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【有料会員限定】デビュー45周年記念|角松敏生を巡るドラマーたち〜前編〜 ポンタ、江口信夫らが支えた初期の角松サウンド
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- Text:Seiji Murata
先日、中古レコード屋に立ち寄ってJapanese Pops 7インチの棚を物色していると、角松敏生「NO END SUMMER」(85年)を発見して“ラッキー!“と思ったのもつかの間、黄色の価格タグを思わず二度見して、持ち上げた盤をそのままゆっくり降ろした。そんな価格の青天井ぶりからも、昨今のジャパニーズ70’s〜80’s シティ・ポップス再評価の流れは、一時のブームどころか定着、いや、ますます拍車がかっているように感じる。
そういった当時の“J-AOR”とも言える構築度の高いポップスが、今では“サブスク”に乗ることで、これまで未聴だった人にも再発見されている一方で、山下達郎や角松のように、サブスクを一部、もしくは全面的に解禁していないアーティストもいる。ところが、まさに今このタイミングで、角松が旧譜10タイトルを解禁した。それを機に、角松敏生の45年に渡るアーティスト活動をどんなドラマー達が支えてきたのか、あらためて振り返ってみたい。
村上“ポンタ”秀一|
角松サウンドの原点を刻んだ”AORドラマー”

まずは1981年のデビュー・アルバム『SEA BREEZE』。角松は1960年生まれなので、当時二十歳という若さでのレコーディングとなったが、本人の言葉を借りれば「そのとき僕はまだ修業中で、初めてスタジオに入って仮歌を歌わされて」という状況だった様子。その反面、サウンドを生み出していたのは錚々たるスタジオ・ミュージシャンの顔、顔、顔……。ただその人選には、角松本人がそれまで影響を受け、追い求めてきたサウンドが反映されているかのように、洗練された都会的なサウンドを70年代から生み出し注目を集めていたヘッド・アレンジ・ミュージシャンたちがピックアップされている。
リズム体で言えば、村上“ポンタ”秀一+後藤次利(or 富倉安生)、林 立夫+マイク・ダン(パラシュート)、上原“ユカリ”裕+田中章弘、そしてギターは松原正樹、今 剛、鈴木茂といった面々が、そのサウンドを固めている。このメンバーからは、はっぴいえんどやティン・パン・アレー、吉田美奈子、大滝詠一、サディスティックス……といったサウンドが容易に思い浮かぶはずだ。村上“ポンタ”秀一は、このアルバムの8曲中6曲に参加し、シングル・カットされた「YOKOHAMA Twilight Time」や「Still I’m In Love With You」といった、現在も歌い継がれる代表曲に参加。筆者的にはどちらも、すべてのプレイが歌のストーリーをそのまま表現し、そこに余計な足すべき・引くべき言葉が1つもないという完璧な演奏だと思える。
このレコーディングで緊張している角松と“連れション”(ポンタ曰く)したときに、「いつもと同じ感じで気楽に歌いなよ」とリラックスさせたという逸話が有名だが、そこから始まった角松とポンタの関係は、この後、折りに触れてずっと続くこととなる――ポンタが亡くなるまで。『REASONS FOR THOUSAND LOVERS』(89年)や90年代の一時活動休止=“凍結”を挟んだ『ALL IS VANITY』(91年)、『あるがままに』(92年)、『TIME TUNNEL』(99年)、『The gentle sex』(2000年)といったオリジナル・アルバムをはじめ、ギター・インスト作『SEA IS A LADY』(87年)、『LEGACY OF YOU』(90年)にも参加。
ここでの手応えから、斉藤ノヴや青木智仁、小林信吾ら“角松バンド”の中核をなすメンバーによる“NOBU CAINE(ノブケイン)”もスタートし、角松はエグゼクティヴ・プロデューサー兼ゲスト・プレイヤーとして参加、曲提供もしている。ノブケインの諸作は、88年に角松が設立したプライヴェート・レーベル“Om(オーン)”からリリースされているが、レーベル初作となった、トップ・セッション・トランペット奏者の数原 晋率いるビッグ・バンド“TOKYO ENSENBLE LAB”の『BREATH FROM THE SEASON』(88年)にも、当然のようにポンタが必要とされている。

一方ライヴでも、特にインスト作に関連したツアーではポンタが多く、また、“凍結”前の、作家の内面を吐露するような繊細な表現が求められる“ALL IS VANITY”や、“あるがままに”のツアーも、ポンタが全面参加していた。その他は、1ショットのゲスト・プレイヤーとして、特に00年以降は、01年のデビュー20周年時に沼澤 尚とのダブル・ドラム、16年の35周年では『SEA BREEZE』8曲の完全再現を玉田豊夢、山本真央樹とのトリプル・ドラムで実現している。
この16年のライヴで、ポンタがバラードで使用したスネアは、パールのフリーフローティング・コパー14”×6.5”だった。『続・俺が叩いた。ポンタ、80年代名盤を語る』(18年)でも、自身を“AORドラマー”だと評した理由の1つが、「Still I’m In Love With You」でのスネア・サウンド。その象徴的なスネア・サウンドは、ずっと角松自身からリクエストされてきたものだと語っていた。
ジョン・ロビンソン|LAセッション・シーンとの邂逅
『SEA BREEZE』の後は、早くもLAレコーディングで、アース・ウィンド&ファイアーらを手掛けていたアレンジャー、TOM TOM 84の元、ジョン・ロビンソンやネイザン・イースト、ルイス・ジョンソンといった、当時の日本ではまだ紹介されていないセッション・ミュージシャンを起用して2ndアルバム『WEEKEND FLY TO THE SUN』(82年)をリリース。さらに3rd『ON THE CITY SHORE』(83年)では、初セルフ・プロデュースで、菊地丈夫や高水健司、佐藤 準らに加え、青木智仁などセッション活動で“バンド”的な結束を強めていた若手をも含めた布陣でレコーディングが行われた。この2作を経て、84年発表に発表された『AFTER 5 CLASH』で起用されたのが江口信夫だ。
江口信夫|
角松バンド黄金期を支えたタイトなグルーヴ

先立つ83年、角松は杏里の『Timely!』をプロデュース、曲提供に加え編曲も手がけていたが、当時、大学卒業後に浅野“ブッチャー”祥之や中村キタローらと共に杏里のバンドで学園祭などを中心にサポートしていた江口を抜擢したのだ。ここで、角松(g)+江口(d)+青木(b)+友成好宏(key)という、当時の角松バンドの核が完成する。青木のスラップ・ベースに、江口のタイトでバネの利いたグルーヴによるダンサブルでステップ・フォワードなリズム体が、当時の都会の上昇気流をそのまま表しているかのようだ。

江口は、同年のツアーや次作『GOLD DIGGER〜WITH TRUE LOVE』(85年)にも参加したのち、“解凍”後の98年“He is Back for The Future”ツアーや、99年の“TIME TUNNEL”、“The gentle sex”の両ツアーなどに再び合流。そして06年には、江口が4曲、スティーヴ・ガッドが5曲に参加したアルバム『Prayer』を引っさげたツアー“Prayer’s Player”という、ある意味、金字塔的なライヴに参加している。ガッドがプレイした曲をコピーすることになったが、江口自身がガッドをひたすら研究してきただけに、ツアー最終日に実現したガッド本人とのダブル・ドラムは、素晴らしい“融合”だったと強く印象に残っている。
ヨギ・ホートンから山木秀夫まで
作品ごとに変化するドラマー像
もちろん、ポンタ、江口両氏の間にも、数多くのドラマーが角松をバックアップしているのは、自身もドラムを叩き、ドラムが好きで、“ドラム・コンシャス”な志向の角松ならでは。先の『GOLD DIGGER』や、続く『TOUCH AND GO』でのヨギ・ホートンは、角松が大好きなドラマーとしてまず第一に挙げるほどの存在。『SHE IS A LADY』では土肥 晃、91年『ALL IS VANITY』ではリック・マロッタ、カルロス・ヴェガ、『TIME TUNNEL』や『INCARNATIO』では山木秀夫、『君をこえる日』(92年)では阿部 薫、そして『存在の証明』(00年)では河村“カースケ”智康、ジョン・ゲラン、ケニー・アロノフ、リッチー・ヘイワードなどなど、錚々たる顔ぶれの“職人”たちによるそれぞれの“色”を、各アルバム、各曲に配色している。
秋山”ジーノ”浩一 と 石川雅春|
ライヴで角松サウンドを支えた2人
さらに、忘れてはいけないのが、角松の国内ツアーをバックアップしていた秋山“ジーノ”浩一と石川雅春の2人だ。秋山は久保田利伸の初期バンド“MOTHER EARTH”にも在籍し、久保田のファンク/R&B系グルーヴを支えたドラマーで、石川は、杏里をはじめ数多くのポップス系レコーディングを担ってきたオールジャンルのセッション・ドラマーで、DIMENSIONなどフュージョン系バンドや、渡辺貞夫グループのレギュラー・ドラマーとしても有名な実力派だ。
【Info】2000年代初頭を支えた沼澤 尚、2000年代後半から2010年代中盤までを担った玉田豊夢、そして45周年公演も支えた山本真央樹、さらに2006年にライヴ共演を果たしたスティーヴ・ガッドらについて考察する「角松敏生を巡るドラマーたち」の後編も後日公開予定。お楽しみに。