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世界最高水準の防音を誇るMUSICÁ SAKURADAI(ムジカサクラダイ)

  • Photo:Takashi Yashima
  • Interview & Text:Shinichi Takeuchi

自宅に自分の楽器を置いて1日中演奏したい……ドラマー、パーカッショニストであれば、一度はそんなことを考えたことがあるだろう。しかし、日本の住宅事情ではなかなかままならないのが現状。しかたなく、連日リハーサル・スタジオに通ったり、さまざまな工夫を凝らしながら練習に取り組んでいる人も多いことだろう。そんな悩みを抱えるドラマー達に朗報。都内に完全防音を謳うマンションが完成したのだ。とはいえ、本当に自室でドラムが演奏できるのだろうか。真偽のほど確かめるべく、完成したばかりの“MUSICÁ SAKURADAI(ムジカサクラダイ)”を訪ねた。

MUSICÁ SAKURADAIの防音/防振性能をチェック!〜隣部屋編〜

遮音性にこだわったD-100タイプ

東京都練馬区にあるMUSICÁ SAKURADAIは、西武池袋線桜台駅から徒歩5分、西武有楽町線、都営大江戸線練馬駅から徒歩7分、西武有楽町線新桜台駅からは徒歩11分のロケーションにあり、アクセスは良好。閑静な住宅街にひっそりと佇んでいる。静かな環境で、商店街なども近く、生活には便利そうだが、そんな住宅街で本当にドラムが叩けるのだろうかと、あらためて心配になってしまう。

コンクリートの打ちっ放し状態の外観は、モダンでスタイリッシュだが、かといって目立つわけでもなく周囲とうまく調和している印象。細長いエントランス・アプローチの入り口にはさりげなくエンブレムがあつらえられている。よく見るとドラマーをデザインしているようで、なかなかオシャレだ。

エントランスを入ると、何やら音楽が聴こえてくる。どうやら共用スペースにはジャズがBGMとして流れているようで、このマンションのコンセプト通り、まさに“音の隠れ家”といったところ。すると、MUSICÁ SAKURADAIのオーナーであり、この建物を設計した建築家の佐野 勤氏と、主にデザインを担当したという池上知見氏が出迎えてくれた。

「部屋の防音に関しては、世界最高水準を自負しています」と佐野氏は、開口一番に断言。ドラマーとしてジャズに親しむという氏は、“音楽を愉しむ場を追求”しており、防音性能に優れた空間をプロデュースすることが長年の夢だったのだそう。外壁のコンクリートは20cmの厚さを持ち、それと内側の壁は絶縁された状態にするなどの工法的な遮音の工夫を施し、ドラム演奏も可能な“D-100”タイプの部屋では遮音性能目標値100db、ピアノや木管楽器などの演奏ができる“D-80タイプ”では遮音性能目標値80dbを実現。これにより24時間の楽器演奏が可能になったのだという。「プロユースの録音スタジオでも遮音性能の目標値が70dbなんです。このマンションは性能的にはそれよりも遥かに優れています」と佐野氏は胸を張る。

D-100タイプの部屋①(防音ルーム)

さっそくD-100タイプの101号室を見学させてもらった。玄関を入るとキッチン・スペースなのだが、玄関部分に段差がないのが特徴的。「ホテルのように供用廊下から室内まで同じカーペットで仕上げて段差もなくしました。そうすることで部屋を広く感じる効果があるんですよ」(佐野氏)とのことだが、これならば楽器の搬入/搬出も楽に行えるだろう。キッチンにはIHコンロ、バス・トイレも広く、洗濯機の設置スペースも確保され、生活面でも快適に暮らせそうだ。

防音ルームに入ると、道路側に窓があり、そこから陽光が差し込んでいる。「窓があることで防音性は若干落ちるんですよ」と佐野氏は苦笑いしていたが、室内は明るく、生活空間でもあることを考えれば、やはり明るく快適であることはうれしい。D-100タイプでは窓は三重サッシで、外づけのロール・ブラインドと、室内に設置されたカーテンを使えば、さらなる防音効果が得られるのだそう。「カーテンには吸音効果があり、残響時間を加減できるんです。ドラマーの中でもジャンルや好みによって求める音の響きは異なるので、それを自分好みに調整することができます」(佐野氏)。取材時には未処理だったが、今後、窓に特殊フィルムを貼付予定で、それによりさらに遮音効果が期待できるのだという。

D-100タイプの部屋②(キッチン・スペース、etc.)

さらにすごいのは室内に常設された換気設備。何とほとんど運転音がしない。低騒音換気ファンとダクトサイレンサーによって劇場並みの静音性を実現したという。「スタジオなどで、換気設備がうるさくて、練習に集中できないことってありませんか? 私自身、それが嫌なので、換気設備の消音にもこだわりました」(佐野氏)。集合住宅では、他の部屋の音がダクトを伝って聞こえてきてしまうことがあるが、それもダクトサイレンサーのおかげでカットされているそうだ。部屋は四角形ではなく、スタジオのように壁の一面が斜めになっているが、これも遮音性を考えた設計。

また、演奏中に気づくように、インターフォンが押されると室内のランプが点滅する仕組みになっているのもうれしい心遣いだ。そして気になったのは収納スペース。クローゼットの類はないのだが、これも敢えてそうしているらしい。室内には遮音用にカーテンが壁から数十cmの距離で吊るされており、その空間を収納スペースとして利用可能。カーテンが和室でいうところの押し入れのふすま代わりといったところか。収納として使わずカーテンを開けておけば、部屋の一部として空間を広く使うことも可能だ。また壁にはフックが取りつけられるようになっており、棚やハンガー・パイプなどを好きな高さに設置することもできる。

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