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    “ロザーナ・シャッフル”を検証 Vol.02〜ジェフ極上のグルーヴをLogicで解析〜

    【楽曲の中での微妙な変遷】

    イントロ

    ここからはスタジオ盤の「ロザーナ」を部分的に解析していこう。まずイントロであるが、ここはゴースト・ノートがほとんど入っていない。オリジナル版の雰囲気で再現するならばEx-8となる。ゴースト・ノートは2小節目の最後だけに入れる形だ。しかしこの一発、いや“1粒”の効果は絶大。心地良いリズムの反復を感じさせる隠し味となっている。

    Aメロ ① (0:18〜)

    あらためてドラムのトラックだけを聴くと、Ex-8でスタートした基本パターンは、1番のAメロの中で徐々にゴースト・ノートが増えていくのがわかる。ゴースト・ノートが2打入るEx-9a、3打入る9b、そして4打入る9cだ。この部分の真意は今となってはわからないが、最初からゴースト・ノートを入れまくるよりも、音楽的なダイナミクスを優先してジワジワと音数を増やしていったのかもしれない。

    Bメロ ①  (0:38〜)

    徐々に増えてきたゴースト・ノートはここで全開となり、前述したEx-6中心となる。音楽全体も広がりを感じさせる部分なので、その細かい音によって倍増されていく躍動感も気持ちがいい。

    Cメロ (0:52〜)

    少し音圧の落ちるこのCセクションでは、Ex-10のシンプルなビートとなる。ここはハーフタイムでもなく、スネアが2、4拍目に入るノーマルな4ビートだ。ドラムだけを聴くとテンポが落ちているのがわかるが、全体のアンサンブルで聴けばそこに違和感はない。ここでのメロディやビート感が自然に聴こえるテンポに調整されている印象だ。

    サビ (1:11〜)


    ★=ジャスト ←=ジャストより少し前 →=ジャストより少し後ろ

    基本リズムと同等の難しさがあるのがサビの4小節パターン。Ex-11aは1番のサビの冒頭部分だ。ゴースト・ノートは減るものの、キックのフレーズが難しく、ゆったりとしたフィールを保つのは難しい。しかし実音のグルーヴはさらに絶妙! そこでタイミングを解析してみるとEx-11bのようになった。スタートのAがジャストに対しBのスネアはグッと後ろ。しかし、次のキック3発(C・D・E)はジャストになり、次のFからMまではすべて後ろになる。“このままだと全部が遅れるか?”と思いきや、最後の3発(N・O・P)は、グッと前に出てきて巻き返し、結果として“4小節で1つ”と言えるリズムが構築されている。ここをジェフのタイミングに沿って打ち込むと、機械ゆえの不自然さはあるものの、確かに雰囲気は出る。逆にジャストに設定してしまうと、どこか固くてカッコ悪いリズムに聴こえてくるから不思議。ジェフが“ジャストではない正解”を教えてくれる感じだ。

    エンディング

    ★=ジャスト ←=ジャストより少し前 →=ジャストより少し後ろ

    ここまで出てきた以外で特徴的なのが、エンディングに登場するEx-12aのパターン。キック中心で刻んできたボ・ディドリー・ビートを、手足で分散して表現していくイメージだ。ここも何箇所かを分析して平均的なタイミングを割り出すとEx-12bに近くなる。B・D・Eの音、すなわちウラ拍がやや前にくるという意味ではEx-7と同一。これは、ウラ拍を表現するのが手であろうと、足であろうと、ジェフの中では一貫したボ・ディドリー・ビートが2小節単位で流れていることを意味している。従ってキックが突っ込み気味とか、スネアが重いというパーツごとのクセではなく“常にグルーヴがキープされている”いうことになるだろう。

    まとめ

    繰り返しとなるが、この曲のレコーディングではクリックが使われていない様子。なので、テンポにもフレーズにも人間的な起伏は当然あり、ここで記した微妙なタイミングの前後は、あくまでも“傾向”となることをご了承いただきたい。その上で今回感じたことは、やはり“ジェフ・ポーカロは素晴らしい!”に尽きる。“ドラマー的な歌心”とでも言うべきか、フレーズをジャスト以上にジャストに感じさせてしまう音楽的な歌い方を持ち、その絶妙なタイミングを何度でも反復できるチカラを強く感じた。これこそが“グルーヴ”なのだろう。そしてそのグルーヴをさらにカッコ良く感じさせる音色、各楽器の音量バランスの存在も見逃せない。今回の研究では、数値的な角度からの分析によってジェフの残した歴史的なハーフタイム・シャッフルの秘密を少し紐解けたと思う。それと同時に“いかにすごいドラマーであったのか”を再確認するきっかけとなった。

    ※この記事はリズム&ドラム・マガジン2014年6月号の記事を転載したものです

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