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ドラム×肉体〜叩き続ける“カラダ作り”〜(2018年11月号掲載) 1. ドラマーとケガの基礎知識
- Text:Koichi Yamakita Model:Daichi Izumi(DISH//)
- Photo:Yoshika Horita Special Thanks:Bonney Drum Japan
1. ドラマーとケガの基礎知識
Q1. なぜケガをしてしまうのか?
A1. 疲れなど、身体に無理があるのが原因
ドラマーのケガの一番の原因は、“疲労”だと考えています。激しいフット・ワークやスティック・ワークだけでなく、身体が緊張した状態が続くだけでも疲労は蓄積してきます。その疲労が一定のレベルを超えると、痛みや損傷といった“ケガ”に発展していくわけです。奏法に無理があったり、身体への負担に対して自覚がなかったりする人ほどケガをしやすい傾向があると言えるでしょう。
Q2. ドラマーのケガの多い症状は?
A2. 1位は腱鞘炎、2位は腰痛
ドラマーのケガで最も多いのは腱鞘炎、次に多いのが腰痛です。他にも首、肩、股間節、膝、足首などは痛みが出やすい部位で、慢性的な痛みに悩む人も少なくないのではないでしょうか。ケガではありませんが、逆流性食道炎、難聴、ジストニアといった症状に悩むドラマーも意外に多いようです。
ところで、慢性的な症状はドラムが原因でないケースも多々あります。厚生労働省の統計によると、腰痛は日本人の5人に1人。ドラムが原因だと思っていた症状も、実は生活習慣から来ているのかもしれません。慢性的な痛みは、身体の使い方で必ず改善できます。
Q3. ケガを予防するにはどうすれば?
A3. 脱力とリラックスが有効
ケガを予防するために大切なことは2つ。1つは、身体に負担のかからない演奏法を身につけること。脱力して演奏すればケガにつながるような疲労を少なくできますし、演奏することそのものが適度な運動になり、痛みの予防につながるという好循環が生まれます。
もう1つは、生活の中にリラックスする時間を持つこと。疲労が溜まったとしても、こまめにリセットできればケガに発展することはありません。
Q4. ケガをしてしまったら
A4. 自己判断は禁物。まず病院に行きましょう
ケガをしたら自己判断は禁物。必ず早い時期に病院にかかり、適切な診断と治療を受けましょう。思わぬケガや病気が隠れていないことを確認するためにも、医師の判断を仰ぐことが大切です。
ただし慢性的な痛みに関しては、病院の治療は「痛み止め」がメインになります。痛みの原因を掘り下げたり、身体の使い方を修正するアドバイスをくれたりすることはあまりありませんので、自分で対処していく心構えが大切になってきます。痛みを“自分の身体と向き合うチャンス”と捉え、身体の使い方を変えていくきっかけにできると良いですね。正しい道筋は身体が教えてくれます。
Q5. ケガの予防にストレッチは有効?
A5. 個人的には必要がないと思っています
ストレッチにもいろいろありますが、関節の可動域を越えて伸ばしたり、痛みを感じながら伸ばしたりするタイプのストレッチは、私はオススメしていません。筋肉繊維を傷めてしまうから、というのが理由です。
筋肉には“伸張反射”という無意識の反応システムがあり、外から加わった力に応じてバネのように素早く動くことができるのですが、筋肉繊維を傷めてしまうと反応が鈍ってしまうのです。ドラム演奏においては関節の可動域よりも、筋肉をバネのように使える“反応の良さ”の方が大切です。
Q6. ケガを予防するためも含め、ドラマーに筋肉トレーニングは必要ある?
A6. 特定の筋肉を大きくするための筋トレは不要
ドラムは全身の連動が大切なので、“特定の筋肉を大きくするための筋トレは不要”というのが私の立場です。ケガの予防という観点からも、全身の連動が崩れるような不自然な動きのトレーニングは避けた方が良いと言えます。
もしトレーニングをするならインナーマッスルを明確に意識し、姿勢を保持する筋肉群や、不安定な姿勢でも身体のバランスを維持するための筋肉群をトレーニングするのが良いでしょう。ドラムは腕の重さだけで十分鳴らせますし、体重移動を加えればもっと鳴らせます。スムーズな動きで音量やスピードを稼ぐには、アウターマッスルの脱力が大切ですね。
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監修&執筆:山北弘一
『ドラム×肉体〜叩き続ける“カラダ作り”〜』はドラム・マガジン2018年11月号の内容をもとに一部を抜粋、再編集したものです。もっと詳しい内容を知りたい方はこちらもぜひチェック!