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Archive Interview −ロジャー・テイラー −

  • Translation:Taka Matsumoto
  • Interview:Louise King/RHYTHM 2012 August

今年は結成50周年のアニバーサリー・イヤーとなるクイーン。そんな彼らが初来日を果たしたのが、今から46年前の1975年4月17日。ここではそれを記念して、本誌で初めてロジャー・テイラーの総力特集を行った2020年7月号にも掲載した、イギリス「RHYTHM」誌にて実現した2011年のインタビューから、ロジャーがドラムについて語った部分を一部抜粋してお届けしよう!

僕は独学で好きな曲のフレーズを練習していただけなんだけど
その寄せ集めで自分のスタイルを築いたんだ

●時間が戻りますがドラムを始めたきっかけは?
ロジャー
 初めてやった楽器はウクレレなんだ。正直弾けなかったけどね(笑)。8歳のときに初めてバンドをやって、学校でロニー・ドネガンのスキッフルの曲を演奏したよ。ドラムをやり始めたのは12歳のときだ。これなら自分にもできるんじゃないかって思ってね。ビル・ヘイリー&ヒズ・コメッツの「Rock Around The Clock」をラジオで聴いて、そしてそのすぐ後にリトル・リチャードを知って、ドラマーになりたいって思うようになったんだ。その気持ちは止められないよね。父の助けを借りつつ、ドラムを1つずつ手に入れてセットを完成させていったよ。最初はすごく安くて小さいシンバルを1枚持っていただけだった。中古で8インチのAジルジャンのスプラッシュなんだけどね。

●そのシンバルを買うために長い時間をかけてお金を貯めたのではないですか?
ロジャー
 そうだよ、8ポンドもしたからね(笑)。しばらくはそのシンバルしか持っていなかったけど、その8インチのシンバルだけで、すぐにいろいろと学ぶことができたよ。そのシンバルのカップをライドとして使ったりもしていたから、そのためには上手なタッチを身につけなければならなかったしね(笑)。ちゃんとしたシンバルを揃えられるようになるまでかなり時間がかかったよ。今までにジルジャン以外のシンバルを試したことはあるけど、僕はジルジャンが特別なものに感じているよ。

 子供の頃にタイコ1つだけ、もしくはシンバル1枚だけしか持っていないというような時期があったけど、それはすごくいい練習になったよ。ドラム・セットを構成する1つ1つの楽器がどんなもので、どんな働きをしていて、どうすればそれを最大限に生かすことができるのかを知ることができたからね。リムみたいな、普通は叩くことなんてなさそうな部分でも全部使えるものは使うべきだという考えを僕は常に持っているよ。

●若い頃に憧れていたドラム・セットはラディックのシルバー・スパークルのセットだったんですよね?
ロジャー
 The Shadowsのブライアン・ベネットが最高に美しいラディックのシルバー・スパークルのセットを使っていて、僕はそれが欲しかったんだ。ラディックのドラムを叩くのがずっと夢だった。エンドーサーになってからは、家がラディックでいっぱいになったよ(笑)。

最近はDWを使っているよ。DWも素晴らしいドラムだけど、まだ昔のラディックとスレイシュマンのセットは今でも持っている。スレイシュマンの26インチのバス・ドラムは本当にすごいよ。面白いことに僕は実際に使うもの以外、ドラムを収集したりしたことはないんだけど、ギターは少し集めているんだ。美しいオールドなフェンダーとか、カッコいいグレッチを何本か持っていて壁に飾ってあるよ。

2008年からDWのキットを愛用しているロジャー。

●実際、クイーンであなたを象徴するセットもラディックのシルバー・スパークルでした。現在そのセットは、あなたの名前を冠したドラム・スタジオを持つギルドフォードのアカデミー・オブ・コンテンポラリー・ミュージック(ACM)に展示されていますね。
ロジャー
 ACMという素晴らしい学校に、自分の名前がついたドラム・スタジオがあるなんてとてもうれしいことだよ。彼らは見事なものを作ってくれた。学生が利用できる施設や資料や機材がとにかく素晴らしい。僕の時代にはそんなことはありえなかったね。

●長いキャリアを通じてあなたは本当にたくさんのドラマーに影響を与えてきましたが、あなたが影響を受けたドラマーは?
ロジャー
 ジョン・ボーナムはとにかく純粋なロックで、彼がロックを率いていたと言えるんじゃないかな? キース・ムーンからも大きな影響を受けたよ。彼は彼のスタイルにおいては本当に驚異的だったし、彼のドラム・サウンドはドラム史上、最高のサウンドの1つだよ。あのティンパニのようなタムはすごく革新的だったし、彼のフレージングはとてもナチュラルで本能的で素晴らしかった。あとミッチ・ミッチェルも好きだった。彼のあのロックとジャズの影響を混ぜ合わせた感じと器用さと創造性が素晴らしい。彼はドラマーとしてまだ過小評価されていると思うよ。エクスペリエンスが出てきたときの彼らの一体感は本当にすごかった。最近はルイ・ベルソンやバディ・リッチ、ジーン・クルーパなんかを聴いているよ。彼らは驚異的なプレイヤーでただただ素晴らしい。僕もジャズが好きで多少叩いたりするんだ。あまりハードに叩かなくていいし、ジャズのテクニックは本当に素晴らしいと思う。

●あなたは独学でその独自のスタイルを築き、その結果として聴けば一発で誰かわかるドラマーと言われています。
ロジャー
 みんながそう言ってくれるのはとてもうれしいことだよ。そういうタイプの人もいるだろうし、そうじゃない人もいるんだろうけど、僕はどうやらそのコツを掴んでいて、良い感じの手首を持っていたようだ。スナップを生むのは手首だから、ドラムにおいて手首はとても重要なんだ。僕は独学で好きな曲のフレーズを練習していただけなんだけど、その寄せ集めで自分のスタイルを築いたんだ。

河村“カースケ”智康による
ライヴ・アラウンド・ザ・ワールド』のレビューはこちら

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