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    トニー・ウィリアムス – 時代を変えた“天才”をシンディが語る

    • Interview & Text:Rhythm & Drums Magazine
    • Translation & Interpretation:Akira Sakamoto

    トニーの功績というのは、多くの人が考えているよりも大きい

    トニーが51歳という若さで亡くなっていなければ、もっといろいろな音楽を発表したと思うけど、彼が遺した作品を取ってみるだけでも、とても幅広い音楽性が感じられるし、私は彼から学んだものすべてを取り入れているわ。ドラム・キットで言えばトニーはまず、アート・ブレイキーやマックス・ローチ、ロイ・ヘインズ、フィリー・ジョー・ジョーンズといったトニーや私達にとってのヒーローが使っていたものと同じ、4ピースのドラムを使い始めて、当時ロイ以外はみんなグレッチのキットだったから、トニーのキットも最初はグレッチの18″×14″のベース・ドラム、12″×8″のタム、14″×14″のフロア・タムという伝統的な組み合わせだったけど、その後タムが2つになって、フロアも3つ、そしてベース・ドラムにスネアという7ピースのキットにまで発展して。

    この7ピース・キットは、極端な規模にはならずとも、いくつかの異なる種類のキットが(7ピース・キット1台で)網羅できるということを意味しているんだと思う。たくさんのドラムを並べていても、その中の2、3個しか使わないのなら意味がないけど、彼のキットは個々のタムが異なる明確なサウンドになるようにチューニングされていて、メロディックな演奏をしたり、2つのドラムを同時に叩いているような“重音”みたいな効果を出したりしていて。シンバルも、ライドはもちろんのこと、より高い音域を担うハイ・クラッシュを真ん中、18″のクラッシュを左側、20″のクラッシュ・ライドを右側に追加して、広い音域をカヴァーすることができるシンフォニーのようなキットを構築していたわ。ソック・シンバルも14″から15″のものに替えて、より太くダイレクトなサウンドを出しているし、音楽的な効果がよく考えられたキットで、私にとって、すごく良い勉強になった。

    トニーはとにかく幅広い音楽を網羅していて、ジャズ・ロックを始めたのもトニーだし、マイルスはジミ・ヘンドリックスやトニーの演奏を聴いて、あのエレクトリックな音楽のアイディアを思いついて、リズムや楽器編成など、さまざまなところからジャズの世界が一気に広がっていったんだと思う。そういう意味でも、トニーの功績というのは、多くの人が考えているよりも、もっと大きいものだと私は思うの。

    ※本記事は2017年11月号掲載の内容を転載したものです。

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