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    【Interview】リアド偉武[Alexandros]『But wait. Cats?』リリース・インタビュー

    • Interview:Atsuki Sano Text:Rhythm & Drums Magazine Photo:Yuki Kawamoto

    スタジオで鳴らした音が種となって
    出来上がったアルバム
    これからも唯一無二のロック・バンドの中で
    俺にしか叩けないドラムを叩いていきたい

    今年7月、[Alexandros]が新作『But wait. Cats?』を完成。サポートから正式加入し初のアルバム参加となるリアド偉武は、マシンガンのような攻めのドラミングから、空白を意識した引きのプレイまで、緩急自在に楽曲を彩っている。現在アルバムを提げたツアー真っ最中のリアドに、今作のドラミングについて話を聞いた。

    サポートのときから
    勝手にメンバーだと思っていました
    遠慮することなく
    自分が持ってるものすべてを捧げようと

    ●リアドさんが正式加入してから初のアルバムとなるわけですが、サポートからメンバーへ、その活動形態の変化でご自身の意識やプレイへの影響は何かありましたか?

    リアド サポートで叩いていたときから、勝手にバンドのメンバーだと思ってステージに上がっていました。遠慮することなく、自分が持ってるものすべてを捧げようと。バンドの看板を背負った今も変わらずその気持ちを持って叩いています。自分の色を加えて、さらにバンドをデカくしたいと思っています。

    ●前任の庄村さんは、まさに強烈な個性を持ったドラマーだったと思いますが、リアドさんの中でどのように咀嚼し、どのような方針でいこうと思いましたか?

    リアド もともと前から彼のことは知っていましたし、対バンも何度もやって、いつも袖から彼の演奏を見ていて……彼のドラムが大好きでした。自分とは違うものをたくさん持っていることをその頃から知っていたし、それなら自分はもっとこうしようとか、刺激を受けたのも覚えています。お互いのドラミングについてたくさん話したりもしました。実際に彼が叩いていた曲を演奏するのはもちろん簡単なことではありませんが、そんな難しいミッションをやれる立場にあるだけでもラッキーだとも思っています。彼のドラムは彼にしか叩けないけど、俺のドラムは俺にしか叩けない。そんなふうに自分の中では考えています。

    ●そんなリアドさんの、ブレない芯のようなものは、一体何なのでしょうか?

    リアド 基本的には“タイコを良い音で鳴らしたい”と考えているところかもしれません。もう1つは、“何をやるかではなく、どうやるかが大事だ”というところです。それらについて、逆にもっと自分を変えたい、良くしたい、と考えているところも自分の中に常にあります。

    ●サポート期に、コロナ禍のステイ・ホーム状態でリリースされたコンセプト・アルバム『Bedroom Joule』は、主にデータのやり取りで制作されたとは思うのですが、苦労された点は?

    リアド ZOOMでメンバーとコミニュケーションを取るのは、いつもより手間取った部分もあります。でもPCを使ってリズムや曲のアレンジをするのは好きだったので、割り切って楽しみながら参加させてもらいました。aDrumsやV-Drums、パーカッションなどをマイクで録って加工したり、リズム以外の部分をアレンジしたり。この作品の制作に没頭していた時間は、コロナ禍でモヤモヤした世界を照らしてくれました。

    ●それでは今作『But wait. Cats?』はどのように制作を進めていきましたか?

    リアド 『Bedroom〜』とは違い、デモ作りにPCを一切使わないというスタイルで、メンバー4人だけでスタジオに入って、楽器を鳴らして作ったアルバムです。自分の中から何が出せるか、メンバーの音にどう反応できるのか。その瞬間に生まれた音をiPhoneのボイスメモで録って、それを聴いてまたみんなで合わせて。ただただ夢中になって、自分達が本当にカッコいいと思うものを追い求めました。

    ●今作は、何よりドラムと他楽器の絡ませ方や、リズムの緩急に重点を置いたフレージングを、非常に丁寧に考えられているように感じました。

    リアド そのように感じてくれたことが素直にうれしいです。“合っていないようで合ってる”というのが共通したテーマの1つだったかもしれません。すごく細かい部分で何十通りもパターンを作ったり、必要以上にこだわった部分もたくさんあります。結局のところカッコいいロック・バンドは、それぞれのメンバーが放つ音がバチバチにぶつかり合って、いびつで美しい形を作っているものだと思います。音数(楽器数)が少ない分、自分がどのように他の楽器やメロディにアプローチできるか。レコーディングの瞬間まで魂を込めました。録音もみんなで一発録りでやった曲も多く、バンド感をうまく音源にパッケージできたと思います。

    次ページより、各楽曲のドラミングを深掘り!