UP
“ロザーナ・シャッフル”を検証 Vol.03〜ハーフタイム・シャッフルの名演〜
- #アッシュ・ソーン
- #アレックス・リーヴス
- #クリス・デイヴ
- #ジェフ・ポーカロ
- #ジョン・ボーナム
- #ジョン・マックガー
- #スティーヴ・ガッド
- #デリック・マッケンジー
- #バーナード・パーディ
- #ハーフタイム・シャッフル
- Text:Yusuke Nagano/Rhythm & Drums Magazine
⑥「Pretty Wings」/マックスウェル
Drums:クリス・デイヴ
現在最高峰のドラマーであるクリス・ディヴもハーフタイム・シャッフルの使い手。その代表的な名演が2009年にリリースされたマックスウェルの『“ブラック”サマーズナイト』収録の「Pretty Wings」。派手なプレイを封印し、確かな脈動が感じられる重心の低いグルーヴが抜群に心地良い。サイズが大きいと思われるピッチが低いハイハットの刻みは、サウンドに溶け込みつつ強い推進力を加えている。柔軟かつ質感の高いキックの表現力も印象的で、シンプルな場面でも存在感を発揮。サビで繰り出す4連打の滑らかなタッチにも舌を巻く。後半部は、ハイハットとスネアのゴーストの絡みを増やし、抑制の効いた音量の中で感情を高めていくアプローチが素晴らしい。
⑦「Grapevine Fires」/デス・キャブ・フォー・キューティー
Drums:ジェイソン・マックガー
ハーフタイム・シャッフルと言えば「セッション・ドラマーによる名演」というイメージも強いが、バンドによる名演も多数。その代表例がデス・キャブ・フォー・キューティーの6作目『Narrow Stairs』に収録され、後にシングル・カットされた「Grapevine Fires」(2009年年発売)。温かみのあるサウンドと、しなやかなグルーヴ感が魅力的な、ジェイソン・マックガーのハーフタイム・シャッフルは、ハイハットが4分音符中心の刻みで、その隙間にスネアのゴーストとキックを巧みに組み合わせて、3連符の心地良い流れを紡いでいく。スティックではなく、ロッズ系を使っているのもポイントで、乾いたゴーストのニュアンスや、しなりの効いたバック・ビートが特有の趣を醸し出している。
⑧「Redzone Killer」/シール
Drums:アッシュ・ソーン
イギリスのソウル・シンガー、シールが2015年に発表した『7』に収録された「Redzone Killer」。英国No.1セッション・ドラマー=アッシュ・ソーンが叩き出すハーフタイム・シャッフルは、歌を引き立てるスッキリした味つけでありながら、幹の太いグルーヴの存在感が際立っている。繊細なハイハットはチップでハットのボウ(上面)を中心に刻んでいるようで、澄んだ音色による軽快なバウンス感が特徴的。推進力を加える絶妙な間合いのバック・ビートや、弾力の効いたタムの音色も抜群で、随所で光るセンスの良さに、アデルやサム・スミスなど、大物アーティスト達のレコーディングに引っ張りダコという、その理由をうかがい知ることができる。
⑨「Straight up & Down」/ブルーノ・マーズ
Drums:なし
総売上1億を超える超人気シンガー、ブルーノ・マーズ。大ヒット・アルバム『24K Magic』に収録された「Straight Up &Down」は、打ち込みではあるがハーフタイム・シャッフルが光る楽曲だ。キックやスネアの基本的な部分は1小節サイクルになっていて、ハイハットの細かい刻みやハーフ・オープンにバリエーションを持たせて、幅のある流れを生み出している。バック・ビートに使用されている、リバーブの効いたクローズド・リム・ショット系の音色のヌケの良さも、曲の個性を引き立てるポイント。ウラ拍に1打だけ加えられた、軽めのスネアの音が流れを円滑に導く箇所にもセンスを感じる。
⑩「Empires」/エルボー
Drums:アレックス・リーヴス
本国イギリスでは高い人気を誇るバンド、ELBOW(エルボー)。全英1位になった昨年発表の最新作『Giants of All Sizes』から先行リリースされた「Empires」は、低めのピッチのスネアを用いた陰影に富んだグルーヴが、叙情的な曲調にベスト・マッチなハーフタイム・シャッフル(ドラムはアレックス・リーヴス)。バック・ビート以外の軽いタッチのスネアを、ダイナミクス豊かに絡めて、ヴォーカリストの心情を背後から支えるような卓越した表現力を聴かせてくれる。ディレイ風の効果を生み出す2拍3連系のゴーストを、要所に用いているのもポイントで、これが幻想的な雰囲気を助長していく。最新の音楽シーンにもハーフタイム・シャッフルは確かに息づいている。
ジェフ・ポーカロの関連記事はこちら
▼Analysis②