UP

来日公演を収録したライヴ・アルバムを発表したスティーヴ・ガッド・バンドに迫る!

  • Translation & Interpretation:Akira Sakamoto
  • Photo:Tsuneo Koga/Special Thanks:Blue Note Tokyo
  • Text:Yusuke Nagano/Rhythm & Drums Magazine

ドラムの神様=スティーヴ・ガッドが、共にジェームス・テイラーのサポートを務めるメンバーと結成したスティーヴ・ガッド・バンド。過去にもスタッフやガッド・ギャングなどバンドとして活動したことはあったが、自身の名前を冠したこのバンドは、本人にとってもパーマネントな位置づけで、2013年の『Gadditude』を皮切りに3枚のオリジナル・アルバムを発表。そして4月2日に2作目となるライヴ・アルバム『アット・ブルーノート・トーキョー』をリリースした。ここではその発売を記念して、スティーヴが主体となった近年の活動に迫ってみたい。

サカナクション江島啓一によるStave Gadd Band
『At BlueNote Tokyo』のレビューはこちら→Drummer’s Disc Guide

発信し続ける2010年以降のスティーヴ・ガッド

2010年以降、ソロ名義の作品やプロデュース活動など、自身から発信する音楽に精力的に取り組んでいるスティーヴ・ガッド。まずリーダー作として近年のターニング・ポイントとなるのは、2010年にスティーヴ・ガッド&フレンズ名義で発売された『Live at Voce』だろう。これは09年11月にアリゾナ州で録音されたライヴ盤で、マイルスのグループにも在籍していたジョーイ・デフランチェスコやガッド・ギャング時代の朋友ロニー・キューバといったメンバーと熱いインタープレイを繰り広げている。レパートリーにはガッド・ギャング時代も演奏していたR&Bのカヴァーが多く含まれるが、ジャズ的な色合いも増している。

ポール・サイモンの奥方であるエディ・プリッケルら¥と“The Gaddabouts”を結成したのも2010年で、翌年にリリースされた1stアルバム『The Gaddabouts』はカントリーやブルースなどを基調とした楽曲をシンプルで温かみのあるアレンジで聴かせる内容となっている。プロデュースもガッド自身が担当し、まろやかな音色を駆使したドラム、微妙にハネた“いなたい”ビート感などもバンドの個性を際立たせた。2012年には早くも2ndアルバム『Look At Now!』を2枚組全17曲という充実のボリュームでリリースした。

そして2013年8月に自身のプロデュースで、スタジオ録音盤としては実に25年ぶりのリーダー・アルバム『Gadditude』をリリース。ジャケットには“Steve Gadd Band”と表記され、そのメンバーはジェームス・テイラーのサポートを務める凄腕の面々。同年10月に行われた来日公演では緩急の効いたグルーヴと繊細で情緒豊かな表現力で観客を魅了した。そしてガッドが70歳の節目を迎えた2015年には、2ndアルバム『70 Strong』が発売。ゆったりとした深い振幅でウネるこのバンドならではの極上のグルーヴは増々進化した印象。

また70歳を記念して、ガッドの地元=ニューヨーク州ロチェスターで行われたライヴの模様は『Way Back Home:Live From Rochester, NY』として2016年末にリリース。スティーヴ・ガッド・バンドはさらに精力的に活動を続け、2018年にはバンド名をタイトルに冠した3年ぶりのスタジオ・アルバム『Steve Gadd Band』を発表。本作は第61回グラミー賞「ベスト・コンテンポラリー・インストゥルメンタル・アルバム」賞を獲得するなど、世界中で話題を集めた。そんな絶好調の状態で2019年末に日本ツアーを敢行! デヴィッド・スピノザをギタリストに迎え、日本のファンを沸かせてくれた。今回リリースされる『At Blue Note Tokyo』は、そのツアーの中から、12月16〜18日にブルーノート東京公演で繰り広げられた白熱のステージをパッケージしたものである。

その他にサックス奏者のカエル・ブリッチャーと、オルガン奏者のダン・ヘマーとのトリオでも精力的に活動を展開。2014年に発表されたライヴ・アルバム『Blicher Hemmer Gadd』は、多様なグルーヴを柔軟に演奏する臨場感溢れるサウンドが心地良く、ドラム・ソロの見せ場も多く含まれていた。その後も2018年に『Omara』、翌2019年に『Get That Motor Runnin’』がリリースされるなど、すっかりレギュラー化。先頃投稿されたスティーヴのInstagramではワクチンを摂取したことを発表し、コロナ明けの活動再開を示唆している。

その他にも数々のプロジェクトに携わっており、ここに取り上げた内容は活動の一部であるが、2010年頃から近年に至るまでのスティーヴの足取りを大きな流れで辿ってみると、その多岐に渡る精力的な活躍ぶりにあらためて驚かされる。近年は来日する機会も多かったスティーヴ。コロナが落ち着き、そのドラミングを再び日本で観られる日を楽しみに待ちたい。

※本記事は2015年9月号の記事に加筆し、再編集した内容です。

次ページ ガッド・バンドについて“神”が語ったインタビュー