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【連載】博士 山本拓矢がデジマートで見つけた今月の逸品 ♯4

  • Photo & Text:Takuya Yamamoto
  • illustration:Yu Shiozaki

第4回クラッシュ・ライド

ドラム博士=山本拓矢が、定番商品や埋もれた名器/名品など、今あらためて注目すべき楽器たちを、楽器ECサイトであるデジマート(https://www.digimart.net/)で見つけ、独断と偏見を交えて紹介する連載コラム。いよいよ今回はシンバルにフォーカスします。みなさんもマイ・シンバル始めてみませんか?

いつもご覧いただき、ありがとうございます! スネア小口径ドラム・セットビーターと紹介してきましたので、今回はシンバルを取り上げます。

みなさん、シンバル買ってますか?

私は、最低限の楽器は揃っているので、最新の楽器を少しずつ買い足しつつ、手持ちの楽器との組み合わせのバリエーションを掘り下げながら、足りないピースを埋めるように……揃っていると言いつつ、買い足したり買い替えたりを続けていますね。各メーカー、いろいろな見解があるようですが、一演奏者としての印象では、シンバルにはそれなりに大きな個体差があります。この個体差が、品番のついたシンバルという楽器を紹介する困難さの1つでもありますが、ここ最近は、試奏しないで買った楽器も、複数の同一モデルから選び抜いて買った楽器も、そのベクトルと組み合わせさえ間違っていなければ、音楽の前では大きな差はないと感じることが増えています。

シンバルは、金属を直接振動させて演奏する楽器であり、疲労も腐食もするので、使っているうちに徐々に変化します。また、単品では美しい音色と感じられても、バンドのサウンドの中では埋もれてしまったり、気になる濁りやピークが、音楽の中では余計な心配でしかなかったりもします。どんなに試したところで、結局は使ってみないとわからないのです。

そんなわけで、現物がなくとも、好きな楽器は紹介できる!というお膳立てが済んだので、今月の逸品を紹介します。

今月の逸品 【Zildjian 19″ K Constantinople Crash Ride

今月の逸品はZildjian 19″ K Constantinople Crash Rideです。

このシンバルは発売以来長期に渡って愛用しており、最も多いときで3枚ほど所有していました。もともとシンバルは、クラッシュもライドも明確に作り分けられていたわけではなく、作り分けが進んだ現代でも、クラッシュとして使用できるライドも、ライドとして使用できるクラッシュも存在しています。

では、クラッシュ・ライドとは何者なのか。

少なくともこのクラッシュ・ライドは、ある程度の幅の中で製造される状況において、完成品が正しく双方の機能を持つように、入念に設計されています。大きめのベルは、パワーと倍音の根源で、18インチまでのクラッシュと20インチ以上のライドというラインナップの中で、19インチで成立させるために導き出されたサイズでしょう。ややフラットな形状と薄めのエッジにより、素直で伸びやかなクラッシュ・サウンドを担保しつつ、ボウに若干の厚みを持たせて音像を引き締めることで、ライドとして機能するように仕上げられています。独特な量とパターンで施されたオーバー・ハンマリングは、ボディとウォッシュをコントロールしていると思われます。さまざまなテクノロジーを用いて作られたこの楽器は、シンバル史のマイルストーンといっても過言ではありません。

余談ですが、日本では、リハーサル・スタジオにもライヴ・ハウスにも、ドラム・セットとシンバルが常設されているのがほぼ当たり前で、極論を言えばスティックさえ持っていけば練習や演奏が可能な、恵まれた環境にあります。しかし、ドラム・セットは、その成立の背景から、音楽や演奏者によって最適な組み合わせが異なります。私自身は、本音を言えば、どんな現場でも自分のドラム・セットを演奏したいと思っています。とはいえ、実際のところ、運搬と搬入にはそれなりのハードルがあり、困難が伴うケースもあるため、現実的な選択をするしかないことも少なくありません。

活動の規模や段階、ジャンルにもよると思いますが、一昔前のライヴ・ハウスでは、スネアやペダルを持ち込むことが一般的で、精々レンタルできないエフェクト・シンバルを持っていく程度、という活動の仕方をしているドラマーが多かった印象ですが、ここ最近はシンバルも持ち込むという人が増えているように感じます。「タイコはチューニングできても、シンバルはチューニングできない」という話も、ある意味ではその通りです。シンバルはその重さが難点ではありつつ、スネアやペダルに比べると厚みがほとんどないので、電車で移動するような場合でも、大して嵩張らずに持ち歩けます。今回取り上げたクラッシュ・ライドは、少ない枚数で運用する場合も、たくさん並べる状況でも、それぞれで優れた働きをしてくれます。


マイ・シンバル、始めてみてはいかがでしょうか?

Profile
ヤマモトタクヤ●1987年生まれ。12歳でドラムに出会い、高校時代よりプレイヤーとして音楽活動を開始。卒業と同時に入学したヤマハ音楽院にて、さまざまなジャンルに触れ、演奏活動の中心をジャズとクラブ・ミュージックに据え、2013年、bohemianvoodooに加入。 音楽と楽器の知識・スキルを生かして、ドラム・チューナーとしてレコーディングをサポートしたり、インタビュー記事や論説などの執筆業を行うなど、音楽全般への貢献を使命として活動中。

Twitter:https://twitter.com/takuya_yamamoto

【Back Number】

第一回:COBスネア・ドラム
第二回:16インチ・バス・ドラム・キット
第三回:Dragonfly Percussion Kick Drum Beater