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    大阪から世界へ復活の狼煙! SAKAE OSAKA HERITAGE Vol.02

    • Text:Yusuke Nagano
    • Interview:Rhythm & Drums Magazine
    • Photo:Takashi Yashima(Gear)/sencame

    日本最古のドラム・メーカーであったSAKAEのレガシーを受け継ぎ、新たなブランドとして再生したSAKAE OSAKA HERITAGEが、2021年に満を持して新たなドラム・セット=Evolvedをリリース。ドラマガWebでは12月16日発売の『リズム&ドラム・マガジン2021年1月号』と連動で、新生SAKAEにクローズ・アップ! その第二弾としてニュー・モデル=Evolvedの解説と、そのデザインを手がけたプロデューサー、辻 俊作氏のインタビューをお届けしていこう! 愛用ドラマーである神田リョウのコメントも掲載!

    【Contents】
    Vol.01〜Event Report/Talkin’ About Evolved ①則竹裕之
    Vol.03〜Laboratory Report/Talkin’ About Evolved ③大喜多崇規
    Vol.04〜Test Report feat.リアド偉武/Evolved vs The Almighty Maple/Talkin’ About Evolved ④真太郎

    SAKAE OSAKA HERITAGE 特設 HP

    Gear Evolvedの詳細を徹底解説!

    22″ 4pc. with Tom Stand Configuration

    ●Shell(シェル)

    Evolvedのシェルに採用されているのは、高品質な北米産のメイプル材。一般的なドラムのシェルは、薄い木の板を張り合わせて作られていますが、その枚数や厚み、組み合わせによって音色が変化します。重ねる板の枚数は“プライ数”として表しますが、Evolvedはバス・ドラムが7プライ(7.2mm厚)、フロア・タムが7プライ(6.4mm厚)、タムが6プライ(5.6mm厚)という構成。バス・ドラムとフロアタムは、同じ7プライでも仕様が異なっているので、厚みにも違いがあります。同じメイプルを使った旧SAKAE時代のThe Almighty Mapleは、すべて6プライ・シェルでしたが、合計の厚みは7プライと1枚多いEvolvedの方が、バス・ドラムは薄く設計されているそうです。このことからもEvolvedのシェルには薄い板が含まれていることがわかりますが、ここにサウンドの秘密の一端があるように感じます。

    エッジの成形もサウンドに大きな影響を与える部分ですが、これはすべて角度を45度に統一。ドラムのデザインを手がけた辻氏曰く「ドラムによってエッジ角を変えてしまうと、それぞれの打感が変わってしまうので、同じ角度で揃えている」とのこと。このあたりにも、叩き手の立場に立ったSAKAEのドラム作りの姿勢がうかがえます。

    7プライ仕様となっているバス・ドラムのシェル。プライ数は多いが合計の厚みは薄めに設定されているのがEvolvedの特徴でもある。よく見ると一番内側の板が特に薄くなっていることが分かるが、これはサンディングを内側に施すためだという。
    タムのシェルは、クリアかつパワフルな音色をねらって、やや薄めの6プライに設定されている。シェルの断面に濃淡の層が見えるのは、木の縦目と横目の違いによるもので、この組み合わせが音色に影響を与えているということだ。
    音色に大きな影響を与えるエッジのデザインにもこだわりが凝縮。角度はタム〜バス・ドラムまですべて共通で45度に設定。非常に美しく成形されたエッジは頂点が外側寄りに位置しており、見た目ではやや鋭角的なシェイプという印象を受ける。

    ●Size(サイズ構成)

    試奏に使ったEvolvedのドラム・セットのシェルの深さは、10″、12″のタムが7″、16″のフロア・タムが14″とやや浅く設定されています。特に12″×7″というサイズは特徴的で、このあたりは低域やサステインをほど良く抑えてコントロールする意味合いがあるということですが、同時にセッテイングの自由度が広がったのも見逃せない好ポイントだと感じます。また、バス・ドラムに関しては、22″の口径に対して18″というやや深めの設定となっており、シェルの長さによる低域の増強はもちろん、激しく踏んでもまったくブレないセッティングの安定感も抜群。この相互作用によって、Evolvedのセールス・ポイントでもある、迫力のあるバス・ドラム・サウンドが生み出されていると感じます。サイズのバリエーションは、バス・ドラムが大口径の26”から小口径の18”まで2インチ刻みでラインナップされ、22”には深さ20”仕様が用意されているところも見逃せないポイント。タムは8”、10”、12”、13”、14”、フロア・タムは14”、16”、18”という構成。タム・スタンドやタム・マウントが付属するコンフィギュレーションも複数用意されており、音楽性に合わせて多彩な選択が可能になっている。

    22″×18″BD、10″×7″TT、12″×7″TT、16″×14″FT

    ●Finish(フィニッシュ)

    鮮やかなカラーリングのフィニッシュは旧SAKAEのトレード・マークでしたが、もちろん新しいEvolvedにもそれはしっかりと継承されています。今回はレギュラー・ライン的な位置づけのストック・カラー6色に、22色のオーダー・カラーを加えた全28色が用意されています。通常よりも3倍も大きなフレークを使ったステージ映えのするスパークル系や、グラデーションの美しいフェード系のフィニッシュは、ドラマーやバンドの個性をしっかりとアピールしてくれることでしょう。ちなみに試奏時に使用したセットは、2種類の葡萄をイメージした“GRAPES”というカラーでしたが、フェードの濃淡の移り変わり部分の微妙な色合いの鮮やかさが印象的。塗装も台湾工場で施されているわけですが、以前と変わらぬその輝きからは、台湾工場のスタッフにSAKAEの塗装技術がしっかりと浸透していることが感じられます。

    フィニッシュの美しさにも定評のあるSAKAE。Evolvedでは、レギュラー・ライン的となるストック・カラー6色に、22色のオーダー・カラーを加えた全28色が用意。

    ●Hardware(ハードウェア)

    音に対するこだわりの詰まったハードウエア類は旧SAKAE時代と同じものを採用しています。タムやフロア・タムは、あえて重量を増やしたトランス・ミット・ラグを装備していますが、これがシェルの振動の伝達能力を高めたり、不要な倍音のコントロールにも役立っているということです。バス・ドラムのスパーとシェルの取りつけ部分は、ラバー製のスペーサーを挟むことで、シェルの振動を床に逃すことなく最大限に生かす工夫がされており、床の環境に影響されることなく、安定した低音を引き出すことができます。タム・ホルダーやフロア・タム・レッグのマウントには、“クレイドル・マウント・システム”が健在です。これは金属のブリッジをボトム側のラグに設置して重さを支えることで、低域を引き出す効果が得られるという、SAKAE独自の革新的なシステム。ラグとブリッジの接点にはラバーのスペーサーを挟み、シェルの振動をマウント部分に吸収させることなく、鳴りを最大限に発揮できる構造になっています。

    SAKAEのフープは、トップが外巻きになっているライティヘイローと、内巻きになっているマイティヘイローの2種類がある。今回のEvolve採用されているのが写真のライティヘイローで、倍音を素直に響かせるオープンなサウンドが特徴的。
    タム・ホルダーとフロア・タムの脚に採用されている“クレイドル・マウント・システム”は、SAKAEのサウンドとルックスの両方の個性を際立たせる重要アイテム。ボトム側のラグに、金属製ブリッジを、ラバーを介して設置して、下側から重さを支えることで、振動を増幅して低域を引き出す効果を生み出すという。
    ラグはあえて金属を肉厚にして重量を増やした“トランス・ミット・ラグ”を装備。金属の不要な共鳴を抑えると同時に、振動の伝達能力を高めて、豊かな鳴りを引き出す効果もある。曲面を生かした輝きのあるデザインは、舞台での照明に映えるように考慮されているそう。
     

    総評〜作り手の熱意やポリシーが伝わってくる〜

    シェル、フィニッシュ(塗装)、ハードウェアを中心にEvolvedを解説してきましたが、芸術的に美しい塗装や、こだわりの詰まったハードウェアといった、旧SAKAE時代に培ったノウハウを継承しながら、シェルのスペックを追求して変化させることによって、今の時代にマッチするサウンドに進化を遂げたEvolved Maple! 台湾の工場へ量産の拠点が移動しても、以前と変わらず、作り手の熱量やポリシーがしっかりと伝わってくるドラムだと感じます。ぜひ多くのドラマーに、間近で見て、触って、叩いて、聴いて、身体全体でその素晴らしさを味わって欲しいと思います。

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