NOTES
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Ultimate Drum Technique #9-Metric Modulation Vol.1
- Text & Score & Video:Hiroshi Matsuo
CHAPTER9:メトリック・モジュレーション
みなさんこんにちは、松尾啓史です。今回は、インストゥルメンタルの楽曲やドラム・ソロなどで効果的な“メトリック・モジュレーション”というテクニックについてご紹介したいと思います。自在にコントールできようになれば、演奏者や聴き手を異なるタイムへと誘うことができると同時に、楽曲にスリルを作り出すことができます。リズムのパルスを別軸で捉えながら演奏する必要があるので、やや高度なドラミング・テクニックと言えます。
“メトリック・モジュレーション”とは?
メトリック・モジュレーションとは、元の楽曲のテンポを変えることなく、別のテンポへ切り替わったように聴かせる、あるいは前後のテンポに関連性を持たせた上でテンポ・チェンジすることを言います。
あまり認知はされていませんが、ノーマル・ビートからハーフタイム・ビートやダブルタイム・ビートへ移行するという流れも立派なメトリック・モジュレーションの一種です。音階のある楽器に転調という概念があるのと同じで、メトリック・モジュレーションは言わば、“リズムの転調”です。ドラマーの場合、1つのリズムやグルーヴを別の違う角度から解釈することで異なるタイム感覚を両立させ、その浮遊感を他のプレイヤーや聴き手と共有し楽しむために用いることが多いですね。
以前ご紹介させていただいたパーツの一部だけをモジュレートさせるワン・ポイント・モジュレーションとはまた一味違い、セット全体を用いてパルスを変化させることができます。
奏法パターン Ver.1
メトリック・モジュレーション Ⅰ
ここでは、3連符や0.75拍、2拍3連符のグリッド上で、別軸のグルーヴを構築してみたいと思います。あくまでもテンポは一定ですが、聴感上はまったく別のBPMでのリズム・パターンが聴こえてくると思います。
練習のコツは、自分自身が術中にハマってしまわないように口で“ワン、ツー、スリー、フォー”とカウンティングしながら演奏できるレベルにしておくことです。
間違っても“このフレーズを○○回やったら小節が解決する”というふうに数で覚えてしまう練習方法だけは避けてください。それは、その小節に対してのパターンをただ覚えただけであって、まったく応用力を伸ばすことができません。基調となる拍のアタマが、今モジュレートさせているリズム・パターンのグリッドのどこに各当するのかを理解しながら演奏することができれば、回数を数えてフレーズを逆算したりする必要はないからです。
また、プレイヤー同士のセッションなどでメトリック・モジュレーションを使う場合は、演奏者同士でのスリルや駆け引きを楽しみつつも楽曲が崩壊しないように注意しましょう。特にドラマーがテンポや拍の感覚を見失ってしまうと元も子もありません。万が一崩壊しても、それはそれで一興ではあるのですが、みんなを混乱させるためだけにモジュレーションを多用することはやめましょう。
Check!
メトリック・モジュレーション Ⅰのエクササイズ
モジュレートさせるフレーズによっては、テンポ・アップしたかのように聴かせるものもあれば、逆にスロー・ダウンしたような印象を与えるものもあります。今回はシンプルな8ビートやルーディメンツの手順を応用したパターン、あるいはボサノヴァのようなものやエスニックなモジュレート・パターンも用意しました。
どれも2小節や4小節で完結するパターンとなっていますが、モジュレートする感覚に慣れてきたら自分で尺を伸ばして練習してみても良いかもしれません。
奏法パターン Ver.2
メトリック・モジュレーション Ⅱ
続いて、シャッフル・ビートやバウンス・フィールに聴こえるメトリック・モジュレーションをご紹介します。
Check!
メトリック・モジュレーション Ⅱのエクササイズ
譜面を一見すると何の規則性もないように見えるかもしれませんが、実際に演奏してみると隠されたモジュレート・パターンが発見できると思います。3や6の音の塊を意識しながら、ぜひ浮遊感のあるグルーヴを楽しんでください。
まとめ
メトリック・モジュレーションをマスターした暁には、あなたはリズムで人を騙さずにはいられない身体になっているかもしれません(笑)。モジュレートは楽しいですが、あくまでほどほどにしつつ、音楽的なプレイを心がけてください。
Ultimate Drum Technique – BACK NUMBER
■CHAPTER 1:モダン・フット・ワーク
■CHAPTER 2:左足のハイハット・コントロール
▶︎上記2つについてもっと詳しく知りたい方は、リズム&ドラム・マガジン20年7月号をチェック!
■CHAPTER3:ゴースト・ノート
■CHAPTER4:ワン・ポイント・モジュレーション
▶︎上記2つについてもっと詳しく知りたい方は、リズム&ドラム・マガジン20年10月号をチェック!
■CHAPTER5:トラップ・ビート
■CHAPTER6:トラップ・ビート Vol.2
▶︎上記2つについてもっと詳しく知りたい方は、リズム&ドラム・マガジン21年1月号をチェック!
■CHAPTER7:オッド・グルーヴ
■CHAPTER8:オッド・フィル
◎Profile
まつおひろし:豊富なドラム知識を生かし、リットーミュージックより自身の執筆する教則本『究極のドラム・トレーニング・バイブル』をリリース。現在はリズム&ドラム・マガジンでプレイ分析や執筆を担当している他、ドラム・セット・プレイヤーとしてのみならず、ドラム・スティックを投げたり回したりと視覚的に楽しませるパフォーマーとして、東京ディズニーシーや打楽器アンサンブル・チームでの公演の経歴もある。また、サウンド制作スタジオ「INSPION」のメンバーでもあり、ゲーム音楽を中心としたレコーディングは多岐に渡る。20歳の頃より音楽教室でのレッスンなど、クリニシャンとして後世のドラマーの育成にも積極的に取り組み、吹奏楽からプログレまでジャンルを問わずさまざまなバンドでのライヴ・セッション活動を行っている。
◎Information
松尾啓史 HP Twitter YouTube