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スティーリー・ダン、ボズ・スキャッグス、マイケル・ジャクソンなど数々の傑作にセッション・ドラマーとしてその名を刻み、TOTOのメンバーとしても大成功を収めた伝説のグルーヴ・マスター、ジェフ・ポーカロ。ここでは彼の功績を語り継ぐべく、生前ジェフとも親交のあった沼澤 尚が選んだ“ジェフの名盤100”を10日間に渡って紹介! ラスト10日目=Vol.10では、TOTOでの遺作となった『Kingdom Of Desire』など、晩年のジェフが90年代前半に参加した10作品にフォーカス。
『Take It To Heart』/Michael McDonald(1990年発表)
ジェフが参加したマイケル・マクドナルドの3作目。打ち込みなど多用していて80年代のAOR的なアルバムとは少し趣を異にしているが、機械的にプログラミングされたトラックと融合しつつ、適度に存在感をアピールするようなドラミングはある意味で絶妙。これもジェフの人並み外れたグルーヴ感覚の成せる業だろうか。(菅沼道昭)
『Apasionado』/Stan Getz (1990年発表)
このレコーディングの依頼が来たときに、ジェフが父親のジョーに電話をして、「自分はジャズなんてできないのにスタン・ゲッツの作品なんて」……と断ることを相談していたそう。この話をジョーから聞いていたのでリリースと同時にもちろん購入したが、アルバム全編を通して河の流れのようなジェフ節が全開で心地良すぎる。(沼澤 尚)
『Toto – Past to Present 1977-1990』/TOTO(1990年発表)
最後のヴォーカリストの交代劇があり、ついにフランス黒人が一瞬だけ加入した時代の新録を2曲だけ収録したベスト盤だが、秀逸なゴスペル・バラードと、この頃13CATSのキャット・グレイをいたく気に入ってたペイチが、彼に影響されたような新曲を披露したのが興味深い。このときのライヴがジェフ最後の公式映像となった。(沼澤 尚)
『Trick Or Treat』/Paul Brady(1991年発表)
80年代より、故郷アイルランドの色彩からコンテンポラリー・ミュジックへ移行し、高い評価を得たポール・ブレイディ。彼の1991年の作品に、ついにジェフが参加し、そのロック色満点のドラミングで楽曲を躍動させる。ハイ・ピッチで太くヌケるスネア・サウンドがこの時代のジェフを感じさせる。完璧なタイム感、グルーヴの素晴らしさが際立つ。(小宮勝昭[かんぱち])
『Mr.Bad Example』/Warren Zevon(1991年発表)
ジャクソン・ブラウンなど多くのアーティストに影響を与えたことで知られるウォーレン・ジヴォンの91年発表のソロ作。ウェストコースト系のシンガーでありながら、独特な泥臭さのある曲作りと辛辣な歌詞が持ち味。ほとんどの曲はジェフが担当し、ジム・ケルトナーとのツイン・ドラムも聴ける。両者の曲調に合わせた渋いプレイは天下一品!(沼澤 尚)
『Kingdom Of Desire』/TOTO(1992年発表)
TOTOにおける遺作となってしまったアルバム。ジェフが亡くなったニュースが伝わったのは発売直前であり、ジャケットには追悼の言葉が刻まれる。ヴォーカルをスティーヴ・ルカサーが担当し、サウンドもギターがフィーチャーされたハード・ロック色の強いものとなる。ジェフのプレイも今まで以上にソリッドでパワフルだ。(長野祐亮)
『Meanwhile』/10CC(1992年発表)
80年代から現在も活動しているグラスゴー出身のバンドのセカンド・アルバム。オリジナル・ドラマーが脱退した直後でゲイリー・カッツがプロデューサーとして登場となれば、もちろん!という流れでジェフが全面的に参加。タイプの異なる楽曲をこれ以外にはあり得ないというさまざまなグルーヴで支えていく驚異的な職人芸。(沼澤 尚)
『Human Touch』/Bruce Springsteen(1992年発表)
力強いエネルギーに満ちたロックンロール・アルバムで、ジェフも重心が低い弾力に満ちたビートで、バンドをグイグイと牽引。ブルースのドスの効いたヴォーカルに真っ向勝負していく気迫のこもったプレイは素晴らしく、特にM7「Roll Of〜」のピック・アップ・フィルやM9「All Or〜」の冒頭のリズム・ソロでのインパクトは驚異的。(長野祐亮)
『Brasileiro』/Sergio Mendes(1992年発表)
1960年代からブラジル音楽を世界に広めた立役者とも言えるセルジオ・メンデスだが、80年代以降アメリカのスタジオ・ミュージシャンも積極的に起用している。これもその1枚で、ラテンパーカッションと無理なく融合するジェフのプレイが聴けるが、メンデスのアレンジもジェフのプレイを見越している“フシ”が感じられる。(菅沼道昭)
『The Crossing』/Paul Young(1993年発表)
ジェフが亡くなる直前に行なったセッションの1つ。ジャケットにはレコーディングのときの様子や追悼の想いが綴られており、胸が熱くなる。ジェフの1打1打が非常に温かく、グルーヴが深いのも印象的で、それがポール・ヤングの楽曲と歌声にベスト・マッチ。その包容力のあるプレイが作品の全体の雰囲気を決定づけている。(長野祐亮)
※本記事はリズム&ドラム・マガジン2014年5月号、6月号の記事を転載したものになります。
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