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Archive Interview 茂木欣一[フィッシュマンズ]① 〜1992年12月号〜

まとまるよりはムチャでいこうって決めてまして(笑)

●今回のアルバム(『King Master George』)はレゲエっぽい要素が強いけど、そういうのは以前にやっていたことはあるの?

茂木 全然ないです(笑)。ヴォーカルの人に出会うまでは、レゲエっていう音楽自体を知らなかったし、ボブ・マーレイとかも。だから大学に入ってからですね。大学に入ってからはもう、ウェイラーズはすごい聴きました。他は知らないんですけど、ウェイラーズに関してはことごとく聴きましたね。ネタをパクったりしました。

●フィッシュマンズは何でもありみたいなところがあるよね。無節操に何でも取り入れるという。

茂木 まぁ僕個人としてはそうですね。最終的に彼の歌が彼らしく聴こえれば、バックが無節操であっても、それでいいんじゃないかと。

●遊びの部分がすごく感じられたけど。

茂木 (笑)。すごい重要な要素ですね。真面目に取り組んで真面目に音を出すっていうことには興味ないんですよ。思わず笑ってしまうような、これ見よがしの笑いじゃないユーモアはすごく重要だと思ってるんです。

●コルネットのソロなんか、すごく雰囲気出てて笑ってしまったんだけど。

茂木 あれはもう、ド下手ですよね(笑)。僕は高校のとき、吹奏楽部でトランペットやってたんで、冗談じゃないって感じなんだけど、でもあの味には勝てないなっていうのはありますね(笑)。

●1作目(『Chappie, Don’t Cry』)の教訓みたいなものは生かされたと思う?

茂木 ありますね、それなりには。楽曲面で言えば、ファーストは理路整然としたのに対して、今回はCDなりの聴き方ができるような配列、例えば2分ちょっとで終わる曲だとか、1番2番を無視したような感じの曲を入れたり、楽曲面ではそういう工夫がありますね。あと演奏に関しては、今回は全部ドンカマに合わせたんですよ。個人的には最初は抵抗があったんですけど、使っていくうちにまぁ聴く分にはいいかなと。それに無責任になれるし(笑)。ドンカマをこっちがそれなりに支配していれば、聴いたときに違和感があっても、実はドンカマがこうだからOK、みたいな感じになれるから。

●何でドンカマを使うってことになったの?

茂木 いや、それはプロデューサー(窪田晴男)の一言で(笑)。ドンカマを入れて聴き手に届けるっていうのが、窪田さんのやり方みたいですね。あと、演奏面で1枚目と違うというのは、1枚目はわりとリズムだけで聴かせるというか、ライヴに近いままでいってたんですけど、2枚目はそういう固まった部分はそのままで、その上で華の部分が欲しいなということころで、今回は聴いていただくと、鍵盤とかを非常にアレンジしきってるなというのが、おわかりいただけると思うんですが(笑)。そういう部分は意識しましたね。もう少し華が必要だな、というのは感じてて。

●あと15曲目に曲目紹介を入れてるのはどういう……。

茂木 たいした理由はないんですけど、僕個人としては、フィル・スペクターを意識したっていう(笑)。フィル・スペクターのクリスマス・アルバムみたいな(笑)。最後に窪田さんの声が入ってるんですよ。これは窪田さんが最初に、クレジットを声で入れちゃったらどうだ、みたいな話があって。じゃあ窪田さんの声でいっちゃいましょうっていう感じで。今回はわりとそういう思いつきをすぐに実行した部分が多いんです。

●音の感触は違うけど、方法論としては、ユニコーンあたりに通ずるものがあるような気がしたんだけど。

茂木 それはあると思いますね。意識はしてないんでしょうけど。

●いろんな要素を入れちゃうと、まとまりがなくなってしまうという弊害が出てくると思うんだけど

茂木 そのへんはアルバム作る前に、まとまるよりはムチャでいこうって決めてまして(笑)。だから聴き手がどう捉えるかっていうのはわからないですけど、そういう考えがあったんで、自分達としては納得しちゃってるというか。

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