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    大阪から世界へ復活の狼煙! SAKAE OSAKA HERITAGE Vol.04

    • Interview:Rhythm & Drums Magazine
    • Photo:Takashi Yashima
    • Recording:Taro Kuroda[studio parasight]
    • Movie:Kazuki Kumagai

    Test Report②〜Evolved vs The Almighty Maple

    MASUO × 辻 俊作

    続いてはEvolvedの実力をさらに掘り下げるべく、旧SAKAE時代に発表したメイプル製ドラム=The Almighty Mapleと比較して検証! ドラム・チューナーとして数々のサウンドを手がけ、両モデルを深く知るMASUOとSAKAE OSAKA HERITAGEのプロデューサー、辻 俊作氏との対談からその進化を探ってみたい。

    ●Evolvedについて、あらためて辻さんから説明をお願いします。
     Evolvedは過去に私がやってきたことを次のステージに持っていくためのきっかけでもあるんです。その世界ではちょっと認識してもらえるようなことをこれまでやってきたと思うんですけど、“そこをちゃんとやってるんだね”って思ってもらえるような、そういういったドラムを作りたかったのと、今回、音の比較みたいなのも(動画で)やるんですけど、“これだけ変わったぞ”っていうのを、きちんとわかるような形で実現しようとしたのが、このEvolvedになります。

    ●具体的にどのような点が変わっているのでしょうか?
     SAKAEのサウンドの核として、中低域がふくよかで押し出しが強いっていう特徴があるんですけど、そこを持ちつつ、削らずに、さらに押し出して、マイク乗りのいいようにしたのがポイントです。

    ●MASUOさんは、Evolvedを初めて叩いたときは、どういった印象を持ちましたか?
    MASUO 太い(笑)。まぁそれだけじゃないんですけど、第一期SAKAEの頃は、The Almighty (Maple/Birch)、Trilogy、Celestialがあって、あれは完全に(キャラクターが)分かれていたと思うんですよ。辻さんがさっき言った、中低域の部分はあるんだけど、カラーはやっぱり全部違う。そういうドラムだったと思うんですけど、Evolvedに関しては、The Almigty Mapleを継承しつつ、良く言えば3つ全部を持っているのかなっていう感じがしましたね。

    ●なるほど! 以前発表したシリーズの要素を兼ね備えるということはねらっていたのでしょうか?
     そうですね。ここ何年間で、いつ作れなくなるかもしれないっていうことを、ひしひしと感じたわけですよ。だから次出すもの、その次出すものっていうのは、“もうここで終わるかもしれない”と思ってやっているところもあるんです。だから入れられるものは全部そこに入れたい。その結果として、その他のシリーズのニュアンスをちゃんと持っているということになったんだと思います。
    MASUO すごく的確に言うと、The Almighty MapleとCelestialの真ん中だなっていう。それを最初に感じました。

    ●完成形のスペックに辿り着くまでに、試行錯誤もあったそうですが、最初はどういった形のものだったんですか?
     自分達でデザイン、プロデュースはしているけど、自分達の工場じゃないところで作るということで、どこまでできるのか、その確認用にまず2つ作ったんです。それを見て、2つ目、3つ目を作って、4つ目が完成したものになるんですけど、現場……ライヴ会場で使用して、もうちょっとこうした方がいいっていうことを持ち帰って、また作業する。そういうことをずっとやっていました。
    MASUO (試作品のドラムは)硬かったですね、音が。でも生で聴いたときは、すごいちゃんとしているなと思いました、正直。昔は作っているところを見ていたじゃないですか、日本でやっていたので。それが今回は違うところで作ることになったわけで、ちゃんとできるのかなっていう不安も少しあったんです。でも出来上がったものを生で聴いたときは、やっぱりちゃんとできるんだなって。ただライヴでマイクを通したときに……PAさんとかとも話したんですけど、アタックが“バチバチ”っていう。ロー感よりもそっちの方が目立っちゃって。そういう話をいろんなところで聞いたんで、“どうにかして”っていうことは伝えました。
     だからスペック的には戻したんですよ。理論的に積み上げてきたものはそうであるべきなのに、結局出過ぎてしまう。今のマイクはすごく細かな音まで拾ってしまうんです。そこでここまでやっちゃダメなんだとか、どこを出すかどこを引くかみたいなことを、何回も重ねて製品版になっていくんですけど、そういう実験をいろんなドラマーとずっとやっていました。

    ●今回はEvolvedと過去にリリースされた同じメイプルを使ったThe Almighty Mapleを叩き比べて検証したわけですが、MASUOさんはドラマー視点でどういう違いがあると感じますか?
    MASUO The Almighty Maple……“(Evolvedのことを)こいつ”って言わせてもらいますけど(笑)、The Almighty Mapleはかなりアタックもしっかり出て、点も太い感じで、ロー感もしっかりあるドラムだったんですけど、そこを“こいつ”は上回ってロー感が(出る)。とにかくキックとフロアに関しては、言ったらメイプルとバーチくらいの違いのロー感があって。タムもそうで、ミドルの部分が綺麗に出ていて、アタックの点が太い感じですね。だからマイク乗ったときの音が、すごい“面”で来るというか。The Almighty Mapleも素晴らしいドラムなので、ちゃんと点は出ていたんですけど、“こいつ”を聴いちゃうと、ちょっと点が細い感じに感じます。現代音楽の同期がいっぱいあったり、パワーのあるアンプで鳴らしてる楽器に対して、マイク乗りはやっぱりEvolvedの方が素直に出てくれるんで、いいんじゃないかなと思いますけどね。ノーミュートで全然いけますから。

    ●具体的にどんな違いがあるんですか?
     中身を言うと、以前やってたときよりもタムは薄くしてるんですよ。フロアとキックは厚いというか、1枚多いんだけど少し全体を薄くしてる。そこで押し出しとかを稼いでいるわけです。パーツなんかは基本一緒なんですよね。ちゃんと比較してほしいので。木の厚み、重ねる枚数……厚みと言っても、7枚重なってるなら、その1枚ずつの厚みの調整ですね。それしかしていないんです。The Almighty Mapleを使ってる人にこそぜひ叩いてみてほしいし、“ここが変わったんだ”っていうのは、僕も気づいてないところがあるはずなんで。

    波形で見るEvolvedとThe Almighty Maple

    Evolvedのキックの波形
    The Almighty Mapleのキックの波形

    EvolvedとThe Almighty Maple、その違いをキックの波形で見ていこう。まずEvolvedは、低い周波数が減衰しておらず、キレイに重低音まで伸びている。ハイはアタック(4kHz〜5kHz)にしっかりピークがありそこから高い周波数にかけてなだらかに減衰。低音も高音もレンジが広く現代的なクリアな音像になっている。The Almighty Mapleは、120kHzくらいに低音のピークがありロー・ミッド、ミッド共に少し落ち、ハイはアタックはしっかりあってそこから上にかけては減衰が強く、キックの必要な部分がしっかりと出ている音像になっている。

    真太郎[UVERworld]のコメントは次ページ