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Archive Interview 茂木欣一[フィッシュマンズ]⑤ 〜1997年8月号〜

ミュージシャンズ・ミュージシャンとして、レゲエ/ダブを基調としたそのハイブリッド・サウンドが高く評価されるフィッシュマンズ。彼らの新作『宇宙 日本 世田谷』がリリースされる。『空中キャンプ』、「LONG SEASON」の成功を受け、彼らはどう出るのか? 新作について、 そしてフィッシュマンズのドラマーとしての在り方について茂木が語ったことは……。

世田谷を感じさせる音に
……って嘘ですけど(笑)

宇宙 日本 世田谷』(97年発表)

●昨年リリースした『空中キャンプ』は、これまで以上に高い評価を受ける作品となりましたが。

茂木 評価が高いっていうのは雑誌とかを続んでわかったけど(笑)。あのアルバムは、自分達で作っていてすごく達成感のあるものだったし、なんといってもワイキキ・ビーチ(註:インタビューが行われたフィッシュマンズのプライベート・スタジオ)の環境もよかったんだよー。ここにいるとね……無駄に時間が過ぎていく感じがあって、心がすごくピュアになれる。そういうことがすべて、音に出るんだなってすごく感じました。

●その作品のあとに、35分16秒という長さの1曲だけを収縁した「LONG SEASON」を発表したわけですが、なぜああいった作品を出すことに?

茂木 『空中キャンプ』の録音が終わった頃から、佐藤(伸治/g、vo)君から長い曲をやりたいっていう話があったんですよ。

●バンド全体が楽曲を作り込んでいくことに意識が向かったのかとも思ったんですが……。

茂木 リハも2回くらいしかやってないし、すべて自然でしたけどね。僕達ってもともと1番があって2番があるっていう曲作りじゃないから。作為的ではなく無垢な感じで、飽きないような感じ。自然発生的なものであり、かつ印象的なものというか……僕らはそういうセンスをずっと磨いてきたんだけど、それが『空中キャンプ』で花開いて、「LONG SEASON」に持ってこれたと思うんですよ。そういう意味では、フィッシュマンズというバンドについては「LONG SEASON」の方がわかりやすいかもしれない。

●新作の制作には、「LONG SEASON」完成後すぐに入ったんですか?

木 昨年末のライヴが終わってからですね。曲は今年の1〜2月でだいたい出てきたんですけど、実際のレコーディングは3〜4月で、5月にTD。でも僕自身は、どんな録り方をすることになってもいいように1月くらいからここに来て、今までの反省点を考えながら、個人練習してました。

●反省点と言いますと?

茂木 いろいろとね、あるんですわ(笑)。例えば、「LONG SEASON」からはシーケンスを流しながら演奏しているんで、シーケンスに対してより自由にいれたらいいなと思って。ドンカマに対してどうあるかとか。あとはハード(機材)の部分。『空中キャンプ』からはMIDIドラムを使っているので、パッドの感度がどうとか、そのあたりの準備をしてましたね。

●新作についての具体的な話し合いは?

茂木 佐藤君のデモ・テープにあるムードをなるべく生かそうっていう話くらい。楽曲はもう佐藤君次第というか、彼から出てきた楽曲がまずあって、それに対して取り組む。それを最高の形で表現しようっていうのかいつものやり方だから。

●ます佐藤さんの楽曲ありきという形で、すべてか始まると?

茂木 そうですね、コンセプトとかも別に立てないし、その年のフィッシュマンズって感じかなぁ。今年は97年だから……97年のフィッシュマンズ!ということで(笑)。

●で、タイトルが『宇宙 日本 世田谷』……。

茂木 世田谷を感じるサウンドに……って嘘ですけど(笑)。広いようで挟いようなタイトルですよね。今回の名づけ親はエンジニアのZAK。彼が佐藤君との何気ない会話の中で『宇宙 日本 世田谷』って言ったらしいんですね。ギャグのつもりが、のちのちマジで使われてたという(笑)。

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