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    【追悼】ジェームス・ギャドソン|沼澤 尚が選ぶ必聴20枚(代表参加作品)

    • Select & Text:Takashi Numazawa

    4月2日にこの世を去った”King of Groove”の異名を持つ名ドラマー、ジェームス・ギャドソン。数えきれないほどの名盤に刻まれたそのビートは、これからも多くのミュージシャンに影響を与え続けるだろう。本稿では膨大な作品群の中から、2009年5月号で彼の愛弟子である沼澤 尚が厳選した必聴20枚を紹介。時代やジャンルを超えてトップ・アーティストから求められた、そのグルーヴの軌跡を辿る。

    1.『In The Jungle, Babe』
    The Watts 103rd Street Rhythm Band(1969年) 

    R&B好き、グルーヴ好きの最近のDJ達が“今”盛んにかけてしまう傑作「LOVE LAND」……このオリジナル・レコーディングも、もちろんギャドソン本人のリード・ヴォーカルだが、ライヴでこの曲を演奏しながら熱唱するギャドソンはいつ見てもただただ驚異的。RHINOから出たこのバンドのレア音源集も必聴。

    2.『Still Bill』
    Bill Withers(1972年)

     アル・マッケイが抜けた後のTHE WATTS 103rd STREET RHYTHM BANDが参加して、この1972年以降、今もなおその時代、時代の最先端のサウンド&グルーヴとしてリスペクトされ続けている永遠のこれまた歴史的傑作。その年の年間ナンバー1に輝いた「Lean On Me」をはじめ、すべての楽曲がマジックそのもの。

    3.『Live At Carnegie Hall』
    Bill Withers(1973年) 

    アルバム『Still Bill』のサウンドがそのまま再現されつつも、さらに温度が一気に高くなる壮絶ライヴ・アルバム。あのNYのカーネギー・ホールが最後には熱狂のゴスペル・パーティーに様変わりしていく様子がここまではっきり音だけでわかるのだから……もしその場にいたら確実に失神してるに違いない。

    4.『Get It Together』
    The Jackson 5(1973年) 

    小学校時代に兄の部屋から流れてきたラジオ番組“全米TOP40”で彼らを耳にして、自分が生まれて初めて買ったレコードも初めて行ったコンサートもジャクソン5。73年……時代の流れと共に突如として彼らのサウンドがファンク化したこの名盤でギャドソンの登場が必要だったのも妙に納得。

    5.『Forever, Michael』
    Michael Jackson(1975年) 

    クレジットされずにギャドソンが参加していた70年代中期の数々のモータウン・セッションの中であまりにも有名なこの1曲目……「WE’RE ALMOST THERE」の1音目からいきなりこの説得力はありえない。ずっと好きで聴いてきたアルバム達が実はギャドソンのドラムだった、って本当に多すぎる。

    6.『I Want You』
    Marvin Gaye(1976年) 

    ギャドソンとバンドのとんでもない名演も含めてこの歴史的傑作自体が僕にとってバイブル中のバイブル。オープニングからラストまで延々と続いていくグルーヴとサウンドすべてが奇跡。2曲目で聴けるクラッシュ・シンバルでライドするスタイルを本人から習った瞬間がもちろん自分も……。

    7.『Musical Massage』
    Leon Ware(1976年)

     このアルバムの制作途中でマーヴィン・ゲイが自分のアルバムとして歌わせてほしいと懇願し、その条件としてレオン・ウェアの完全プロデュースなら、と出来上がったのが歴史に燦然と輝く傑作『I WANT YOU』……話の真偽は後にリリースされたこの素晴らしい“原盤”を聴けば一瞬にして明らか。

    8.『On Love』
    David T. Walker(1976年)

     何よりも好きだったジャクソン5からモータウンへズッポリはまっていた中学生時代。知らずに聴いていたのが全部この人だと知り、さらに彼の素晴らしいソロ・アルバム達に出会ったときの衝撃は忘れられない。この天才ギタリストの最高傑作をしっかり支えていたのはやっぱりギャドソンだった。

    9.『Rejoice』
    The Emotions(1977年)

     アース・ウィンド&ファイアー・ファミリーの自分がカリンバ・プロダクションも含めてすべて網羅していたのは当然の流れだったが、楽曲、パフォーマンス、サウンド・クオリティと、今聴いてもあまりに完璧すぎるこのアルバムでのギャドソン+デヴィッド・シールズのコンビネーションは奇跡的。

    10.『Stay In Love』
    Minnie Riperton(1977年)

     5オクターブを持つ天使の歌声……「LOVING YOU」の大ヒットの後、乳がんに侵され最も勇気ある女性として表彰されながらも31年の短い生涯を終えたミニー・リパートン。売上が今ひとつだったけど内容は素晴らしい4枚目のアルバムはFREDDIE PERREN プロデュースでギャドソンの多彩っぷりがしっかり堪能できる。

    11.『Cheryl Lynn』
    Cheryl Lynn(1978年) 

    TV番組「THE GONG SHOW」から誕生した最初の大スター、シェリル・リン babysのデビュー・アルバムは、TOTOのデヴィッド・ペイチのプロデュースでいきなり世界的ヒット。まず知らない人はいないであろう「GOT TO BE REAL」の超絶グルーヴはまさにギャドソン+デヴィッド・シールズ、さらにレイ・パーカーJr.!

    12.『Future Bound』
    Tavares(1978年) 

    映画『サタデイ・ナイト・フィーバー』で一躍世界的な認知度を得た兄弟コーラス・グループTAVARES。プロデューサーFREDDIE PERRENと言えばギャドソン。70年代ディスコ大全盛期はこの低めで攻めまくりつつ“踊らせる”サウンド&グルーヴで、まさにギャドソンがフロアを征服していた最高の時代。

    13.『Strangers』
    Johnny Bristol(1978年) 

    「REUNITED」と同様、この1曲のためだけでもアルバムを持っていないと、と言える名曲「STRANGERS IN THE DARK CORNERS」がオープニングを飾る。さまざまなモータウン・アーティストのプロデュース&楽曲提供していたジョニー・ブリストルの傑作。ギャドソンの十八番……緩くならないバラード。

    14.『Get Up』
    Vernon Burch(1979年) 

    当時六本木のディスコでこのタイトル曲がかからなかった夜はなかったかも。ハード・コア・ファンク・シーンで大活躍していたバーケイズから独立してギャドソン・プロデュースの元リリースしたヴァーノン・バーチの傑作。炸裂するこのグルーヴがフロアを揺らしていたのを鮮明に覚えている。

    15.『Happy People』
    Paulinho Da Costa(1979年) 

    その昔は同郷のセルジオ・メンデスと、そしてディジー・ガレスピーなどジャズ的なフィールドで活躍しつつ、ありとあらゆるヒット作品に名を連ねるようになったパーカッショニスト、パウリーニョ・ダ・コスタの隠れた名盤。1曲目で、なぜここでギャドソンだったのか……わかりすぎる。

    16.『Raw Silk』
    Randy Crawford(1979年) 

    クルセイダーズの「STREET LIFE」で一躍有名になったランディ・クロフォードの3枚目はレオン・ペンダーヴィスのプロデュースでさらに大人のテイストに。サウンド&グルーヴの神様ギャドソンならではの……こんなに繊細なのに決して“緩くならない”、ミディアム・スロー・グルーヴの数々がヤバい。

    17.『You And Me』
    Rockie Robbins(1980年) 

    これは珍しいギャドソンとラリー・グラハムのコンビネーション。プレイはもちろんだが録音されているサウンドがとにかくメチャカッコいい。というかこのアルバムは本当に大好きでよく聴いていたし、すべての楽曲とダニー・ハサウェイ直系のロッキー・ロビンスの歌声が最高。

    18.『The Poet Vol.1』
    Bobby Womack(1981年) 

    僕がギャドソンと知り合えるきっかけになったのもこのラスト・ソウルマンの初来日コンサートに参加できたおかげ。彼のキャリアの中でも傑作中の傑作と言えるこのアルバムでのギャドソンのキレっぷりはすさまじい。こんなの到底無理なのによくやらせてもらってたなぁ……それも22年前に。

    19.『So Sharp!』
    Dyke & The Blazers(1983年) 

    アース・ウィンド&ファイアーにメンバーとして加入する以前のアル・マッケイが在籍していた頃のTHE WATTS 103rd STREET RHYTHM BANDのメンバーがそのままバック・バンドだったDYKE & THE BLAZERS!玄人好みの驚愕とファンク・グルーヴの応酬にただただ驚く以外にない。

    20.『Make Do With What You Got』
    Solomon Burke(2005年) 

    ここ最近ポール・マッカートニーにBECKにと“わかっている”人達から声がかかるギャドソン。その筆頭がWAS NOT WASの最新作にも彼を起用したストーンズ、ボニー・レイットなどのプロデュースで有名な鬼才ドン・ウォズ。重鎮の中の重鎮ソロモン・バークの“今”を演出する極上のグルーヴ……。

    *本記事は2009年5月号の記事を転載した内容となります

    ジェームス・ギャドソンの記事を
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    ジェームス・ギャドソンが残した言葉……バックナンバー読み放題では彼のインタビューも多数掲載されている。ここに抜粋した短い3つの記事だけでも見所が詰まっている。

    1994年4月号

    演奏することのプレジャーは
    精神的な体験なんだよ

    ●バンド・オブ・プレジャーのメンバーは昔からさまざまな機会に共演してきた人たちだと思いますが、この組み合わせでバンドをやろうとしたのはいつ頃、どうしてですか?
    ギャドソン
    :一緒にやってみて素晴らしい化学反応が起き、いいフィーリングが得られた体。もっとやりたいという気になったんだ。初めてみんながスタジオに集まったのは、「Mama, I Want To Sing」のときだが、あのプロジェクトのベーシストはボビー・ワトソンだった。だが、彼はプロデュース業で忙しく、バンドはコウ・シミズ(清水 興)が入ったんだ。

    【Note】アメリカと日本の凄腕ミュージシャン達で結成されたスーパー・バンド、バンド・オブ・プレジャーについて語る1994年4月号のインタビュー。バンド、作品についてはもちろん、歌うことがドラミングに与える影響についても語るなど、読み応えのある内容となっている。
    ◉記事はこちら→https://backnumber.drumsmagazine.jp/#/content/132

    2009年5月号

    無意識なままやれるようになるまで
    リズム・パターンを練習しないといけない

    ●キャリアの中で、音楽的にターニング・ポイントとなった出来事や出会いで、特に印象深いものがあれば教えてください。
    ギャドソン
    :(中着)音楽的に印象に残った曲は……これはファースト・テイクでやった曲なんだけど、シェリル・リンの「Got To Be Real」。これはとてもしっくりきたんだ。ファースト・テイクで録った曲は他にもいくつかあるよ。ピーチズ&ハーブの「Reunited」もそうだね。すごく気持ち良くやれて、すごく思い出深い経験だったな。あとNo.1の曲もいろいろやったが……グロリア・ゲイナーのディスコ・ナンバー「I Will Survive」は最初B面の予定だったんだ。

    【Note】コーネル・デュプリーと共に来日した際に実現した2009年5月号の対面インタビュー。これまでに参加してきた作品について語るなど、キャリアを総括する内容。さらにキック、スネア、ハイハット=3点のバランスや特徴であるハイハット・ワークの秘訣など、グルーヴするためのヒント満載の1冊となっている。
    ◉記事はこちら→https://backnumber.drumsmagazine.jp/#/content/456

    2013年1月号

    ●70年代前半から現在まで、セッション・ドラマーとして常に第一線で活躍し続けていますが、さまざまなアーティストから求められる理由について、ご自身ではどう考えていますか?
    ギャドソン
    :私はプレイするのが好きだから、雇う側も満足するのだと思う。彼らが私を呼び続けるのは何かを私から感じたいからだろうね。私が呼ばれるセッションの多くは70年代のサウンドを求めることが多い。そしてそこに現代的なフィールも加えたいんだろうね。私のドラムには現代的なフィールもある。

    【Note】「ドラム・マガジン・フェスティバル 2012」でコラボが実演したギャドソンと沼澤 尚が表紙を飾る2013年1月号。沼澤との対談はギャドソン流グルーヴ・メイクの核心を突いた全ドラマー必見の内容。ソロ・インタビューでは小さな動きで太く鳴らす方法や普段の練習についても語ってくれた。
    ◉記事はこちら→https://backnumber.drumsmagazine.jp/#/content/388

    ここで紹介した内容は、ギャドソンが本誌に残した言葉のわずか一部。バックナンバー読み放題では、初掲載となった1992年から2013年まで、30年以上に渡るインタビューが掲載。偉大なるグルーヴ・マスターのキャリアを断片ではなく“全体像”として捉えると、さらに理解が深まるだろう。