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【Live Report】FUYU×勢喜 遊×松浦千昇がテクニカルに紡ぐグルーヴ – TAMA 50th ANNIVERSARY EVENT <Day 2>

  • Test:Rhythm & Drums Magazine Photo:Hoshino Gakki Hanbai Co., Ltd.

Contents – TAMA 50TH ANNIVERSARY EVENT

Day 2:FUYU×勢喜 遊×松浦千昇
Live ReportFrom ArtistsLive Gear

Display〜展示/試打フロアをレポート!〜

Day 1:長谷川浩二×FUMIYA×むらたたむ

親交の深いテクニカル・ドラマー達が
個性豊かに引き出す
TAMA Drumsの多彩なサウンド

■Live Report
<Day 2>FUYU×勢喜 遊×松浦千昇

「TAMA 50TH ANNIVERSARY EVENT」のDay 2は、普段から親交が深いという松浦千昇、勢喜 遊[King Gnu、MILLENNIUM PARADE]、FUYUの3名が出演。音楽の好みも似ているものの、プレイ・スタイルはかなり異なるということで、その違いも楽しみながらレポートしていきたい。

庄村聡泰(MC)

Day 1と同様、まずはMCの庄村聡泰によるオープニング・トークで本編がスタート。TAMAと庄村のエンドースメントのきっかけについての話題で、約10年前に発表されたフラッグシップ・モデル=STAR DrumシリーズのSTAR Bubingaを紹介。「タムを1発叩いたときに、沈み込むような残響と柔らかなサウンドに心を掴まれたんです。 [Alexandros]でも、“このドラムで会場のお客さんの心も掴みたい“と思いました」と振り返った。

松浦千昇

続く3名のパフォーマンス・セクションでは、まずトップ・バッターとして、ジャズやポップス、R&Bなど多彩なジャンルに対応し、その技術の高さは次世代シーンでも注目のドラマー=松浦千昇が登場。1曲目にプレイしたのは、ムーディーなサックスが印象的なフュージョン・ナンバー。この日の相棒は、重厚さを感じさせるスモーキー・ブラックのシェルが印象的なTAMA STAR Mapleに、スネア2台を奏者正面に並べて組み込んだ変則セッティングで、タイコ類をガムテープでミュートを施し調整。斬新かつ卓越したテクニック&サウンド・アプローチを備え、華麗なスティック・ワークやタムの高速移動に、見事なコントロール力で会場を沸かせる。

1曲を終えて、50周年を祝福するコメントを挟むと、次にドラム・ソロをプレイ。ダイナミクス・レンジも幅広く、流麗なリズムを繊細に刻んでいたかと思えば、時に驚くような轟音にもなる。展開の読めないスリリングなドラミングにも関わらず、抜群の安定感とグルーヴ・センスで、息を呑むような展開と心地良さの両方を成立させる。ラストに、所属バンド“賽”のピアノ・バラードでどっしりとしたプレイを聴かせ、パフォーマンスを締め括った。

勢喜 遊

「J-POP/ROCKシーンにおけるハイハットの自由度は、彼によって解放されたと思うんです」。MCの庄村にそう紹介されて登場したのは、King Gnu/MILLENNIUM PARADEの勢喜 遊。アコースティック×デジタルのハイブリッド・サウンドを駆使した独創的なドラミングで楽曲の世界観を演出する勢喜が用いた機材は、TAMA STAR Walnutの24”バス・ドラムと18”フロア・タムを軸に、トリガリングしたスネア・ドラムやサンプリング・パッドを組み込んだ変則セッティング。このイベントならではの目玉となったのは、何と勢喜が1から手がけたオリジナル・ソロ楽曲の披露。スリリングに展開していく楽曲の中で、シンバルのサステインの伸びまで計算し尽くされたかのように緻密なドラム・アプローチを繰り広げた。

自身がレコーディングに参加したODD Foot Worksの「卒業証書」を続けて演奏したところで、勢喜流グルーヴを畳みかけられた会場の熱量が、バンドのライヴさながらに高まっていく。それを感じてか、勢喜が「これは本当にドラムだけのイベントですか(笑)?」とオーディエンスに尋ねるというコミカルな1コマを挟んで、ラストはꉈꀧ꒒꒒ꁄꍈꍈꀧ꒦ꉈ ꉣꅔꎡꅔꁕꁄ×椎名林檎の「W●RK」をプレイ。クセになる独特のシャッフル感とヘヴィなビートを主体に、アグレッシヴな高速フィルを交えたアプローチで楽曲を支え、会場を最高潮に盛り上げてステージを後にした。

FUYU

Day 2のパフォーマンスを締め括るのは、ニューヨーク仕込みのゴスペル・ドラムを駆使し、EXILEなどのLDH系列のアーティストやMISIAといったミュージシャン達と共演を重ねるFUYU。変幻自在のグルーヴィーなプレイで楽曲を彩る彼は今回、イギリスの技巧派ドラマー=カズ・ロドリゲスの作品4曲を用いたパフォーマンスに臨んだ。1バス、3タム、2フロア・タムで構成された愛器=TAMA Starclassic Bubinga Eliteを縦横無尽に鳴らし、1曲目から手数足数を繰り出す怒涛のパフォーマンスを、爆発力のあるドラム・サウンドで展開。庄村が彼を紹介する際に「ドラマーとしてフィジカル面を意識するようになったのは、このお方のドラムの鳴りを聴いたのがきっかけ」と語っていたのも納得の、圧倒的な存在感だ。

FUYU のキックの抜群なアタック感やテクニカルなショットが楽曲をよりダンサブルに仕上げ、ギミック的に働くロー・ピッチ仕様のサイド・スネア(S.L.P.シリーズのG-Maple)のサウンドもまたメロディアスな楽曲の奥行きを拡げていく。そんなパンチの効いた立体感のあるビートが客席にビシバシと伝わってくると、高揚せずにはいられない……ラストにプレイした瑞々しく爽快なナンバーをドラマチックなソロで締め括ると、圧巻のパフォーマンスに会場は歓声と大きな拍手に包まれたのだった。

演奏を終えてのトーク・セッションで、松浦は「FUYUさんのサウンド・チェックの動画を見てゴスペル・ドラムの文化を初めて知った」と、FUYUから大きく影響を受けたと明かす。勢喜は、「居心地が悪かったです(笑)」と素直なコメントをしつつ、「今日は自分にとってもいい機会でした。後輩の怪物ドラマー千昇君と、憧れのドラマーFUYUさんと一緒にステージに立てて良かったです」と語った。FUYUは「自分がNYから日本に来て16年。当時と比べると日本のドラム・シーンは相当進化のスピードが上がったと思っていて、自分自身も刺激をもらえています」とコメントし、最後にTAMA50周年をそれぞれの言葉で祝福。こうして2日間に渡るイベントは大団円を迎えたのだった。

2日間に渡り、キャラクターの異なる6人の凄腕プレイヤーが見せてくれた演奏やサウンドのクオリティの高さはもちろんのこと、国内外のTAMAアーティストから贈られた50周年の祝福メッセージからも、バラエティ豊かな製品ラインナップや製造工程でのこだわり、演奏をサポートする機能の追求によって、TAMA Drumsがプレイヤーの抱く多様な世界観の表現を可能にしているということが伝わってきた。多彩なドラム・パフォーマンスを体感でき、アート作品を観たあとのような充足感を覚えるイベントであった。

■From Artists

TAMAのサポートなくしては僕の活動もない
お互いがギブ・アンド・テイクの関係でいられたら


松浦千昇:50年の歴史の中で、自分がTAMAアーティストとして在籍しているのはまだほんの数年ではありますが、節目のイベントに呼んでいただいたのは光栄の一言に尽きます。当日は、自分の演奏でTAMAのドラムの良さが伝わればいいなと思って臨みましたが、仲のいい先輩であり兄貴であるFUYUさんや遊君と、対等に勝負しにいこうかなという気持ちもありました。

FUYUさんのStarclassic Bubingaは自分も持っているんですけど、長く使われているセットの音の育ち具合いを聴いて、自分のものもいずれFUYUさんと同じように熟成されていくんだなとワクワクしました。遊君の使っているSTAR Walnutの24″キックの音もすごく良いなと思います。タイトな音で、ローもしっかり出ているのを見て、大きめのサイズを今後試してみるのもありだなと思いましたね。

自分の気に入っている機材は、メイン・スネアのSTARPHONIC Mapleです。ヌケもレスポンスも良く、センシティヴな音も出るので、すべてを両立できるアイテムとしてお勧めです。

TAMAのサポートなくしては僕の活動もないなと常日頃から思っているので、今後は逆に、自分がいないとTAMAが成り立たないと思ってもらえるように、お互いがギブ・アンド・テイクの関係でいられたら良いなと思っています。

僕が生まれる前から続いているTAMAというブランドには
これからもずっと“当たり前”でいてほしい


勢喜 遊:イベント出演のオファーをいただいたときは、並びがFUYUさんと千昇さんということで……正直、すごくやりにくいなと思いました(笑)。でも、こういうソロ・パフォーマンスはいつかやってみたいなと思っていたんです。今回はせっかくの機会ということで、自分1人で作った曲を演奏しました。ソロでやりたいことをとりあえず詰め込んだアプローチになっていたと思います。

イベントで使用したメイン・スネアは、TAMAさんに「13″×3″のものがあったらうれしいです」とリクエストして、「4″ならあります」ということで用意してもらったMetalworksです。叩いてみたらイメージにバッチリ合う音色で、さすがだなと思いました。あとポイントになったアイテムは、シングル・ヘッドの6”ミニ・ティンバレス・スネアですね。最近、小口径スネアを使っているドラマーをよく見かけるので、それに乗っかってみました。今日はトリガーをかけているんですけど、そのシステムも今回のためだけに用意したんです。Ableton Liveで出力して、SPDのコントローラーを使っています。

TAMAとのエンドースのきっかけになった最初のドラム・セットは、今回使っているSTAR Walnutでした。あれからもう6年くらい経っているなんて、早いですね。僕が生まれる前から続いているTAMAというブランドは、僕にとって当たり前のようにある存在です。これからもずっと“当たり前”でいてほしいなと思います。

ずっと家族のように接してくれていたチーム
TAMAさんの壮大なヒストリーの中に入れることは本当に光栄

FUYU:
TAMAは自分が小さい頃から身近な存在で、初めて自分のお金で買ったドラム・セットもTAMA製品でした。50周年イベントへの出演のお話をいただいたときは驚きもありましたし、(松浦)千昇君とも(勢喜)遊君とも仲が良いので、ワクワクもするし、いい意味でプレッシャーも感じました。3人とも好きな音楽は似ているんですけど、スタイルはまったく違うので、客観的にもすごくバランスが良いですよね。2人共、シンバルを含めてドラムのセットアップが斬新で、ドームやスタジアムを背負っているスケールの大きい音に、ものすごく刺激を受けました。

本番のステージでは、TAMAアーティストの仲間に入れていただいた、自然体の自分をそのままパフォーマンスで表現できればいいなと思っていて。おこがましいけど、それが自分のできるTAMAに向けての恩返しだというスタンスで臨みました。

あらためて、50周年おめでとうございます。TAMAのファミリーになって16年目になりますが、これまでさまざまなステージに立たせていただきました。ずっと家族のように接してくれていたチームなので、TAMAさんの壮大なヒストリーの中に入れることは本当に光栄だと思っております。これからも50周年と言わず、100年、1000年、1万年ぐらいまで続いてくれることを願っています!

■LIVE GEAR

高いテクニックを武器に、マルチなアプローチを展開した松浦千昇は、TAMA STAR Mapleでパフォーマンス。1バス、1タム、1フロア・タムという構成に、奏者正面に2台のスネアを並べた変則セッティング。こだわりのポイントは、打面にエヴァンスのEMADを張り、リング・ミュートもかけてバス・ドラムに近いサウンドに調整した18″フロア・タム。「手(スティック)で叩いて鳴らすバス・ドラム風のサウンドと、実際のキックの音色との違いを楽しんでもらいたい」というねらいの下、より音に差異をつけるため、バス・ドラムにはクリア・ヘッドを採用。メイン・スネアはSTARPHONIC Maple(14″×6″)で、サイド・スネアはキットと同じSTAR Maple(14″×6.5″)。フット・ペダルはTAMA Iron Cobraで、ビーターはフェルトをセレクト。

アイディアに富んだサウンド&アプローチで独自の世界観を演出した勢喜 遊[King Gnu、MILLENNIUM PARADE]の使用キットはTAMA STAR Walnut。24″バス・ドラム+18″フロア・タムを軸とした独創的なノータム・セッティングで、ジルジャンやセイビアン、パイステなどの多彩なシンバル8点を斬新な並びで組み込み、さらにスネア・ドラム奥の位置にRoland SPD-SX PROをセット。メイン・スネアは、勢喜のリクエストに近づけて用意された、Metalworksシリーズのスティール・モデル(ST1340BN/13″×4″)。サイド・スネアには、以前から試したかったという深胴のSTAR Reserve Maple/Bubinga(15″×8″)をセレクトし、フェルトで打面の一部をミュート。小口径スネアのトレンドに便乗して取り入れたという、Metalworksの6″ミニ・ティンバレス・スネアもお気に入りの様子だった。それぞれのスネアにRolandのトリガーをセットし、足元にもキック・トリガー=KT-10を配置。

ゴスペル・チョップスを交えたグルーヴィーかつ爆発力のあるパフォーマンスで、2日目のステージのラストを飾ったFUYU。彼がステージの相棒に選んだのは、絶大な信頼を寄せるTAMA Starclassic Bubinga Elite。1バス、3タム、2フロア・タムというキット構成で、9点のマイネル・シンバルがタイコに沿うようにして並び、低めの位置でほぼ水平にセットされているのが印象的。ダーク・ブラウンのシェルにゴールド・フィニッシュのパーツが美しく映える。シーケンスが走る環境の中でもヌケが良くなるようチューニングも徹底しているそうだ。スネア・ドラムは、メインが深さ4″のTAMA Starclassic Mapleで、サイドはロー・ピッチ仕様にチューニングされたS.L.P.シリーズのG-Maple(14″×6″)という組み合わせ。フット・ペダルはTAMAのIron Cobraのツイン・ペダル。

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