次の段階でリハーサルをやる。全員が集まってプレイするんだ。それが曲を作り上げていくプロセスで、グループのチームワークでやってる。今度のアルバムがとてもうまくいったのは、そのチームワークのおかげだね。1人がすべて作ってしまうのとは違うんだ。

    ●一般的に、ドラマーが曲を作ることは少ないようですが、実際にやってらっしゃるあなたにとってドラマーが曲作りに参加する意味は?
    コージー
     ドラマーはいつもバックグラウンドに回ることが多い。だけど、もしもドラマーがある種のドラミングをやったとしたら、その曲のサウンドを完璧に変えてしまうことだってできるんだ。ドラマーはいつも、単にリズムを入れるだけということで作曲者としてはクレジットされないことになってるよね。

    でもツェッペリンが出てきたとき、ジョン・ボーナムの名前がクレジットされていたんだ。彼がいなかったらレッド・ツェッペリンのサウンドは全然別モノになっていたはずだよ。マシンでプレイしたらあんなサウンドにはなりっこないし、彼は彼ならではのスタイルを持っているドラマーだったんだ。彼は曲作りのチームに入ってたはずで、それはとても大切なことなんだ。曲全体のフィーリングに関わってくるからね。僕の考えはそんなところだけど、わかってもらえた?

    ●では、パワフルなビートをキープする秘訣は?
    コージー
     まずリラックスすることだね。力んだり緊張したり、興奮したりしてたらうまく表現できないよ。完全にクールで、リラックスしてないとね。それに楽しんでやらなくちゃ。それが一番大切だ。ノってやらなかったらいいリズムは叩けない。ドラマーはマシンじゃないんだから。マシンは常に正確にビートを刻むけど、ドラマーがノって叩いてるとすべてがスウィングしてる。そして1曲ごとに全力を尽くすんだ。曲の中に自分のすべてを入れ込むんだ。その日の演奏が終わったときに、自分を出し切ったと思えたら、最高だね。