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Interview−ジョジョ・メイヤー②

  • Interview:Akira Sakamoto
  • Photo:Taichi Nishimaki

コンピューターとの会話は
インプロヴィゼーションが
重要になってくるところに面白さがある

NERVEとしてツアーも始めるつもりだし
移動がもう少し自由になれば、アルバムも作りたい

●世界中のミュージシャン達が突如として暇になっちゃいましたからね。
ジョジョ そう。何年か前に僕のドキュメンタリー映画を撮ってくれた友達のアレクシス・アミティリガラが、今ちょうどパンデミックがミュージシャン達に及ぼした影響についてのドキュメンタリーを制作中なんだ。ミュージシャン達はもう、パンデミック以前の世界に戻ろうとはせずに、新しいことをやろうと考え始めていて、映画も『Zukunftmusik(未来の音楽)』というタイトルになる。その映画では、僕がマシンと共演している場面があって、今年の終りか来年に公開されると思う。僕が演奏した曲は、クセナキスのような20世紀の作曲家の作品にインスピレーションを得ているけれど、ああいった人達の作品は演奏で再現するのがとても難しい。でも、僕の場合はコンピューターと一緒にインプロヴァイズすれば済む。ミュージシャンにとって演奏が難しくてもコンピューターにとっては簡単な音楽がある一方、ミュージシャンにとっては簡単でもコンピューターにとっては難しい音楽もあって、例えば、説得力のあるシンプルなブルースは、コンピューターには演奏できない。幸いなことに、コンピューターがそういったものも演奏できるようになるまでには、まだしばらくかかりそうだけれど(笑)、僕にはできる。つまり、コンピューターとの会話は、インプロヴィゼーションというものがより重要になってくるところに面白さがあるんだ。コンピューターがランダムに生成する音に対して、人間がインプロヴァイズしながら反応することで、新しい音楽が生まれるわけだからね。

●将来性がありそうですね。
ジョジョ ウン。その一例がもうすぐ公開されるから、とてもワクワクしているよ。音楽だけじゃなく、映像などのアートの世界全体が共同体のようにして取り組んでいる分野だしね。その他にも、シンフォニー・オーケストラと一緒に「Volatile Gravity」という曲を演奏していて、その模様はYouTubeにアップロードされている。2、3年前に、オリヴァー・ヴェスピというスイス人の作曲家が僕のために書いてくれたんだ。あと、セイビアンと新しいシンバルのシリーズを開発している。まだ詳しくは言えないけれど、今までにはなかった新しい、過激なものができるから、みんなにも気に入ってもらえるはずだよ。

●いろいろ楽しみですね。ちなみに、今はスイスのチューリヒに住んでいるんですか。
ジョジョ そうだよ。今の僕は、住んでいる場所とは無関係に活動しているけれど、アメリカからは離れてヨーロッパに住むことにしたんだ。仕事もニューヨークよりロンドンでやることの方が多くなっているしね。僕がニューヨークに住み続けていたのは、バンドのメンバーがニューヨーク在住だったからだし、ニューヨークではスタジオの仕事もあったからなんだ。でも、今はディズニー専属みたいな人以外、スタジオ・ミュージシャンの仕事もなくなってきている。プロデューサーとして仕事をするなら、ニューヨークに住んでいる必要はないし、僕は今のニューヨークが向かっている方向性も好きじゃない。ここ10年の間に、ニューヨークはまるでドバイみたいになっちゃった(笑)。ショッピングには良いかもしれないけれど、多くのクラブが閉店してしまったし、多くのミュージシャンがニューヨークを離れて、ロサンゼルスなどの他の地域に移ってしまったんだ。NERVEのジョン(デイヴィス)とアーロン(ネヴェジー)はまだニューヨークに住んでいるけれど、ジェイコブ(バーグソン)もニューヨークには嫌気がさしたと言って、今はベルリンに住んでいるしね。僕もニューヨークは年に3、4回も行けば事足りるから、今はガールフレンドと一緒にチューリヒに住んでいるんだ。僕の家族も近くに住んでいるし、彼女をコロナウィルスから守ることもできるしね。スイスは美しい国で生活水準も高く、近くに湖があって、車で1時間も走ればスキーもできる。パンデミックが起こってからのニューヨークはまるで戦争状態だったけれど、スイスはまだ日常を保っているんだ。

●それでも、NERVEでの活動は続けているんですよね。来年の5月からツアーに出る予定が出ているようですし。
ジョジョ ツアーも始めるつもりだし、移動がもう少し自由になれば、アルバムも作りたいと思っているよ。『After The Flare』の次の作品で、アコースティック楽器で演奏したものをエフェクト加工するようなものになる。実験的に何曲かやってみたけれど、面白いものになると思うよ。ゲスト・ミュージシャンも何人か呼ぶつもりだしね。あとはライヴ盤も出せればいいな。実は、もっと大きな計画を2023年に向けて温めているところなんだ。今言ったようにメンバーはバラバラな場所に住んでいるから、少し計画的に事を運ぶ必要はあるけれどね。

約40ページに渡ってチャーリーのドラマー人生を深掘りする追悼特集。ジョジョによるテクニック解説の他、Modern Drummerや本誌で実現した貴重なアーカイヴ・インタビュー、楽器変遷、縁深いジム・ケルトナー&サイモン・フィリップスが本誌のためだけに応じてくれたインタビューも収録。ラストには国内フォロワーからのメッセージも掲載。さまざまな角度から、その偉業を振り返ります。