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Archive Interview−ダレン・キング−

  • Interview & Text:Rhythm & Drums Magazine
  • Interpretation & Translation:Yuko Yamaoka
  • Photo:Tetsuro Sato

浮遊感と疾走感が交錯する独特なロック・サウンドと過激すぎるステージングで熱狂させる4人組=ミュートマス。日本でも夏フェスの常連として人気を集め、中でもその刺激的なバンド・サウンドを牽引していたのがドラマーのダレン・キングである。残念ながら2017年にバンドを脱退してしまうが、手数を駆使したそのアグレッシヴなプレイは“暴れ太鼓”という言葉がピッタリで、勢喜 遊[King Gnu]や吉田佳史[TRICERATOPS]、河村吉宏を筆頭に、日本のプロ・ドラマーの中にも彼のフォロワーは多い。昨日6月25日はそんなダレンの誕生日ということで、2011年に唯一実現した彼の対面インタビューの一部をお届け!

ドラムの数が少ない方が、倒したときに余り散らからないだろう(笑)?

●ヘッドホンをガムテープで頭に固定してライヴに臨むのは、あなたのトレードマークですが、あれはいつ頃からやるようになったんですか?

ダレン 10年前頃からやるようになったよ。練習中、エキサイトしてハードなプレイになると、いつもヘッドホンが頭から落ちてしまって……僕は常に頭を動かしまくっていたからね。それで困っていたらガムテープが目に入って……それでグルグル巻いて固定してみたんだ(笑)。そんな感じでやるようになったんだけど、これをやったのは僕が最初じゃないよ! 僕の前にキース・ムーンがすでにやっていたんだ。僕はそのことを知らずにやっていて、あとになってから知ったんだけど、キースはやっぱり素晴らしいね。

●ステージ上でのパフォーマンスがキースに似ているように感じていたので、彼の影響なのかと思っていました。でもドラマーとして同じタイプの血が流れているのかもしれませんね。

ダレン そうだと良いね。ワイルドなドラマーに共通した何かがあるのかもしれない。

●ライヴではとにかくアグレッシヴで、手数で攻める場面ではまるでメロディを歌っているかのようにも聴こえるのですが、どんな意識でプレイしているのでしょうか?

ダレン 特にそういうことを考えたりはしていないと思う。ただプレイしているうちにすごくエキサイトしてしまうだけさ(笑)。そもそも最初にこのバンドを始めたときは、僕らが“ロック・バンド”になるとは思っていなかったんだ。もっと“プロダクション・デュオ”みたいになると思っていた……つまり他のアーティストのためにレコードを制作するチームみたいになるって想像していたんだ。ところが僕らはじわじわとロック・バンドへと発展していって、サウンドもラウドになっていった。やっぱり人前でプレイしていることが影響して、そういうアプローチになっていったんだと思う。僕自身もドンドン気持ちが高ぶるようになって、よりラウドにプレイするようになっていったからね。もともと僕は一人っ子で、すごく静かに大人しく育ったんだ。だから深層心理的に、ずっと人に構って欲しいという欲求があったのかもね。注目して欲しかったのかなぁ(笑)。

●(笑)。ライヴ中は、ずっと全力疾走しているような感じでプレイし続けていますが、フィジカル面で何か気を遣っていることはあります? 

ダレン “身体がキツい”とか“大変だな”っていうのは全然感じないよ。むしろ四苦八苦するのはレコーディングのときだね。レコーディングに取り組んでいるときって、何時間も同じ部屋に1人で閉じこもる状態になるから……そのストレスで、かなり大食になりがちになるんだ。すると疲れやすくなり、レイジーになってくる。そのうち体重も増加していく(笑)。でもね、前回のツアー中に8キロくらい痩せたんだよ! スタジオ作業中に食べて太って、ツアーに出て僕はまた細くなるんだ。だからツアーは本当に大好き! ツアー中の僕は、文字通り“幸せの絶頂”みたいな気持ちになれるんだ。ライヴのあとは疲れるどころか、さらにパワー・アップしたようにさえ感じるよ。

●手数の多いスタイルですが、セッティングは3点セットにシンバル2枚と極シンプルですよね。シンプルなセットにこだわりがあるんですか?

ダレン うん、それはジーン・クルーパの影響だね。ジーン・クルーパは“自分はまだ4点セットをマスターしていない”って言っていたらしいんだ。だとしたら僕もまだまだのはず。それにコンパクトなセットの方がクールに見えると思った。ヴィンテージ・ドラムを使ってるんだけど、そのルックスもすごく気に入っていて、小さ目のセットが好きなんだ。サウンド自体、60〜70年代のデッドなトーンが好きだしね。だから今もガムテープで打面をミュートしたり、キックのフロント・ヘッドを取り外してシャツを入れたりしているんだ。それにドラムの数が少ない方が、倒したときに余り散らからないだろう(笑)?

●(笑)。あなたのように激しいプレイをするなら、耐久性のある新しいドラムの方が良さそうな感じもしますが、なぜヴィンテージのセットを?

ダレン 僕はヴィンテージ楽器の方が耐久性があるんじゃないかって思うんだ。家にWFLの大口径のセットを持ってるんだけど、それに水を垂らしたり、転がして蹴飛ばしたりしても大丈夫。ライヴで使っているロジャースのキットも1968年製だけど、全然問題ないね。でも新しいスネアを買って同じようなことをやると、なぜか長持ちしないのさ(笑)。

ダレンが来日公演で使った愛用のヴィンテージ・ロジャース。

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