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    ドラム×肉体〜叩き続ける“カラダ作り”〜(2018年11月号掲載) 2. “2大痛”である腰痛と腱鞘炎にならないための12の方法

    • Text:Koichi Yamakita Model:Daichi Izumi(DISH//)
    • Photo:Yoshika Horita Special Thanks:Bonney Drum Japan

    2. “2大痛”である腰痛と腱鞘炎にならないための12の方法(1〜6)

    なぜドラマーは、腱鞘炎と腰痛とを患ってしまうのか

    ドラマーに腰痛と腱鞘炎が多い理由はさまざまなことが考えられますが、最も大きな理由は“緊張した状態で無理に動かし続けてしまうから”ということになるでしょう。身体の緊張の背景には心理的な焦りやストレスなどの存在も考えられます。ここでは、ケガを防ぐための12ヵ条をまとめてみたいと思います。

    1. 握り込まない

    スティックを握り込むと身体は動きにくくなり、その結果、腱鞘炎を引き起こす可能性があります。そのため特別にそういう音が欲しいとき以外は、スティックを緩く持つように心がけましょう。握り込まないためのコツは、スティックの“振動”を皮膚で感じ続けること。ストロークの一振り一振りを、スティックの感覚が指から途切れないように常に意識しながら練習してみることをオススメします。スティックを握り込みすぎて圧迫してしまうと振動は止まりますし、逆にスティックを放しすぎると振動が伝わってきません。

    ちなみにスティックの振動は、シンバルなど硬いものを叩くときほど大きくなります。スティックの振動をできるだけ感じやすくするため、硬い練習台を使って確認するのもいいですね。

    2. 踏み込まない

    バス・ドラムは垂直に踏み込むと腰に負担がかかりやすくなり、それが腰痛の原因になります。そのためペダルの傾斜を利用して、斜め45度くらいの角度で踏み込むと良いでしょう。1の項目で振動について解説しましたが、スティックと同様、ペダルにも“ 振動” があります。これは意外と意識されることが少ないのですが、無理な踏み込みを避け、脱力して鳴らすための重要な手がかりになるでしょう。

    バス・ドラムのタッチを意識することも有効です。バリエーションは大きく分けて2つ。ロック系のクローズド奏法の場合では、ヘッドの振動をビーターで感じるようにしましょう。そうすれば適度にミュートがかかり、倍音豊かなアタックが出せます。もう1つはジャズ系のオープン奏法の場合で、こちらはフット・ボード全体の振動を低音と一緒に感じてください。そうすることでオープンな鳴りが得られます。いずれもペダルを繊細に感じることで、身体への負担を減らすことができます。ハイハットは、スティックで叩いたハイハットの動きを足で感じるようにすると、全身の力みを抜くために非常に有効です。

    3. 大きい筋肉を使って叩く

    腰痛や腱鞘炎は、小さい筋肉を無理に使い続けることで疲労が溜まることが原因で発生します。そのため大きい筋肉を使って叩くことが重要となります。

    腰痛を予防するには、自分の体重に負けないこと。イスに座った状態で腰がつぶれたまま長時間演奏を続けると、当然腰は痛くなってきます。腰がつぶれないように、おなかの中の大きな筋肉(腸腰筋)を十分に伸ばしましょう。背中(特に腰椎)のスキマが広がった状態をイメージすると良いでしょう。

    腱鞘炎を予防するには、手首の動きに頼りすぎないこと。手首の前に肘、肘の前に肩、肩の前に肩甲骨や肋骨……というように、より大きな部位を使って叩くことで、肘や手首まわりの筋肉が柔かいままで演奏することができます。手首を動かすときも、指の連動を意識することで、手首の負担を減らすことができますね。

    4. 姿勢を固めない

    ドラムは体重が移動し続ける楽器なので、ペダルを踏んだりスティックを振ったりした“反動”が必ず身体に戻ってきます。この反動を吸収するには、姿勢を柔軟に保つことが重要です。背筋を伸ばして真っ直ぐに座る姿勢は、リズムに合わせた体重移動がないときには最も機能的です。しかしドラムは常に体重移動があるので、見た目には猫背だったり、少し崩れた姿勢が最も機能的であることがほとんどです。バディ・リッチ、スティーヴ・ガッド、ジェフ・ポーカロなど、一流ドラマーの姿勢を見ても、猫背は多く見られますね。

    体重移動と、楽器からの反動。この2つを適切に処理できれば、ドラムが原因で腰痛や腱鞘炎になる可能性はほとんどなくなることでしょう。

    5. 力を抜くほど大きな音が出ると“ 認める”

    無理な力を込めて叩くことは、腰痛や腱鞘炎に限らず、あらゆるケガにつながります。そして力を込めてしまうクセがある人は、根底に“ 力を込めるほど大きな音が出るはずだ”という考え方を持っていることが多いように思います。これは染みついた価値観と言ってもよく、無意識レベルで身体の状態に影響を与えます。

    そのため無駄な力を込めず、脱力した叩き方がケガの予防には有効なのですが、この奏法を身につけるには、“価値感の転換”が必要な面があります。一度、力を抜いて叩いてみることを試してみましょう。

    脱力奏法には頑張れば頑張るほど空回りしてしまい、頑張らない方が結果が出るという部分が少なからずあります。もしあなたがケガや痛みでお悩みなら、新しい価値観を採用してみると可能性が広がるかもしれません。

    6. 良いお手本に触れる

    リラックスした状態がケガの予防につながることはこれまでも説明してきましたが、こういった奏法を身につけるには、お手本に”生”で触れるのが一番の早道です。書籍や映像教材も良いですが、やはり生の“空気”も含んだ情報量にはかないませんね。そういった情報を得るため、プロ/アマ関係なく、自分がお手本としたい人を見つけてライヴなどを見にいきましょう。大きなホールも良いですが、ライヴ・ハウスなどプロの演奏をできるだけ間近に見られる場所をオススメします。ドラム・クリニックなど、特に間近で生音が聴ける機会だとなお良いですね。

    私の場合は16歳のときにブルーノート大阪で故・トニー・ウィリアムスを見る機会に恵まれ、強烈な音の印象と共に「こうすれば、こういう音が出るんだ」という“1つの基準”が作られました。この基準は、その後のドラマー人生に大きな影を与えています。

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