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6月29日はディープ・パープルのドラマー、イアン・ペイスの誕生日。78歳を迎えた現在も第一線で活躍を続け、4月の来日公演でも健在ぶりを見せつけたばかりだ。さらに7月3日にはニュー・アルバム『Splat!』の発売を控える。そんな彼のドラミングを象徴するのが、パワーとスピードを兼ね備えたスリリングなスティック・ワーク。ここでは2006年8月号掲載のロング・インタビューから、自身のグリップやスティック・コントロールについて語った貴重な証言を公開する。
スティックを握るために筋力を使うと
ドラムを演奏するための筋肉が使えなくなる
だからスティックは楽に握らなきゃならない
ペイス:スティックは親指と人差し指で最適なポイントを支えているよ。スティックを速く動かすときには、中指と薬指でスティックを手のひらの中心に向かって押す形になる。これだと、強く叩くときにはそのまま握り込むだけで済むんだ。小指は全体のバランスを取る以外の役割は果たしていない。マッチド・グリップの場合はどちらの手も、スティックの握り方は同じだよ。

スティックを握る位置は多少違うけど、それぞれの手で自然に握った状態がこうなんだ。腕を振り下ろしたときに、スティックがそのまま自然に手のひらから離れるような位置で握ると、僕の場合はこうなるわけ。スティックの真ん中を支えると、前後の重量バランスが取れてしまって、スティックがあまり動かなくなるから都合が悪い。後ろの方を握ると、スティックが自由に動いてくれない。スティックが自由に動いて自然にバウンドするように、ギュッと握るんじゃなく、楽に動くように握ることが肝腎だよ。スティックを握るために筋力を使うと、ドラムを演奏するための筋肉が使えなくなってしまう。だから、スティックは楽に握らなきゃならないんだ。
スティック自体も、重すぎても軽すぎてもいけない。コージー・パウエルみたいにものすごく重いスティックが好きな人もいるし、楽に叩くためにジャズで使うような軽いスティックを使っている人もいる。長さにも人それぞれに好みがあって、自分に合ったものを見つければいいけれど、どんなスティックにも自然にバランスの取れるポイントというものがあるから、そこを見出すことが大切なんだ。でも、そのポイントを見つけるのは難しいことじゃない。ここだというポイントは、感覚的にわかるからね。
ロールをするときには、手首の上の筋肉と中指、プラス、薬指でバランスを取るんだ。親指をスティックの真上に持ってくることはないよ。
●親指に力を入れることはなくて、スティックは曲げられた人差し指の上に乗っかる形になるわけですね?
ペイス:そう。スティックは曲げた人差し指の上に落ち着いていて、手の他の部分はそこからスティックが外れないようにするためにあるって感じだね。
パワー・ストロークのときには、“カラテ・パンチ”と同じ理屈で叩いている。つまり、腕を振り下ろすときの力はあまり重要じゃなくて、スティックがヘッドに当たる瞬間の力が大切だということさ。肝腎なのはスピードと、インパクトの瞬間にパワーを集中することなんだ。
そして、叩いた後でスティックをヘッドから離すスピードも重要だ。スティックがヘッドに触れている時間が長いと、スティックがヘッドの振動を殺してしまうことになるからね。つまり、パワーを生み出すのはあくまでもスピードで、力を入れれば良いというわけじゃないんだ。
ハードなプレイをするために、すごく高いところからスティックを振り下ろしている若いドラマーがいるけれど、そうするとかなりのエネルギーが必要になる。でも、音はあくまでも、スティックを振り上げたところじゃなく、ヘッドのところで出るわけだから、いくら腕を高く振り上げても意味がないんだ。大きな音はスティックを振り下ろすスピードで出すもので、そのスピードは手首の動きで確保するものなんだ。手首の動きで出すスピードを肘の動きで出すのには無理がある。指と手首の方が、肘よりも速く動かせるからね。
ルーディメンツは、ある音を叩くのに
必要な手をもう一方の手と
入れ替えるための方法を示している
●ヘッドからスティックを離すスピードは、スネアやタムを移動する際にも役立っている?
ペイス:スティックをヘッドから離すスピードが速くなれば、それだけタムを移動する時間を稼ぐことができるのは確かだよ。でも、移動するスピードを速くするのは、スティックを正しい位置で振り下ろすためという意味もあって、そのためには、次の音を叩く前に別な音を入れるという手段もある。
つまり、例えば右手をより右の方にあるタムに移動するときには、その間に左手で別な音を叩いて時間を稼えばいいけれど、そのためにはルーディメンツがとても重要になってくる。ルーディメンツは、ある音を叩くのに必要な手を、もう一方の手と入れ替えるための方法を示しているわけだからね。
いつも左右の手を交互に使っていると、移動するときに都合が悪いこともある。そんなときには、どちらかの手を2回か3回続けて使えば、もう一方の手が移動する時間を稼ぐことができるんだ。そんなわけで、ルーディメンツは、音が抜けないようにタムを移動するための時間を稼ぐのに重要なテクニックだということさ。
ルーディメンツを理解せずに、両手を交互に使うことしか知らなければ、必要な速さでタムを移動することができなくて、音が抜けてしまうからね。例えば、シングル・ストロークで8分音符を叩いているときに、片手で2回続けて叩く3連符を入れることで、もう片方の手が移動する時間を作ることができるんだ。バディ・リッチのビデオを観れば、右手でいろんなことをやる時間を左手で作り出しているのがよくわかるよ。
●今でも新しいアイディアを身につけるための努力を続けているのですか?
ペイス:新しいアイディアなんて、1つもないよ(笑)。肝腎なのは、以前に誰かがやった古いアイディアを、どんなふうに興味深い形で応用するかなんだ。片手ロール(編註:チャド・スミスとのDVD「チャド・スミス&イアン・ペイス」でも披露している)というものを知ったのも、子供の頃にバディ・リッチがやっているのを観たのが最初だったけれど、そのときには、あまりにも次元の違う奏法のように見えたから、自分にはできないと思っていた。ところが、確か6、7年前だったかな、ニュージャージーで開催されたモダン・ドラマー・フェスティバルに参加したとき、素晴らしいドラマーのマイク・マンジーニが、同じ奏法を使って、より繊細なサウンドを出していた。そして、彼の話を聞いたり、彼の演奏を観察しているうちに、子供の頃には絶対不可能だと思っていたことが、自分にもできるとわかったんだ。
片手ロールをやるには、3つの要素を融合させる必要がある。つまり、物理の法則と、その法則を応用するための ―― 具体的に言えば、手を同じ位置に保ったまま動かすテクニック、そして、そのコツを飲み込むことさ(笑)。人によっては、“ペイント・ブラシ(刷毛)ロール”と呼ばれるテクニックを使ったりもするけれど、僕にとってはむしろ、その方がずっと難しい。僕のやっている方法は、根本的にはそれほど難しいことじゃないけれど、このやり方で大きな音を出すのには、ちょっとしたコツがいるんだ。
見た目には、不可能なことをやっているように映るかもしれないけれど、ここでコツを披露してしまうと楽しみがなくなってしまうから(笑)、ここでは、ちょっとしたコツと物理法則、それにパワーをコントロールするテクニックが重要だとだけ言っておこう。でも、実体のある奏法なのは間違いないよ。そして、すべての音はダウン・ストロークだ。一生懸命研究して、コツが飲み込めたら、それは素晴らしいことだけれど、他の人には教えておかないでもらいたいな(笑)。ペイント・ブラシ・ロールのテクニックではないというのがヒントだよ。
イアン・ペイスが20年前に語った
音楽的背景とキャリアのスタート
