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来場者も出演者も心ゆくまで楽しむ姿が印象に残る! Zildjian Festival 2023を詳細レポート!!

  • Report:Yusuke Nagano/Rhythm & Drums Magazine(Gear)
  • Photo:Takashi Hoshino

ドラム・イベントの素晴らしさと
必要性を再認識できる充実の1日

開演時間になりステージが暗転すると、大きな拍手の中で4名のドラマーが所定のセットに着座。一瞬の静寂が訪れたあとに、神田の強烈なスタック・シンバルの一撃からライヴがスタートしました。まずは挨拶代わりのドラム・ソロを上手側から順番に回していきますが、それぞれが前のドラマーの流れを引き継ぎながら自分のカラーを存分に発揮。4人トータルで大きな物語を紡ぐようなプレイに冒頭から引き込まれます。

神田リョウ
SATOKO
坂東 慧
影丸

ドラム・ソロが終わると、続いてパーカッションや効果音が入ったバッキング・トラックを使ってのドラム・アンサンブルへ。イントロ・パートに続いて、スリリングなソロ回しが繰り広げられますが、テクニカルなフレーズの応酬はもちろん、誰かが複雑なメトリック・モジュレーションを仕掛けると、それを発展させる流れが生まれるなど、一体感のある展開が素晴らしい。また、途中で坂東がタムを使って“サザエさんの曲”のイントロを奏でたり、SATOKOが音頭風のフレーズを繰り出すと、影丸が和風のビートで応酬したりと、超絶あり、笑いありのパフォーマンスからは、出演者それぞれが心から楽しんでいる様子も伝わってきました。

アンサンブルに続いて、1人ずつマイナス・ワン音源に合わせて曲を演奏するコーナーへ。まずはステージに残ったSATOKOが、ゴースト・ノートを多用したきめの細かいグルーヴで、ブレッカー・ブラザーズの「サム・スカンク・ファンク」を演奏。スティックをやや短めにホールドするグリップを生かしたシャープなツブ立ちとパワーを兼ね備えた音色や、全身を巧みに連動させた躍動感。キックの片足ダブルのしなやかな動きも真骨頂だと感じました。

SATOKOの演奏が終わると、間髪入れずに神田へとバトン・タッチ。曲は、自身がサポートを務めるclaquepotのミディアム・ナンバー「Ahead」で、図太いキックとコシのあるバック・ビートを効かせた低重心のグルーヴが抜群の心地良さ。中間部ではスタック・シンバルを効果的に絡めた高速チョップス系のフレーズを散りばめ、超アグレッシヴに展開しますが、その激しいプレイの中でもゆったりとした基本の流れを崩さないリズム・センスに舌を巻きます。

坂東は自ら作曲を手がけたT-SQUARE のナンバー「Time Spiral」を演奏。小気味良いリズム・ワークと、シンバルやタムをメロディアスに絡めた変幻自在なプレイは、水の流れのようによどみなく滑らかでありながら、時に力強く……その卓越した表現力と洗練されたテクニックに惹きつけられます。後半部でのプッシュ感の効いたクラッシュ連打などにロック魂が感じされるのも魅力で、その音圧の高い氣の込められたプレイにもシビレました。

ラストの影丸は、自身のバンド=-真天地開闢集団-ジグザグの「タガタメ」を演奏。3拍子系と高速16ビートが絡み合う前衛的な曲を、鋭角的な切れ味とスピード感でパワフルに演奏し、その後にフリーのソロへ突入。高速ツーバスから左足のジャム・ブロック、はたまた右足のカウベルなどを用いたオスティナートなど、多彩な足技を惜しみなく披露。激しいロック・テイストで聴かせる超絶技に、会場が大いに沸いていました。

MCを務めたBunta(右)とYamahaの谷山氏

それぞれのソロ・コーナーのあとは、MCを務めるTOTALFATのドラマー、Buntaとジルジャンのアーティスト・リレーションを担当する谷山氏が舞台上へ。軽妙なトークで会場の雰囲気を和ませつつ、続いて行われる1対1のフリー・スタイルのドラム・バトルの説明へ。バトルはSATOKOと影丸の2人から始まり、続いてはSATOKOと神田、さらに神田と坂東、坂東と影丸というように入れ替わりながら展開。

バトルはまったく打ち合わせなしのガチンコ勝負ということですが、テーマとなるモチーフがトークの中で決められていくケースもあり、例えばSATOKOと神田は「セクシーな400年の歴史を感じさせるシンバルを堪能しつつタカトンを入れる」、神田と坂東は“ドゥルタトン”というフレーズといった具合いに、そのテーマの枠組みの中でソロを発展。どのセッションも笑顔を見せながらのスーパー・プレイはもちろん、コール&レスポンス的な掛け合いや間合いも絶妙で、“ドラムでこんなにも自由に会話ができてしまうんだ!”という驚きと共に、ドラムの持つ表現力の深さをあらためて体感させてもらった思いがしました。

影丸とSATOKO、菅沼門下生同士によるバトル!
“ドゥルタトン”というフレーズをモチーフに発展させた坂東と神田

いよいよライヴも後半戦となり、4人が一言ずつジルジャンの魅力をコメント。それぞれの言葉から深いジルジャン愛がしっかりと伝わってきますが、「私達は400年後のシンバルを叩いている人がいる未来に向かって、これからもシンバル、ドラムの素晴らしさを全力で伝えていきたい! みなさんドラムを愛していきましょう!」というSATOKOの呼びかけには、特に大きな声援が上がっていました。

ステージの最後はジルジャン愛用者であるDezolveの山本真央樹が、イベント用に書き下ろした楽曲「Believers」を全員で演奏。4人が一体となったグルーヴの図太さ。曲の流れに沿ってそれぞれの役割分担が自然発生的に生まれるアンサンブルの妙。中盤以降はドラム・ソロの掛け合いもふんだんに織り交ぜつつ、スリリングなエンディングのキメを経て大団円を迎えます。

こうして大喝采で幕を閉じたライヴ・ステージ。その後、スクリーンには400周年を記念した映像が映し出され、ラストで今年の11月19日に再び渋谷ストリームホールにて“Zildjian Festival”が開催されるというトピックも発表されました。

トップ・プロによるパフォーマンス・タイムが終わったあとには、同じ会場内に設置されたサブ・ステージで、フリー・セッション大会がスタート。ステージにはA Customと、K SweetシリーズがセットされたPHXのドラムが用意され、2人1組で「Believers」のショート・バージョンを演奏していくという内容です。参加者は挙手制で、Buntaがその場で指名していきますが、多くの来場者が積極的に手を上げて、熱い演奏を繰り広げていたのが印象的でした。

こうして開場時間の14時から活気に溢れていたジルジャン・フェスティバルも、セッションが終了する21時でクローズ。コロナ禍でイベントが制限されていた昨今ですが、来場者の笑顔や歓声、そして参加アーティスト達が心ゆくまで演奏を楽しんでいる様子に、ドラム・イベントの素晴らしさと必要性を再認識できる充実の1日となりました。あらためて400周年おめでとうございます! そして11月に行われるZildjian Fesitivalを心待ちにしたいと思います。

Zildjian Festival 2023特設ページ