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Drummer’s Disc Guide – 2021 Summer

– Summer 2021 –

【A】=アルバム 【M】=ミニ・アルバム 【E】=EP 【V】=DVD、Blu-ray


【A】ハイエイタス・カイヨーテ『ムード・ヴァリアント』

d:ペリン・モス

“カッコいいビートが好き!
それには今までの常識も手段も選ばない”って感じがいい

メルボルンの“kaiyote”達が“hiatus”からついに6年ぶりの新作をリリース。ネイパーム(vo)は制作途中に乳ガンが発覚してしまって治療に専念、そこからの復活! おかえりネイパーム! ペリン・モスのドラムは曲のシーンとドラムの音色、叩くリズム・パターンの落としどころ、センスがすごいですね。トラック・メイカーでもあり、サウンドのポスト・プロダクションのことも考えながらのアプローチは聴いている人を楽しくさせてくれます。自身のソロ作で得た実験結果も合わさってさらにこだわり抜いてますよね。シンプルに「カッコいいー!!」って腹の底から声が出ちゃいます。エレクトリックもアコースティックも垣根なくっていうか、もう同じ感覚になりつつありますよね。そのときに何が必要かに応じてビートを作ってます。“カッコいいビートが好き! それには今までの常識も手段も選ばない”って感じがいいですね。ペリンはあるインタビューで「人生は音大そのものだ。レコードを聴いて、独学で多くを学ぶことができる」と言っていて、僕はすごくそれに共感します。音楽がまた楽しくなる1枚を作ってくれてありがとう!(柏倉隆史/toe、the HIATUS)

◎Disc Information
【参加ミュージシャン】ペリン・モス(d)、ポール・ベンダー(b)、ナオミ“ネイ・パーム”ザールフェルト(g、vo)、サイモン・マーヴィン(key)、アルトゥール・ヴェロカイ(vo)、他

発売元:Brainfeeder/Beat Records 品番:BRC-670 発売日:2021.06.25

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【A】トニー・アレン『ゼア・イズ・ノー・エンド』

d:トニー・アレン、他

遺作にしての挑戦はとてつもなくクール
トニーの“永遠の”ドラミングがそこに自然と存在している

昨年、79年の人生を終えた伝説のドラマー、トニー・アレン。今作『ゼア・イズ・ノー・エンド』は、トニーが亡くなる直前にレコーディングしていた遺作と位置づけられるものだ。ここ数年、実験的な作品作りにチャレンジを続けて来たトニー・アレン。今作のテーマはヒップホップ。遺作にしての挑戦はとてつもなくクールで、終始度肝を抜かれた。しかし、そこに挑戦という言葉は皆無である。いつものトニー・アレンの“永遠の”ドラミングがそこに自然と存在しているだけなのだ。その意味とは果たして何なのか。それはトニー・アレンという人間の存在がドラマーというだけではなく、彼の人生において多くの人々に与えたその“芸術的存在”がいかに大きかったのかという意味が、今作からより感じとれるからであろう。楽曲においてこのような存在になれるかということはまさに生き方であり、芸術なのだ。今日も永遠のグルーヴがじっくりと地を踏むように、漂い続けている。今日も雨が降っている。(神谷洵平/赤い靴)

◎Disc Information
【参加ミュージシャン】トニー・アレン(d、per、etc.)、ヴィンセント・テーガー(electric.d、per、syn、etc.)、ヴィンセント・テレッレ(electric.d、b、g、etc.)、レミ・カバカ(per)、マチアス・アラマン(b)、ルドヴィク・ブルーニ(g)、デーモン・アルバーン(g、key)、サンパ・ザ・グレイト/ロード・ジャー=モンテ・オグボン/ナー・イート(vo)、レティシア・ブルジョア(cho)、他

発売元:ユニバーサル 品番:UCCQ-1137 発売日:2021.06.02

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【A】ノラ・ジョーンズ『ティル・ウィー・ミート・アゲイン ~ベスト・ライヴ・ヒット』

d:ブライアン・ブレイド

シンプルな“個性の塊フレーズ”で歌い合い
完璧に溶け合わせるスーパー・アンサンブル・バンド

ノラ・ジョーンズの素晴らしさ、ブライアン・ブレイドの素敵さをあらためてここで力説しても、読んでる人は“とっくに知っている”わけで省略するとして……このアルバムの聴きどころを一言で表現すると、“シンプルな個性の塊フレーズで歌い合い、完璧に溶け合わせるスーパー・アンサンブル・バンド”のライヴ盤ということです♪ ノラ・ジョーンズのピアノはただ自分のためのバッキングという次元ではなく、歌に寄り添うピアニストがもう1人いるかのような演奏です。ブライアン・ブレイドは初期のノラ作品にも参加しているけど、ブライアン参加のライヴ演奏が収録されて聴けるようになったのはここ数年で、iTunesではノラ・ジョーンズ・トリオのライヴ映像作品も観ることができます。誰がリズム・キープするではなく、バンド全員でごく自然に呼吸を合わせて心地良いパルスを生み出す技。技と言うより音楽愛の深さなんだろうなぁ……と想像します。映像でもこのライヴ盤でもしっかりと感じることができます。(伊藤大地/グッドラックヘイワ、サンフジンズ、他)

◎Disc Information
【参加ミュージシャン】ブライアン・ブレイド(d)、ノラ・ジョーンズ(vo、p)、クリストファー・トーマス/ジェシー・マーフィー(b)、ピート・レム(org)、他

発売元:ユニバーサル 品番:UCCQ-1139  発売日:2021.04.16

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【A】アレサ・フランクリン『至上の愛 〜チャーチ・コンサート〜 <完全版>』

d:バーナード・パーディ

誰もが認める“ソウルの女王”の懐刀でもあった
バーナード・パーディを初めとする最強のリズム・セクション

1972年1月13〜14日の2日間、ロサンゼルスのニューテンプル伝道教会にて行われた、アレサ・フランクリン最大のヒット・アルバムにして、正統派ゴスペル・ミュージックの熱狂と導きを世界中の音楽ファンに初めて知らしめた金字塔。幼少期から父C.L.と共にアメリカ国内の教会へ演奏旅行に赴き、ゴスペル・シンガーとしての地位を確固たるものにしてからソウル・シンガーへと転身。その後はアフロ・アメリカンの女性シンガーとして教会にある自らのルーツを音楽に反映させたヒット曲を連発、誰もが認める“ソウルの女王”への道を歩んでいきます。そんな絶頂期にあった彼女がルーツである教会で歌う。当時の彼女の懐刀でもあったバーナード・パーディを初めとした最強のリズム・セクション、彼女
が慕っていた“ゴスペル音楽の王”ことジェームズ・クリーブランドに指揮を依頼した聖歌隊の歌声、そして集まった観客とアレサが完全に1つとなっていく奇跡の2時間34分。5月末から何と映画としても公開中!(オカモト“MOBY”タクヤ/SCOOBIE DO)

◎Disc Information
【参加ミュージシャン】バーナード・パーディ(d)、パンチョ・モラレス(per)、アレサ・フランクリン(vo)、チャック・レイニー(b)、コーネル・デュプリー(g)、ケン・ラッパー(org)、サザン・カリフォルニア・コミュニティ・クワイア(vo)、他

発売元:ワーナー 品番:WPCR-18413〜4 発売日:2021.05.12

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【A】東京事変『音楽』

d:刄田綴色

ライヴにおける豪快なプレイ・スタイルとはまた違った
ファン垂涎の緻密に構築されたフレーズが詰まっている

名実共に“スーパー・バンド”である東京事変待望の10年ぶりのフル・アルバム 。刄田綴色のライヴにおける豪快なプレイ・スタイルとはまた違った、ファン垂涎の緻密に構築されたフレーズが詰まっています。M4「命の帳」ではバラードにおける独特なパーカッシヴなシンバル・ワーク、そして遊び心を感じる特殊なバス・ドラムの音を聴くことができます。M6「青のID 」ではおもちゃ箱をひっくり返したような。M11「緑酒」ではリムとハイハットを織り交ぜたお得意のフレーズに、“これぞ刄田節!”とうれしくなってしまいます。さらにパワー・アップして自分のホームで暴れ回るドラ息子に大興奮。スネアの音色を聴いてみても、曲によってチューニングをかなり変えて楽曲に寄り添っていることが感じられます。ご本人よりタイミング良く電話がかかってきたのでポイントを聞くと、「スティックをしっかり鳴らすことを意識した」と語ってくれたので、そこにも注目しましょう!(矢尾拓也/Nanakamba)

◎Disc Information
【参加ミュージシャン】刄田綴色(d)、亀田誠治(b)、浮雲(g、vo)、伊澤一葉(key、p、vo)、椎名林檎(vo、prog)

発売元:ユニバーサル 品番:UPCH-20568 発売日:2021.06.09

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【A】Cactus『Tightrope』

d:カーマイン・アピス

アレンジとセットになった
ドラムのパターンやキメの完成度がとても高い

カクタスは69年に元ヴァニラ・ファッジのベーシストのティム・ボガートとカーマイン・アピスが結成したハード・ロック・バンド。僕は大ファンで、リアル・タイムで愛聴していたものだ。その後、このリズム体はジェフ・ベックと“ベック・ボガート&アピス”を結成し、全世界の注目を集めることとなる。オリジナル・メンバーを含む編成で、今でもアルバムをリリースしてくれるのは本当にうれしいことだ。基本になっているサウンドは当時を思わせるブルース・ロックだが、現代のレコーディング技術がもろに生かされていて、アピスのバス・ドラムやスネアの音色、音量、さらに言うならタイミングまですべて揃っている。そこは気にせず聴くとして、アピスのヘヴィなグルーヴとドラマチックなフィルインはしっかり聴くことができるのでご安心を。バンド自体のプリプロがしっかりしているのだろう、アレンジとセットになったドラムのパターンやキメの完成度がとても高い。したがって野獣度は控えめになっている。(菅沼孝三)

◎Disc Information
【参加ミュージシャン】カーマイン・アピス(d、per、cho)、ジェイムス・カプート/ピート・ブレミー(b)、ポール・ウォーレン(g、p、vo、cho)、ジム・マッカーティー(g)、マイケル・ウィットテイカー/ランディ・プラット(harp)、ジミー・クーン/フィル・ナーロ(vo)、他

輸入盤(iTunesで購入可) 発売日:2021.04.02

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【A】TOTO『ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・フロム・マイ・フレンズ』

d:ロバート‘スパット’シーライト

完コピするだけじゃなくスパットのスタイルも提示している
これまでのTOTOを再現しながらも、より自由度が高まった印象

去年衝撃のニュースがドラム界に入った。Snarky PuppyやGhostNoteでも活躍しているロバート‘スパット’シーライトが、TOTOに加入するという。その日から一体どんなサウンドになるのか聴きたくてうずうずしていました。本作は去年11月に行われた、新生 TOTO のメンバーによるパフォーマンスを収録したもので、準備期間はたった10日間。結論から言うと見事の一言。その期間でクオリティが高く、そして進化しているバンドに持っていけたことがすごい。そしてスパットが入ったことで、ジャム要素が増え、これまでのTOTOのサウンドやビートを再現しながら、より自由度が高まった印象でした。「Hold The Line」の最後サビ辺りのキック・パターンや、「White Sister」のエンディングのスパットの畳み掛けからの約3分間のドラムだけのソロ、“Rosanna Shuffle”を見事に再現したあとの終盤の圧巻のジャム、「With a Little Help From My Friends」のジャムから最終的に教会でゴスペル聴いているかのような場面があったり、ドラマーとして興奮する場面がいっぱい! 何よりすごいと感じたのが、完コピするだけじゃなく、スパットのスタイルをちゃんと提示していること。自分も非常に良い刺激を受け、参考になりました。新メンバーの加入で次世代のファンが増え、TOTOが進化し続けることになると実感でき、ワクワクな気持ちでいっぱいです!(FUYU/RED DIAMOND DOGS)

◎Disc Information
【参加ミュージシャン】ロバート‘スパット’シーライト(d)、ウォーレン・ハム(per、horn)、ジョン・ピアース(b)、スティーヴ・ルカサー(g、vo)、デヴィッド・ペイチ/ドミニク“エグゼヴィア”タプリン/スティーヴ・マッジョーラ(key)、ジョセフ・ウィリアムス(vo)、他

発売元:ソニー 品番:SICX-30118 発売日:2021.06.25

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【A】ブラック・ミディ『カヴァルケイド』

d:モーガン・シンプソン

タイトで繊細で表現力豊かで
魅力的なプレイに胸がドキドキワクワクしました

『カヴァルケイド』を再生し始めると、聴きはじめ10秒で一気にブラック・ミディの独特な世界観と演奏力に惹き込まれました! 独特な世界観がありつつ、だけど生活に溶け込んでくるような、どれも情景が見える曲ばかり。どの曲もテイストが違ってキャラが立っているけど、寝る前に本を読むとき、お掃除したあと、一息つくとき、テンションが上がってるときに特に聴きたくなる曲達。その1つ1つをしっかり絶妙に表現しながら、個性を出しているドラム・プレイは圧巻で、とっても刺激を受け、タイトで繊細で表現力豊かで魅力的なプレイに、胸がドキドキワクワクしました!(ユナ/CHAI)

◎Disc Information
【参加ミュージシャン】モーガン・シンプソン(d)、キャメロン・ピクトン(b、vo)、ジョーディ・グリープ(g、vo)、セス・エヴァンス(key、p)、カイディ・アキンニビ(sax)、他

発売元:ビートインク 品番:RT0212CDJP 発売日:2021.05.28

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【A】はたけやま裕『You’s Literary Notes 宙〜sola〜』

per:はたけやま裕
d:河村“カースケ”智康

はたけやま氏のメロディアスで曇りないプレイ
カースケ氏の音色&グルーヴもベスト・マッチ!

女性パーカッショニスト、はたけやま裕のソロ・アルバムは、宮沢賢治、サン=テグジュペリ、芥川龍之介の文学を主テーマにした作品。各物語を読みつつ拝聴しましたが、物語を選ぶセンス、音で情景描写する感性に感服。付属ブックレットの蒲原 元氏の絵画も美しく、目と耳と文字の3方位から訴えてくる内容で、心に染み入る物語の切なく尊い世界観に強く揺さぶられました。イメージを最大限に広げてくれるサウンドは、空間的で透明感がありながら、奥深くから湧き上がる力強さを併せ持ち、豪華な共演者が物語に心を合わせ1つになっている感覚に崇高さも覚えます。はたけやま氏のメロディアスで曇りないプレイ。2曲参加のカースケ氏の音色&グルーヴもベスト・マッチ!(長野祐亮)

◎Disc Information
【参加ミュージシャン】はたけやま裕(per)、河村“カースケ”智康(d)、木村将人/箭島裕治(b)、ファルコン(g)、伊藤ハルトシ(g、cello)、扇谷研人(p)、Keiko(p、melodica)、佐藤友紀(tp)、伊勢賢治(sax)、中西俊博/maiko(vln)、チェンミン(二胡)、佐藤竹善/Ema(vo)、井手麻理子(vo、cho)、他

発売元:dayBreakBeat 品番:YHGM-7442 発売日:2021.05.19

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【A】the GazettE『MASS』

d:戒

“全身で聴く”という表現がしっくりくるようなグルーヴ感
手数で埋めるだけではない呼吸感のあるドラミングが心地良い

情感豊かなメロディの楽曲を独自のヘヴィ・サウンドに乗せて届けるV-ROCKバンド、the GazettEの3年ぶり10枚目となる新作。バラエティ豊かなラインナップはライヴを想定して選ばれたということで、耳というよりも“全身で聴く”という表現の方がしっくりくるようなグルーヴ感に、20年に迫るキャリアで重ねられたバンドの着実な進化が現れている。ドラムの戒は、ツーバスやタムを駆使したハードな演奏もスマートにこなしつつ、重みのある一発で楽曲に寄り添い、効果的に“間”を生かすシンプルなアプローチも織り交ぜている。その手数足数で埋めるだけではない呼吸感のあるドラミングが心地良く、メンバーとの音数のバランスにおいても絶妙に足し引きが練られていることが伝わってくる貫禄の1枚。(高橋里沙/リズム&ドラム・マガジン編集部)

◎Disc Information
【参加ミュージシャン】戒(d)、REITA(b)、麗/葵(g)、RUKI(vo)

発売元:ソニー 品番:SRCL-11778 発売日:2021.05.26

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【A】KOGREY DONUTS『NIKKI』

d:木暮栄一

ドラマーとして培ったグルーヴとリズム・センス
そしてDJのトラック・メイク的手法が生きた全8曲

the band apartのリーダーであり、近年は楽曲提供やDJにも活動の幅を広げている木暮栄一。彼のソロ・プロジェクト第1作目は、ドラマーとして培ってきたグルーヴとリズム・センス、そしてDJのトラック・メイク的手法が生きた全8曲を味わえる。全編に渡りウォームな空気感が漂っており、M1「幽楽町ライン」では冷たい印象のブレイクビーツがベースとなっているにも関わらず、聴き終わる頃にはゆっくりと“ほぐれている”。ワールドなエッセンスが散りばめられたM3「Madder 」では、オープンなサウンドとお茶目な印象のドラミングが楽しい。閉塞感のある日々の中、今作のチルなナンバーはどこかリゾート地に我々を誘ってくれるかのよう。(佐野敦基)

◎Disc Information
【参加ミュージシャン】木暮栄一(d)、村田シゲ(b)、フルカワユタカ/荒井岳史(g)、Channy(vo)

発売元:HKWDI Soundz 品番:HKWDI-001 発売日:2021.05.19

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【A】ハロウィン『ハロウィン』

d:ダニ・ルブレ

ドラム・サウンドはパワフルで圧巻の生々しさ
まるで目の前で叩いているかのような大迫力

初期のメンバーが復帰し、7人編成で行ったワールド・ツアーが大盛況だったことを受けて、その編成でオリジナル・アルバムも制作。荘厳なイントロに導かれ、ツーバスが疾走&シンガロング必至のキャッチーなメロディが舞う「アウト・フォー・ザ・グローリー」から、めくるめく展開を見せ「ハロウィン」、「守護神伝」を彷彿させる12分の大曲「スカイフォール」まで、力強い楽曲が並ぶ。期待を裏切らないハロウィン節が満載で、快哉を叫びたくなる。ダニが初代ドラマー、インゴ・シュヴィヒテンバーグのキットを使い、アナログ録音したことが話題を呼んだが、そのドラム・サウンドはパワフルで圧巻の生々しさ。まるで目の前で叩いているかのような大迫力。(竹内伸一)

◎Disc Information
【参加ミュージシャン】ダニ・ルブレ(d)、マーカス・グロスコフ(b)、サシャ・ゲルストナー/マイケル・ヴァイカート(g)、カイ・ハンセン(g、vo)、マイケル・キスク/アンディ・デリス(vo)

発売元:ビクター 品番:VICP-65555 発売日:2021.06.16

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【E】AJICO「接続」

d:椎野恭一

骨太ながら爆音ではない“大人の音圧”と
自然体の中から発せられていく独特のウネり

2000年から2001年まで実質1年足らずの活動期間の中、その世界を体験した人々に鮮烈な記憶を残して活休となったAJICO。それが20年後の今、当時のメンバー集結による完全体で再始動。フロント2人の魅力は言わずもがな、個人的には椎野恭一とTOKIEのコンビから放たれる色気とオーラに惹かれまくり。骨太ながら爆音ではない“大人の音圧”と、自然体の中から発せられていく独特のウネり。特にタイトル曲である「接続」のコンビネーションは絶妙で、どこか複雑に感じさせつつも最高の歌伴となっている。こんな時期なので思い通りの活動は難しいかもしれないが、この4人でしか出せない音で音楽界に熱い刺激を与えてもらいたい。(山本雄一/RCCドラムスクール)

◎Disc Information
【参加ミュージシャン】椎野恭一(d)、TOKIE(b)、浅井健一(g、vo、d)、UA(vo)、鈴木正人(key、p、org、prog)、美央/伊能 修(vln)、笠原あやの(cello)、菊地幹代(viola)、他

発売元:ビクター 品番:VICL-65462 発売日:2021.05.26

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【A】トゥエンティ・ワン・パイロッツ『スケイルド・アンド・アイシー』

d:ジョシュ・ダン

トラヴィス・バーカーを彷彿とさせる
ジョシュ・ダンのドラムはぜひライヴで見たい

twenty one pilotsと言えば、EDMリスナーが聴くパンク・スタイルのバンド音楽というイメージだったが、この新譜レビューの依頼を受けたのであらためて聴くと、このバンドの音楽性の深さに驚いた。作品ごとにジャンルの枠を多く扱うオルタナティヴなところ、またヴィンテージ・サイケへの造詣が深い感じがしたのが良かった。今作はコロナ禍が影響した環境で作られたものらしく、確かに他の作品に比べて、サウンド・スケープが狭く近くなって、オーガニックな音遣いが特徴だ。トラヴィス・バーカーを彷彿とさせるジョシュ・ダンのドラムは、ぜひライヴで見たいので、世界が癒えるまでの間はこのアルバムでしばしのドリーミーな現実逃避を楽しみたい。(大井一彌/DATS、yahyel、Ortance、etc.)

◎Disc Information
【参加ミュージシャン】ジョシュ・ダン(d)、タイラー・ジョセフ(p、vo)

発売元:ワーナー 品番:WPCR-18423 発売日:2021.05.21

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