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    【Report】“世界一音数の多い場所”で新年の幕開けを告げた千里ちゃん祭り〜最終日「川口千里トリプルドラム」〜(d:川口千里/坂東 慧/今井義頼)

    • 撮影:梛野浩昭(ライヴ)

    豪華4Daysの締めくくりは
    “ぶっ叩きまくり”の
    トリプル・ドラム・セッション!

    1月8日の川口千里の誕生日に合わせ、毎年恒例となっている目黒ブルースアレイジャパンでの『千里ちゃん祭り』。今年はCDデビュー10周年という節目にも重なり、『スペシャル4days』と題して4日間に渡り各日異なったコンセプトでハイレベルなパフォーマンスを繰り広げた。ここでは最終日となった4日目、坂東 慧と今井義頼を招いてのトリプル・ドラム・セッションをレポート! ドラマー3人のみによる超マニアックかつ超情熱的な一夜の模様をお届けしよう。

    ステージには豪華で特別な夜を演出しているかのように、赤、緑(黄)、青という鮮やかな多点セットが並ぶ壮観な光景。開演前からすでに期待感や高揚感が十分高まった様子がひしひしと伝わる会場に3人が入場すると、最早クライマックスのように観客が沸き、歓迎していた。そんな中各々スタンバイにつくと、1曲目に演奏されたのは「Real Life」。

    王道なフュージョン・ナンバーで、ギターやベース・ソロ、3人でのキメもしっかり聴かせつつ、あいさつ代わりと言わんばかりに乱打の応酬。この日はすべての楽曲においてトリプル・ドラム用にオケを編集し直し、3人のソロ回しなどを追加したスペシャル構成。そのソロ回しとなると、川口は4日目ということもあってか抜群のコンディションのようで、いつも以上に楽しそうに、奔放に、超絶技巧ながら拍には収まっているという、通常運転とも言える離れ業を繰り出す。

    一方、メタルやロックの要素も感じられる今井のパワフルなドラミングは3人の中でも随一の音圧&音量。マイキングはされているが、演者との距離の近さもあってか生音も十分感じられる音量感は特筆もの。カシオペアの先輩ドラマー、神保 彰を彷彿とさせる縦に積み上げたようなセッティングを駆使し、ダイナミックな“魅せるドラム”でスピード感溢れるフレーズを次々と展開していた。

    今井義頼

    3人の中で1番の先輩となる坂東は、とにかく無駄がなく、軸のブレない綺麗なフォーム。そしてその叩き姿からは想像もできないほどのスピードと手数を繰り出す。中でも、スネア→8″タム→14″フロア→シンバルを超高速で回す、流れるようなフレーズはインパクト抜群で、この日はある種のリフとして決めていたのか、ここぞという場面で必ず入れ込んでいたのが印象的だった。

    坂東 慧

    もともとは故リッキー・ローソンとのツイン・ドラムを想定して作曲した「Real Life」だったが夢叶わず、しかし、この日トリプル・ドラムでのライヴ演奏が実現し、川口は1曲目から感慨深げな様子だった。トークが始まると各々のセットについて話が止まらなくなり、ドラム・クリニックの様相を帯びる展開に。今日のセッティングのこだわり、以前開催したジルジャン縛りの“利きシンバル”の話、今井と坂東が乱発していた手足の同時オルタネート打ちについて川口がツッコむなどなど、この日を心待ちにした3人の心境がわかるような朗らかなやり取りであった。

    そんな会話が嘘のように、再び超絶技巧のオンパレードとなった2&3曲目は川口と坂東、川口と今井によるセッション。坂東との曲は両者に縁のあるフィリップ・セスがアレンジを手がけた「Wupatki」。今井とのセッションは川口の2nd作『Buena Vista』からあまりの難易度にライヴでは避けていたという「Young Hawk」。この日の選曲はすべて「変拍子がすごすぎて」、「難易度が高すぎて」という冠言葉がついていたような気がするが、そんな前口上など微塵も感じさせない、圧倒的なテクニックを前に、ただただ拍手をするしかなかった。

    Next▶︎後半戦は“ドラム・オンリー”でさらに濃密な空間に