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“ロザーナ・シャッフル”を検証 Vol.02〜ジェフ極上のグルーヴをLogicで解析〜

「ロザーナ」のハーフタイム・シャッフル

今回検証する「ロザーナ」の基本型となるのがEx-6。これを譜面通りに叩くだけでもかなり難しいが、正確に叩けたとしても、ジェフのような心地良いフィーリングを出せるわけてではない。ここでは「ジェフの叩いたタイミングは、“数値的なジャスト”と比べてどうなのだろうか?」という観点から、「ロザーナ」のドラム・トラックをパソコンに取込み、筆者なりに解析・検証してみた。

ジェフ流のタイミング

結論から書こう。ジェフの叩くEx-6は、キックとスネアのバック・ビート(=強い音)のタイミングが、ジャストよりほんのわずかに前後する特徴があった。「ロザーナ」のレコーディングはクリックを使っていないようなのでテンポには多少のユレがあり、必ずしも固定ではないが、いくつかの部分を解析すると平均的なタイミングが見えてくる。それをシンプルな楽譜で表したのがEx-7。それを具体的に書き出したのが下記となる。

★キックのオモテ拍(A・D)はジャスト、ウラ拍(B・E・G)はやや前
★Cのスネアはやや後ろ、Fはジャスト

この微妙なサジ加減の2小節パターンによって、ジェフならではのグルーヴが生まれているようだ。実際、打ち込みの発音タイミングをこの波形に従って微調整してみると、確かにジェフのフィーリングに似てくる。

キック=ボ・ディドリー・ビートに秘密のカギが?

このリズムにトライするとき、多くのドラマーはまず細やかな手の動きに集中してしまうはず。テクニック的には難関なので当然だ。しかし、今回の検証で感じた“ジェフらしさ”を出すカギはキックにある。まず“ボトムのボ・ディドリー・ビートありき”で、そこに手のフレーズを組み上げていくイメージだ。特にEのウラ拍はジャストよりも前に出てくる度合いが大きい。譜面では表現しきれない独特のタイミングを、時に“訛る(なまる)”と表現することがあるが、このキックの2小節フレーズは、まさにそのようなニュアンスを感じる。従って、“チッキ・チッキ”とハイハットを正確に刻み、縦の線を軸にしてスネアやキックを合わせていく方法だと、“正確だけど何か違う…”という結果になってしまうだろう。

●キックとスネアの絶妙なコンビネーション

オモテ拍のキックはジャストに入り、ウラ拍位置がやや前にあるというのは、すなわち“完全なるハネ”ではなく、“やや甘めのハネ具合い”ということになる。そう考えると“ロザーナ・シャッフル”は抜群の小気味良さを持つ一方、根本的な骨格ではハネ過ぎていないからこそ独特の味があるようだ。また、“バック・ビート”となる3拍目のスネア・アクセントは、譜に記したようにCFとで微妙に違うことが多い。Cがほぼジャストのときもあるので、常にこの関係とは言い切れないが、どちらもジャストより前に出てくることはない。もしスネアまでキックのように突っ込み気味になると、全体が突っ込み気味になるだけ。キックから生まれる心地良いスピード感、スネアから生まれるユッタリと大きなノリ、その相乗効果が、ジェフの心地良いグルーヴを特徴づけていると言えよう。

次ページでは「ロザーナ」の叩き方を徹底解説!