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Joe Morello – 三浦晃嗣が語る“変拍子ジャズ”を広げた偉大なるイノベーター –

  • Interview & Text:Rhythm & Drums Magazine

ジャズの歴史に燦然と輝くデイヴ・ブルーベック・カルテットの「Take Five」。5拍子で展開されるこのスタンダード・ナンバーで名演を刻んでいるのが達人、ジョー・モレロである。本日7月17日は彼の生誕記念日ということで、三浦晃嗣がその魅力を語った記事を公開! ビリー・グラッドストーンやサンフォード・モーラーに師事し、その軽やかなスティッキングに定評のあるジョー・モレロだが、三浦氏が着目したのは彼のフット・ワークだった!

ドラムの面白さがわかるようになってから聴いたので余計に楽しめた

ジョー・モレロ……というか(ジョーが叩く)デイヴ・ブルーベック・カルテットの「テイク・ファイヴ」を初めて聴いたのは、確か小学生の頃……1963〜64年だったと思うんだけど、NHKの『夢であいましょう』というバラエティ番組の音楽コーナーで、ピアノに中村八大、サックスに松本英彦、ドラムのジョージ川口という大人気だった“日本のジャズマン”が演奏する「テイク・ファイヴ」を聴いたのが最初なんだよね。蛇足だけど、当時のテレビは今と比べてカメラの台数も少なかったし、セット・チェンジに時間がかかるから、音楽番組にしてもバラエティ番組にしても場面転換のときに必ず音楽を挟むんだよね。もちろん生演奏で。モーニング・ショーとかワイド・ショーでも常にバンドが入っていたんだけど、テレビってとにかく緻密に構成されていて1秒でも間が空いたらディレクターは始末書もので。だから生放送のテレビで演奏するときは、放送前の“5! 4! 3! 2 ! 1!”の3あたりからカウントを取って、放送が始まった瞬間に演奏できていないとものすごく怒られた。俺も仕事でよくやったよ(笑)。

話を戻すとあの頃は5拍子が流行った時代で、永 六輔と中村八大が作詞/作曲した5拍子の曲を、丸山明宏(美輪明宏)が歌っていたのを見たことがあるし、歌謡曲にも(5拍子が)けっこうあったんだよね。で、「テイク・ファイヴ」も流行していてね。当時俺はそれが誰の曲かはもちろんわからなかったけど、高校生の頃に「アンスクエア・ダンス」という7拍子の曲がFMラジオのテーマ・ソングになってたんだよ。その頃になってようやく、変拍子とデイヴ・ブルーベック・カルテットが結びついてきて、それから自然とジョー・モレロを聴き始めたんじゃないかな。当時レコードは高価であまり買えなかったから、LPで持っていたのは『アット・カーネギー・ホール』と『タイム・アウト』、それに『タイム・ファーザー・アウト』かな。後にCDになって発売されるようになるとそのたび毎回買っていたよ。歳を重ねるたびにドラムのことが段々とわかってきて、そうなると曲やドラムの面白さがよりわかることってあるじゃない? ジョー・モレロはある程度(ドラムの)面白さがわかるようになってから聴くようになったから余計に楽しめたんだよね。だって若い頃は音色とか、そんなところまでは気がいかないから。俺は特にロックばっかり聴いていたし、「このドラムの音色が〜」なんて言うのは年寄りのセリフだよ(笑)。

よく聴いた作品を挙げるとすれば、デイヴ・ブルーベック〜で言うと、ライヴ盤の『アット・カーネギー・ホール』と“タイム・シリーズ”の『タイム・ファーザー・アウト』も良いし、それと“印象シリーズ”の『日本の印象』もすごく良かった。『ユーラシアの印象』も好きだけどね。あとはカーメン・マクレエがヴォーカルの“歌モノ”の「テイク・ファイヴ」が入ってる『テイク・ファイヴ』も面白い。タイトルのつけ方なんかが面白くて粋なんだよね。アート・ワークも良かったし。とにかく全部良いんだけど、名盤『タイム・アウト』の他には『アット・カーネギー・ホール』と『タイム・ファーザー・アウト』、『日本の印象』の3枚が自分の中でベストかな。全盲の一歩手前という視力の低下で活動が極端に制限されて、かなりの期間が空いたけど、94年くらいに次々とリリースされて、そのあたりのプレイも想像できないくらい若々しい力強い演奏で本当に素晴らしいんだよね。

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