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    動画で体感!アコースティックエンジニアリングが手がけた”ドラムが叩ける自宅スタジオの音”[則竹裕之×小蔦規夫さん邸宅スタジオ]

    • Contents & Text:Rhythm & Drums Magazine
    • Drum Performance:Hiroyuki Noritake 
    • Movie:Satoshi Imamura(feat.)Sound Engineer:Masayuki Hoshi(Hey-JOE)

    則竹裕之が約13畳のAE施工スタジオで
    ドラム・ソロ×2をレコーディング

    “自宅で思いきり音を出したい!”、“いつでも楽器を鳴らせる環境を手に入れたい!”……自分のスタジオを持ちたい願望は、楽器を演奏する人ならば誰もが思うこと。そんな“マイ・スタジオ”の夢を実現してくれるのが、プロ用のスタジオやライヴ・ハウスの防音/音響工事も行う、アコースティックエンジニアリングだ。そんな夢の空間を10年以上に渡り紹介してきた本誌人気連載企画、ここでは自宅スタジオの“音/響き”をフィーチャー。プロ・ドラマーが自宅スタジオを訪ねて実際にレコーディングを行い、その“響き”を動画と共にお伝えしていこう。

    Profile●のりたけひろゆき:大阪府出身。1985年にTHE SQUAREのドラマーに抜擢され、プロ・デビュー以後15年間所属し、国内外で高い評価を受ける。バンドを離れた後は、渡辺香津美ジャズ回帰トリオ、渡辺貞夫クインテット、本田雅人BAND、DIMENSIONなどに参加。平原綾香のサポートではバンマスも務める。昭和音楽大学で講師を務め、後進の育成にも携わる。

    今回ご協力いただいたのは神奈川県在住の小蔦規夫さんの自宅スタジオ。フェイバリット・ドラマーは則竹裕之で、スタジオの響きもまさに則竹の音をアコースティックエンジニアリングにリクエストして作ってもらったという。

    • スタジオの広さは施工後約13畳。ドラム・セットやオーディオ・システム、机、本棚が並ぶ。

    小蔦さんの自宅スタジオ詳細が紹介されている
    デジマート・マガジン掲載の記事(リズム&ドラム・マガジン2018年2月号の記事を転載)はコチラ

    スタジオの施主・小蔦さんが所有するTAMA Starclassic Mapleで録った動画
    則竹が持ち込んだSAKAE OSAKA HERITAGE Evolved Mapleで録った動画

    レコーディングを終えて話を聞いたのは、ドラム・ソロを披露してくれた則竹裕之、エンジニアの星 雅之氏(Hey-JOE) 、小蔦邸スタジオの設計担当をしたアコースティックエンジニアリングの中島 元氏。生音やマイクを通した音の印象、スタジオ自体の響きについて語ってもらった。

    ●アコースティックエンジニアリングが手がけたプライベート・スタジオでレコーディングするという企画でしたが、スタジオの印象はいかがでしたか?

    則竹 音が良すぎて驚きました(笑)。今までの経験で“このくらいの広さだと、このくらいの響きかな”って予測するんですけど、良い意味で想像を裏切られました。とってもすっきりしていてチューニングしやすいんですよね。欲しい音色や音域がちゃんと目の前に浮き出てくるようで、非常に演奏しやすいです。僕らドラマーはエンジニアさんと違って、目の前の音、生音で自分に返ってくる音が気持ち良くないとなので、そういう意味でも本当に驚きました。素晴らしいと思います。

    レコーディングの様子。ドラム・セットの目の前にミキサーを構えてもらい、
    “あくまでスタジオの空気感をそのまま収める”を目的にマイキングしてもらった

    ●今回、小蔦さんが所有されているTAMAのセットと則竹さんに持ち込んでいただいたSAKAE OSAKA HERITAGEのセットでレコーディングしていただきましたが、響きに関してどちらも同じ印象でしたか?

    則竹 そうですね。ノーストレス過ぎました(笑)。よく“このシンバルはここまで鳴ってほしくないんだよな、このスネアはここの音域が出てほしいんだよな”って、どの場所でもある特定の音域とかがフッと持ち上がってしまうようなことがあるんですけど、それが見事に自分の聴感上フラットで、自分がこういう音を作りたいって思った音がそのまま出てくれるのはうれしいですよね。今日のレコーディングで一応ヘッドフォンも用意していたんですけど、“あ、使わなくて大丈夫だな”って生音を聞きながら録音しました(笑)。

    サウンド・チェックの様子。非常に快適な音環境だったようで、音作りはあっという間に終了。
    モニターすることなく、オープン・エアーでレコーディングすることに

     スタジオの印象は僕も則竹さんと一緒で、まずマイクを立ててレベルだけ揃えてパッと上げて聴いてみたら、ほぼ音が出来上がっていて。そこからヘッドフォンを外して生音を確認してみても、(ヘッドフォンでの音と)ほぼ変わらないバランスだったんです。嫌な音域がなくて欲しい音域がちゃんと出ていました。ドラムの音色ってローがちゃんとあって、高いところも欲しいけどシンバルがめちゃくちゃ出ているとキツかったりするじゃないですか。でもこのスタジオは全然そういうことがなくて、今日はシンバルをいつもよりちょっと上げたんですよ。いつもだと嫌な音域が出てきてEQとかでカットしたりするんですけど、一切しませんでした。そういう意味では非常に楽でしたね、ありがとうございます!って感じです(笑)。

    則竹 (笑)。良いルーム感もちゃんとあって、それも素晴らしいんですよ。

     そうそう、だからアンビのマイク(※)を立てなかったんですよ。変なサステインもなくて必要ないなと思って。綺麗にアンビエンス感が出ていたと思います。

    ※部屋の奥行き感を録るねらいで立てるマイク。通常ドラムから数メートル離してマイキングする。

    “スタジオの響き”を伝えるため、レコーディングは動画と同録で2MIXを送る形、
    つまり2ch一発録りのライヴ録音とした

    ●スタジオを設計するときに小蔦さんと中島さんの中でも音のねらいがあったんですよね。

    中島 そうですね。小蔦さんが最も尊敬するドラマーが則竹さんで、私自身も憧れのドラマーということで、響きのイメージは一致していたと思います。則竹さんのような幅広いプレイ・スタイルでもやりにくさを感じさせない室内音響にしたいという思いで設計をしました。具体的には、ある特定の周波数で共鳴が起こりにくい部屋の形(間口と奥行きと天井高さの比率)に整えた上で、吸音面や反射面の割付していきます。ただ単に吸音面積を多くしてデッドな響きにするなどではなく、鏡や壁紙の反射面もあり、適度な残響の中で、小蔦さんご自身の幅広い演奏もジャンルを問わず楽しめるような響きになるよう心がけました。本日の則竹さんの演奏を聴きまして、楽器同士の分離感が良く自然な響きになっており、より素晴らしく感じました。

    則竹 ということは、ねらい通りだったんですね。

    ●でも、デッド/ライヴすぎずというバランスは難しいかったのでは?

    中島 アコースティックエンジニアリングで作るスタジオは、どんな楽器や音楽ジャンルでも演奏者がプレイしやすい室内音響を目指して設計をします。小蔦さんのスタジオに関しては、先にも述べたように反射部分として大きな鏡があります。この部分があることによって、吸音の部分も含め総合的にちょうど良いバランスになっています。ドラム・セットの配置が鏡と反対側の吸音壁に近いこともバランスに影響しています。

     鏡の反射は確かに感じました。普通オーバートップで録る場合、今回のドラムの向きだと、後ろはデッドかつスペースがなくて、アンビエンスが取れないじゃないですか。そういうときってシンバルの音はクリアになるんですけどドラム全体がデッドになりすぎるのですが鏡の効果か、ちょうど良いアンビエンスで録れました。今回リバーブもかけていないんですよ。

    小蔦さん邸スタジオの図面。ドラム演奏に十分な遮音性能が確保されている

    ●今回、1テイクは小蔦さんが愛用されているTAMAのStarclassic Mapleで録って、チューニングもほぼそのままの状態でレコーディングされましたがいかがでした?

    則竹 かつて自分も使っていたセットでしたが“こんなに良いセットだったんだ”って逆に僕が気づかされました(笑)。やっぱり愛されている楽器って育つんだなって思いましたし、気持ち良く叩けました。1オーナーで深く、丁寧に愛されてきた特有の音でしたね。もちろん僕も自分のセットを愛してきたんですけど、過酷なライヴ環境で……(苦笑)。チューニングも素晴らしかったですよ。本当に何もいじらなかったです。ご機嫌でした!

    ●プレイバックを聴いたとき、今まさに則竹さんが叩いていたその音がそのままスピーカーから流れてきて、驚きと感動でした……!

    星 普通、アタックを強調したりとかシンバルの倍音を足したりするんですけど、今回は本当にフラットでしたからね。マイクの特性をフラットにする調整はしていますけど、変なイコライジングはナシです(笑)。

    則竹 そんなこと、なかなかないですよね。

    則竹に憧れて手に入れたという、小蔦さん所有のTAMA Starclassic Maple。サイズは22″×18″BD、10″×8″TT、12″×8″TT、16″×16″FT。スネア・ドラムはかつてYamahaでラインナップされていた則竹裕之シグネチャー・モデル(14″×5.5″/バーチ)
    シンバルも小蔦さん所有のジルジャン・シンバルを使用。奏者左手から14″ Kハイハット(ブリリアント仕様)、16″ Kカスタム・ダーク・クラッシュ、9″ FXオリエンタル・トラッシュ・スプラッシュ、A 21″スウィート・ライド、19″ Kカスタム・スペシャル・ドライ・トラッシュ・クラッシュ

    ●2テイク目に録ったSAKAE OSAKA HERITAGE Evolved Mapleの18″キットですが、こちらは最初のTAMAとは対照的とも言える、小口径かつバス・ドラムのフロント・ヘッドも穴なしのジャジーな音作りでしたね。

    則竹 普通だったら難しい音作りですし、楽器自体が若いのですごく鳴るタイコなんですけど、ちゃんと額面通りに音が録れていましたね。

    星 バス・ドラムの音作りはちょっと難しかったですけど、結果的にうまくいきましたね。

    こちらは則竹の持ち込んだ、SAKAE OSAKA HERITAGE Evolved Maple。サイズは18″×14″BD、12″×7″TT、14″×12″FT。アクア・フィニッシュが美しい

    シンバルはこちらのキットでも小蔦さん所有のものを使用。奏者左手側からジルジャン14″Kハイハット(ブリリアント仕様)、イスタンブール・メメット21″メメット・レジェンド・クラッシュ・ライド(2リベット)、イスタンブール・メメット21″ミニ・カップ・ジャズ・ライド。ライド・シンバルのフェルトは外されている

    スネア・ドラムはラディックのLM-400(14″×5″)。フット・ペダルは旧SAKAEのエクスカリバー。スティックはヴィックファースのデイヴ・ウェックル“エボリューション”モデル(14.3mm×406mm/ヒッコリー)。

    ●ドラマーだったら誰もが自宅にスタジオを作りたいと思うのですが、ただ作るだけでなくこうやって音や響きの進化というのも非常に興味深いところでもありますね。

     4リズムで唯一、生で録らないと成立しないのはドラムだけですからね。ギターやベースは小さな部屋でヘッドフォンをしながら録れるんですけど、ドラムがこうやって良い音で自宅で録れるっていうのは素晴らしいことだと思います。

    則竹 そうですね。ドラムは最高ですよ!

    アコースティックエンジニアリングとは?

     株式会社アコースティックエンジニアリングは、音楽家・音楽制作者のための防音・音響設計コンサルティングおよび防音工事を行う建築設計事務所。1978年に創業して以来、一貫して「For Your Better Music Life」という理念のもと、音楽家および音楽を愛する人達へより良い音響空間を共に創り続け、携わった物件の数は2,000件を超えている。現在も時代の要請に答えながら、コスト・パフォーマンスとデザイン性に優れ、「遮音性能」、「室内音響」、「空調設備」、「電源環境」、「居住性」というスタジオの性能を兼ね備えた、新しいスタイルのスタジオを提案し続けている。

    株式会社アコースティックエンジニアリング
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