PLAYER
UP
吉澤 響[セカイイチ]20周年の“最高傑作”に込めた想いと活動休止のその先 【Interview】
- 取材&文:編集部 撮影:ハヤシマコ(Live)
セカイイチは
“あぁ、人が演奏しているなぁ”
と素直に思わせてくれる
3月29日、セカイイチが活動休止前ラストとなるミニ・アルバム『Where we are』をリリース。2016年に『Round Table』で大きく舵を切ったソウル/ファンクを取り入れた楽曲から、シティ・ポップ/AORを意識したようなナンバーなど、個性に富んだ5曲は、どれもバンドの集大成を感じる揺るぎないグルーヴとメッセージを感じる。ドラムの吉澤は今作について、そしてバンドの20年をどのように見たのか。たっぷりと話を聞いた。
僕にとってセカイイチは
やはり“帰る場所”です
●結成20周年おめでとうございます! それと共に、活動休止の発表に寂しい思いはありますが、吉澤さんはセカイイチとしてこの20年を振り返ってみて、いかがですか?
吉澤 ありがとうございます! おかげさまで20年続けることができました。振り返ると20年はあっという間でしたね。不思議なもので、自分達で作ってきたセカイイチというバンドなのに、バンドに育てられたような感覚もあって、“ただドラムを叩いている”だけではない、なかなか得がたい経験をさせてもらったと思っています。
●バンドの公式サイトで発表されたコメントでは“いつか「セカイイチをまたやりたい」と思ったときに、みんなで集まれるようにしておくことはとても重要”とおっしゃっていましたが、吉澤さんにとってセカイイチとは?
吉澤 僕にとってセカイイチはやはり“帰る場所”です。ホームという意味合いもありますが、それとはまた違う側面もあって。でも大切な拠りどころであることは確かです。
●20年間でのドラミングの変化はどのように感じていますか?
吉澤 20年で一番変わったのは、手数が減ったことでしょうか。いろいろなものが削がれて、叩く内容がとてもシンプルになったと思います。変わっていないのは“歌が立つようなドラムを叩きたい”と常に考えているというところですかね。
大きなターニングポイントの1つとなったのは、2006年に初めてサポートさせてもらったHARRYさん(THE STREET SLIDERS)の現場です。HARRYさんには、それまで僕の中で曖昧だったリズムの概念を明確にしていただいて、そのおかげでビート自体の重要性と自分のビートがどういうものであるか再確認できました。
技術的に“うまい/下手”
というものさしとは
また違うものさしで勝負できる
●サポートといえば、近年はあいみょんや中村一義、ラブリーサマーちゃんなど、多彩なヴォーカリストのサポートも務めていますね。セカイイチとサポートの現場、双方向で自分のドラミングに影響を与え合っているなと感じる部分はありますか?
吉澤 バンドでメジャー・デビューさせてもらって、そのバンド・メンバーとして活動しながらいろんなアーティストのサポートでもドラムを叩くことができて本当にありがたいですよね……。僕がサポートする現場は、指定された楽曲をただ叩く、というよりは、楽曲アレンジから関わることが多いので、セカイイチであるかサポートであるかは関係なく、その楽曲にどう役に立つか、ということに向き合うことが多いように思います。
特に5年くらい前にツアーを回ったあいみょんの現場では、アコギ&ヴォーカルのあいみょんとドラムの2人編成で、すでにリリースされている楽曲もふたりで演奏できるようにアレンジしつつ、曲の良さも引き出そうと、2人で頭を捻ってアレンジしたので、いい経験になっています。
長年携わっているラブリーサマーちゃんは、楽曲のジャンル感、文化感をとても大切にしているアーティストなので、ドラムのフレージングにおいて、それが伝わるような、その枠に悪い意味ではみ出さないようなアレンジを心がけています。それはセカイイチの楽曲アレンジのときにも意識しているので、セカイイチとサポート現場が良い影響を与え合っているなと実感しています。
●ちなみに『and 10』リリース時のインタビュー(本誌2013年4月号)では、“サポートを通じて思うセカイイチの魅力”について、「うちは、出してくるフレーズも音も全員キャラ立ちしているのが魅力ですね。語弊をおそれず言えば“みんな好き勝手やってるなー”とか思います(笑)。もちろんバンドだから、全員が“等身大の自分”をぶつけている……それが良いところなんですけど」とお答えいただきました。
吉澤 セカイイチの魅力は、技術的に“うまい/下手”というものさしとは、また違ったものさしで勝負できるところだなと最近あらためて思っています。演奏のうまいミュージシャンともたくさんご一緒しましたが、その方々が持っている魅力とはまた違った魅力というか……、“あぁ、人が演奏しているなぁ”と素直に思わせてくれて、今でもライヴ中にグッときたりしています。
次ページ▶︎『Where we are』制作と“最高の作品になった手応え”