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【Interview】リアド偉武[Alexandros]『But wait. Cats?』リリース・インタビュー
- Interview:Atsuki Sano Text:Rhythm & Drums Magazine Photo:Yuki Kawamoto
「Baby’s Alright」はタイコで歌を歌いました
●それでは各楽曲についても詳しくお聞きしていきます。「Aleatoric」でギターに絡むタム→クラッシュ&スネアで一気に惹きつけられた後、その勢いを引き継いだようなイントロで始まる「Baby’s Alright」のメロでは、敢えて“隙間”を感じさせるようなビート、そしてサビでは流れるようなフレーズを持ってきた対比が素晴らしいと思いました。
リアド ありがとうございます。この2曲のドラムは自分でも特にお気に入りです。これはアルバムを通してですが、メロディを“支える”のではなく“寄り添う”イメージを大切にしました。「Baby’s Alright」は、最初もっと音数が多いところからスタートしましたが、引き算をしてコントラストをつけたらもっと面白くなるかなと。最後のサビ、ドラムとヴォーカルだけのところはタイコで歌を歌いました。こうしたアイディアはヴォーカルの(川上)洋平が思いつくことが多いです。彼のヒントをもとにアレンジを作っては壊し、また作っては壊し。そんな感じで作り上げていくことが多いです。
●続く「閃光」も基本は疾走感があるプレイですが、Bメロ→サビや間奏→Aメロのつなぎでは良い意味で“ブレーキがかかったような”フィルが楽しいです。今作はこういった“緩急”にかなりこだわって作られているように感じますが、いかがでしょうか。
リアド そこは[Alexandros]の真骨頂と言いますか、このバンドが大事にしているところだと思います。一辺倒に淡々と進むのではなく、引っ掛かりとかフックをしっかりとつけることで面白さが増していくというか。REC時はクリックを聴きながら録りましたが、ライヴで演奏するときはクリックを使わずにその辺りをもっとコントロールしています。
●「どーでもいいから」は序盤はサンプリングのループが徐々に重なり終盤でドラムイン、また、9曲目「we are still kids & stray cats」は打ち込みのようですが、こういった楽曲のリズム構築もなさっていますか?
リアド この2曲、どちらもレコーディング・スタジオでアレンジを行いました。どちらも打ち込みではなく、パッドを叩いて肉体的にリズムを作っています。「どーでもいいから」に関して、この曲はゲイブ・ワックスというアメリカ人のプロデューサーとアレンジを進めていきました。彼のアイディアでRolandのTM-2にギター・エフェクターのBOSS DB-5をかましてエグめの音を作りました。何にも囚われずに自由にいろいろなアイディアを出してくれるゲイブとの制作は本当に面白かったです。
「we are still kids & stray cats」はこのアルバムの一番最後に録った曲でした。実はレコーディングに入ったとき、まだサビのメロディしかない状態でしたが、そこに対してまずはエレドラでキックを4つで踏んで、ハットの音色を選びながら良い感じのところに叩いて。スタジオでとんとん拍子に作って、気づいたら1日でリズム以外も含む曲のアレンジをほぼ完成させました。このときにあらためてこのバンドの魅力というか、ポテンシャルの高さをビシビシと体感しました。
●「日々、織々」は、絶妙なハネ感と、ロー・ピッチのスネアがなんとも言えないウェット&ウォームな音色が楽曲のムードを作っているように思います。
リアド アルバムの中でこの曲だけ生楽器を使わずに打ち込みでドラムを作りました。作り方としては自宅でエレドラを叩いて、それをPC上で整理して作り上げていく感じです。スネアもいろいろとレイヤーして音を作りました。リズムの点では、まさに絶妙なハネ感を探しながらたくさんパターンを試したのを覚えています。心地良いサウンドと言ってもらえてうれしいです! いつも曲に対してオープンに、良い音は何かを探しているので自分でそんなに意識はしてないところですが、ドラマガの連載でBOBOさんがおっしゃっていたように、個性は滲み出てしまうものなんですね。
●ハネたリズムを引き継ぎつつ、より爽やかな楽曲「空と青」では、歌とピアノを引き立てる、バッキングに徹したプレイですね。続く「Rock The World」では、ドラムが打って変わって間を埋めていくような手数の多いプレイですが、歌を邪魔したりせず、より引き立てているように思います。
リアド 「空と青」はおっしゃる通りシンプルですね。シンプルなリズムであるほど、どこにポイントを置くのか、何をイメージして叩くのかが大事なんだなとあらためて教えてくれた曲です。
「Rock The World」は確かにこれでもか、というくらい音数が入っていますが、バンドで演奏しているときはあまり忙しい感じはなく、不思議とゆったりした曲に思えるときがあります。それはベースだったり歌が作り出してる部分が大きいと思います。最近大事だなと感じることが、どれだけ歌や他の楽器を歌いながら叩けるかという点です。自分が鳴らしている音以外のところをどれだけ他のメンバーとリンクできるか。言葉にするのは難しいですが、そこがすごく大事だなと思っています。
●「クラッシュ」は歪んだギターとヴォーカルのそれぞれにドラムが絡んでいくような場面があり、一曲の中で緊張と緩和を、最も感じる楽曲でした。こういった他楽器との絡みにおいて、音量バランスや手数など、気をつけていることはありますか?
リアド この曲は特にリフとの絡みを意識して作ったのでそこを感じてもらえてうれしいです。音量バランスとしては、基本的にタイコを最大限鳴らしたいというのは常にあります。そのMAXの状態から引き算で調整していく感じです。急遽ドラムのソロを途中で入れることになり、それを含めて展開的にも曲に強いコントラストができて面白い仕上がりになったと思います。
●それでは最後に、初のアルバム制作を通して考える、今後の[Alexandros]としてのヴィジョンがあれば教えてください。
リアド スタジオでメンバーだけで鳴らした音が種となって出来上がったこのアルバム。とても自信を持っています。これからも唯一無二のロック・バンドであることを証明し続けたいです。その中で、俺にしか叩けないドラムを叩きたいと思っています。
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