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    ジャック・ディジョネット – 時代の先端を走り続ける名手を芳垣安洋が語る

    • Interview & Text:Rhythm & Drums Magazine

    常に王道を叩くわけではなく
    1つそこに自分の解釈や色を振りかけて
    独特なものにしている

    ディジョネットが面白いのは、いろいろなリズムに対しての造詣が深くて、この人はちゃんとリズムを研究して、いろんなことをわかってやっているんだって感じる。自身のバンドだと、今で言う16ビート系のドラムンベース的なアプローチを当時から全部やっているし、マイルスのバンドでももちろんそういうプレイをしているし。あとはニュー・ダイレクジョンズなんかだと、サンバとサルサとアフリカ系のものをごちゃ混ぜにして、しかも7拍子でやってたりとか。アーシーなリズムもきちんと叩けるのに、良い意味で、常に王道を叩くわけではなく、1つそこに自分の解釈や色を振りかけて、独特なものにしている。だから何をやろうが、ディジョネットらしいものになるんだよね。しかもその上でリズムの本領がちゃんと聴こえてくる。ジャズ・プレイヤーとしては理想的だよね。

    ディジョネットのオススメ作品は、まったく聴いたことがない人に向けたわかりやすいのと、マニアックな部分両方含めカッコいいと思えるチャールズ・ロイドの『フォレスト・フラワー』。それからディジョネットらしいジャズという意味で、スペシャル・エディションの1枚目『スペシャル・エディション』。もう1作は何をやっているかわからないけどひたすらカッコいい、『ワイト島のマイルス』。あれはもうバンド全員がぶっ飛んでる。ロック・フェスで「最高のロックを聴かせてやる」ってマイルスが言って、フェスで30数分即興なわけじゃない? ベースも2つだけフレーズが決まっているだけでやり切って、何も言わずに帰っていって、観客を唖然とさせたあのライヴは本当にすごいと思う。ああいうものを、熱量としての面白さでロックを聴いてる人にこそ感じてほしい。もちろんジャズ・ミュージシャンも、あれくらいの気持ちで音楽やっていかないと埋もれてしまいますよ、と思うし。小綺麗にやっているだけじゃ絶対にダメ。聴いてわからなかったらそれでも良くて、わかりやすいディジョネット、例えばキース・ジャレット・トリオでも良いと思うんだけど、それよりも今挙げた3枚みたいな、ゲゲッとなるような作品を聴いてほしいね。何しろトニーに負けないくらいのリズムの開拓者であったと思うし、スペシャル・エディションやニュー・ダイレクションとか、あの時代にしかなかった特異なアプローチ、特異なサウンド、そういう隠れた名盤を今の若い人にもたくさん聴いてほしいと思ってる。

    ※本記事は2017年11月号掲載の内容を転載したものです。

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