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ペドリート・マルティネス × SiNGO|キューバのルーツから、世界へ……クラーベ、学び、そして「音楽とは与えること」を語る
日本と世界のラテン音楽、ダンス、フード、カルチャーが集結する「JAPAN LATIN MUSIC FESTIVAL “timba” 2026(feslatimba)」が、10月10日に東京・渋谷ストリームで開催される。今回、その出演を控える世界的パーカッショニストのペドリート・マルティネスと、同フェスティバルのエグゼクティヴ・プロデューサー、SiNGOによる対談が実現。キューバ音楽の根に息づくフォルクローレ、クラーベという“感覚”、世界中の音楽から学ぶことの大切さ、そして「音楽とは与えること」という自身の音楽観まで、ペドリートが率直に語った。
キューバのパーカッションは
何が違うのか
SiNGO: まず、フェスティバルへの出演を受けてくださって、本当にありがとうございます。音楽について聞きたいことはたくさんあるんですが、最初に基本的なことから聞かせてください。キューバのパーカッションと、他のラテン・アメリカの国々のパーカッションには、どんな違いがあると思いますか?
ペドリート: 僕が思うに、大きな違いは、アフリカン・ディアスポラによってキューバにもたらされた、さまざまな民族文化の影響にあります。キューバにはバントゥー系、コンゴ、カラバルなど、多くの文化的な要素が入ってきました。
そして重要なのは、キューバではアフリカから受け継いだフォルクローレが、今でも生きたものとして残っていることです。ソン・モントゥーノ、チャチャチャ、マンボといった伝統的な音楽から現代のキューバ音楽まで、ルンバやヨルバの歌、コンゴ系の歌など、多くのフォルクローレの影響があります。
僕は、そこがキューバ音楽の大きな特徴だと思っています。どんなポピュラー音楽を演奏するときにも、キューバ音楽には常にそのルーツとフォルクローレが生きているんです。もちろん、ほかの国の音楽を軽視しているわけではありません。ペルーやコロンビアにも素晴らしいフォルクローレがあります。ただ、キューバはリズム、歌、踊りといった伝統を、非常に強く生かし続けてきた国だと思います。
キューバでは、フォルクローレが博物館に保存された過去の文化ではなく、日常の中で演奏され、歌われ、踊られています。だからポピュラー音楽を演奏するときにも、演奏家の身体の中にその情報が残っている。リズムを単なるパターンとして覚えるのではなく、その背景にある歌や踊り、宗教的・社会的な文脈と一緒に受け継いでいることが、音の強さにつながっているのだと思います。

クラーベとは何なのか
SiNGO: 僕自身はキューバ音楽が大好きで、ティンバ、サルサ、そしてフォルクローレもずっと聴いてきました。ルンバやアバクア、サンテリアなどを聴いていると、複数のパーカッションが会話しているように感じます。そういう音楽の中に「クラーベ」という考え方があると思うんです。
ペドリート: クラーベというものを言葉で説明するのは、少し複雑です。僕が1998年にアメリカへ来て、プライベートレッスンや大学で教えていたころ、生徒達からよく「2-3のクラーベとは何ですか?」、「3-2とは何ですか?」と聞かれました。僕がキューバで知っていたのは、ルンバ・クラーベやソン・クラーベでした。
マリオ・バウサのような偉大な音楽家達は、それを「2-3」「3-2」という形で整理し、ラテン音楽を知らない人にもわかりやすく伝えるシステムを作りました。それは非常に役立ったし、今でも使われています。でも僕にとって、クラーベは“感覚”なんです。
大切なのは、拍を理解すること。アレンジの流れを理解すること。譜面の構造を理解して、どこでダイナミクスを使うべきなのかを知ることです。僕たちは時々、クラーベのことを気にしすぎて、クラーベの奴隷になってしまうことがあるんです。
もちろん、ルンバなどのフォルクローレではクラーベはとても重要です。でも、キューバのポピュラー音楽すべてで、クラーベを実際に鳴らしているわけではありません。鳴っていなくても、そこにはクラーベが存在しています。
クラーベを2小節の決まった音型として数えるだけでは、その本質を十分には理解できません。ベース、ピアノ、ホーン、歌のフレーズ、そしてアレンジの展開が、どのように同じ時間の流れを共有しているかを感じる必要があります。クラーベは1つの楽器が提示する規則というより、アンサンブル全体を内側から結びつける方向感覚に近いんです。

僕の背骨はキューバ
ペドリート: 僕自身、アメリカに来たとき、タワーレコードへ行って世界中の音楽を買いました。アフリカの音楽も聴きました。トルコや旧ソ連圏の音楽から、不規則な拍子やフレーズ、さまざまなアイデアを学んで、それを自分なりの方法で演奏に取り入れてきました。
だから、ペドリート・マルティネスは、キューバ音楽だけを演奏しているわけではありません。僕の考え方、ソロの取り方、パーカッショニストとしてのあり方。その背骨、根幹にあるのはキューバです。でも、それ以外の部分には世界中から得た情報が入っています。
根があるからこそ、外から入ってくる情報を恐れずに受け入れられます。すべてをそのままコピーするのではなく、自分がどこから来たのかを理解したうえで、自分の感性を通して変換する。そうすれば、異なる文化から学んだことも、自分の音として自然に語れるようになります。
SNSで学ぶだけでは足りない
ペドリート: SNSのおかげで、世界中の情報にアクセスできるようになりました。それは素晴らしいことです。でも、失ってはいけないものがあります。実際に先生と一緒にいること。人と人との関係。コンサートに行って、その場にいる人たちが音楽にどう反応しているのかを見ることです。
人が喜ぶ。泣く。踊る。そういうことを実際に体験する必要があります。コンピューターで学ぶことも役に立つでしょう。でも僕なら、それは30%。残りの70%は、自分で体験しなければならない。Hay que vivirlo――実際に生きなければならないんです。
画面からは、正しい音型や手順を学ぶことができます。でも、先生のすぐそばで音圧を感じること、演奏中の呼吸や視線を知ること、間違えた瞬間にどう立て直すかを見ることまでは、完全には伝わりません。音楽は情報であると同時に、人と人の間で起こる出来事です。その場に身を置く経験が、知識を本当の理解に変えてくれます。

音楽とは与えること
SiNGO: 素晴らしいミュージシャンには、演奏力だけではなく、心も大切ですよね。
ペドリート: そうです。それが一番重要だと思います。僕にとって音楽とは、感情であり、全身を捧げることであり、分かち合うことです。音楽とは、与えることです。
僕達はコンサートに、ただ演奏するために行くのではありません。人の人生を変えるために行くんです。人を泣かせる。笑わせる。夢を見させる。愛する気持ちを呼び起こす。音楽は、数え切れないほどの感情を人間の中に生み出します。
そのためには演奏する側も、開かれていて、繊細でなければいけない。その場にいる一人ひとりが安心して、自由に自分の感情を表現できる空間を作ることが必要です。踊らない人でも、音楽を聴いて泣くことがあります。音楽を聴きながら、別の世界へ旅をしているような人もいる。音楽というものは、とても不思議です。
科学でさえ、音楽が人間の中に呼び起こすすべてを、まだ完全には説明できていないと思います。僕自身、作曲していても、ある日はメロディーも歌詞も一気に全部出てくる。でも別の日には、少し書いたところから何も出てこなくなる。音楽はとても神秘的で、謎めいている。でも、それこそが音楽の最も美しいところなんです。
技術は、その感情を相手へ届けるための手段です。どれほど高度なことを演奏しても、聴く人と何も分かち合えなければ十分ではありません。演奏家が自分を開き、誠実に与えようとしたとき、会場全体に特別な空間が生まれる。そこで初めて、音楽は演奏する人と聴く人の両方を変える力を持つのだと思います。
開催概要
JAPAN LATIN MUSIC FESTIVAL “timba” 2026
開催日:2026年10月10日(土)
会場:東京・渋谷ストリーム(1F 稲荷橋広場/4F/5F/6F)
開催時間:11:00〜21:00予定
主催:CABIOSILE、株式会社 斉藤布帛
協賛:ヤマハ、リットーミュージック、リズム&ドラム・マガジン、モリダイラ楽器、LP(Latin Percussion)
協力:JICA
後援:渋谷区(1F,4F無料エリア)、渋谷区観光協会
助成:アーツカウンシル東京【芸術文化魅力創出助成】、公益財団法人日本フィランソロピック財団
◉出演アーティスト
ORQUESTAS & MUSICIANS
BOMBA-gon
JAZZ BATA
赤木りえ
斎藤タカヤ
LATINOESTE
El Barrio All Stars
SiNGO
ペドリート・マルティネス
*ぺドリートは10月12〜14日にブルーノート東京に出演
https://www.bluenote.co.jp/jp/artists/alfredo-rodriguez/
DANCERS
Misaki
BALODIA RODRIGUEZ BOZA
DJ
Andrés Cali
RISING STARS
¡Ahinama! BIG BAND
◉チケット
一般チケット:前売 9,800円/当日 11,000円
U25チケット:前売 4,300円/当日 5,000円(25歳以下対象)
ペアチケット:18,400円/2名(1名あたり9,200円)
グループチケット:36,000円/4名(1名あたり9,000円)
※料金はすべて税込
チケット販売先:LIVEPOCKET
https://livepocket.jp/e/feslatimba2026
↓イベントの詳細はこちら↓
https://timba-festival.com/
◉最新情報や出演アーティストの動画は、公式Instagram/YouTubeでも随時公開中。
▼公式Instagram
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