PLAYER

UP

Selected Jeff’s Works 〜沼澤 尚が選ぶジェフの名盤 100 〜Vol.09〜

スティーリー・ダン、ボズ・スキャッグス、マイケル・ジャクソンなど数々の傑作にセッション・ドラマーとしてその名を刻み、TOTOのメンバーとしても大成功を収めた伝説のグルーヴ・マスター、ジェフ・ポーカロ。ここでは彼の功績を語り継ぐべく、生前ジェフとも親交のあった沼澤 尚が選んだ“ジェフの名盤100”を10日間に渡って紹介! 9日目=Vol.09では、TOTOのアルバムを中心に84〜90年に参加した10作品についてのレビューを掲載。 

『The Magazine』/Rickie Lee Jones(1984年発表)

デビュー・アルバムがいきなりグラミー賞を獲得したが、その受賞スピーチでのヤク中っぷりが世の中に知れ渡り……この4枚目はパリで生活しながらなんとか回復しようと制作したことでも有名な傑作。映画『フランキーとジョニー』のワン・シーンでも使用された「IT MUST BE LOVE」は内側から熱い、まさにジェフの真骨頂。(沼澤 尚)

『Isolation』/TOTO (1984年発表)

83年4月にPITにクリニックにやってきたジェフとルカサー達。顔の目の前がフロントヘッドを外したバスドラという位置で初めて聴いたジェフの生音は、とてもこの世のものとは思えなかった。「アルバム用の曲書き中なんだ」と言ってインストで披露してくれた「ミスター・フレンドリー」が収録された感動の5作目。(沼澤 尚)

『No Lookin’ Back』/Michael McDonaldo(1985年発表)

元ドゥービーにしてAORの代表格マイケル・マクドナルド、1985年発表の2ndソロにして彼の最高傑作とも言われる作品。ジェフとウィリー・ウィークスのリズム体は、2人のタイムが溶け合い、パワフルかつヘヴィながら、洗練されたグルーヴを形成。時代を感じさせる音色も問答無用の気持ち良さ!楽曲を作り上げるドラミングとして、まさに完璧。(小宮勝昭[かんぱち])

『Fahrenheit』/TOTO(1986年発表)

「ファーギー(フレデリクセン)はマーヴィン・ゲイも知らないぐらいソウルがないんだ」……とピザを奢ってくれながらテーブルでビートを刻みつつ愚痴っていたジェフを覚えてるが、その言葉通りに今度はジョセフ・ウィリアムズが加入。とはいえ個人的なお気に入りのトラックはシンバル・ワークが美しすぎるスティーヴ・ポーカロ作の「LEA」。(沼澤 尚)

『If My Ancestors Could See Me Now』/lvan Neville(1988年発表)

スティーリー・ダンのプロデューサーとしても名高いゲイリー・カッツが手がけた5曲をジェフがプレイ。マイケル・マクドナルド、ドナルド・フェイゲン、マーク・ジョーダンといったAORの名手達が楽曲を提供しており、そのしっかりと練り込まれた完成度の高いサウンドに、ジェフの安定感のあるプレイが光っている。(長野祐亮)

16曲入りバージョン

『Toto VII』/TOTO(1988年発表)

大好きなルカサーとランディ・グッドラムのコンビによる「THESE CHAINS」と「ANNA」……まったく個人的な見解でしかないが、この2曲こそが楽曲として本当に自分の心を揺さぶり動かすほど感動的で、ここでのジェフのドラム・プレイはまるで歌詞をそのまま表現しているかのよう。他の誰にもできない奇跡の表現力。(沼澤 尚)

『Strange Kind Of Love』/Love and Money(1988年発表)

80年代から現在も活動しているグラスゴー出身のバンドのセカンド・アルバム。オリジナル・ドラマーが脱退した直後でゲイリー・カッツがプロデューサーとして登場となれば、もちろん!という流れでジェフが全面的に参加。タイプの異なる楽曲をこれ以外にはあり得ないというさまざまなグルーヴで支えていく驚異的な職人芸。(沼澤 尚)

『In The City Of Angels』/John Anderson(1988年発表)

イエスのヴォーカル、ジョン・アンダーソンが88年に発表したソロ作。TOTOチームが3曲で全面サポートし、メロディは80年代型イエスだがバンドがTOTOという不思議な取り合わせ。しかし違和感なく仕上げているのはさすがに職人と言ったところ。他の曲はジョン・ロビンソンらのチームが担当。ポーカロ3兄弟の揃いぶみも1曲。(菅沼道昭)

『Soldiers On The Moon(+5)』/David Lasley(1989年発表)

美しいファルセットが魅力的なデヴィッド・ラズリーの3rdアルバム。歌も含めて編集なしの1発録音という極めて緊張感の高い状況で制作されたが、ほとんどが2テイクで終了したらしい。自信みなぎるアグレッシヴなプレイが素晴らしく、あらためてそのスキルの高さを実感できる作品。ブラシ系のジャジーなテイクを含むのもレア。(長野祐亮)

『Anonymous Confessions of a Lunatic Friend』/Bryan Duncan(1990年発表)

ゴスペル・シンガー、ブライアン・ダンカンのソロ5作目。ジェフは全面参加で、ネイザン・イーストやジェリー・ヘイ・チームのホーン・セクションなど参加ミュージシャンもかなり豪華。ゴスペル・ファンクやJB風ファンク、バラードまでゴスペルに根ざした楽曲が並ぶ。脂の乗りきったジェフのグルーヴの懐の深さが堪能できる。(菅沼道昭)

※本記事はリズム&ドラム・マガジン2014年5月号、6月号の記事を転載したものになります。

ジェフ・ポーカロ 関連記事