NOTES
Spring 2025
【A】=アルバム 【M】=ミニ・アルバム 【E】=EP 【V】=DVD、Blu-ray
【A】バーナード・パーディ『テスティファイ』

d:バーナード・パーディ
per:ステファン・サンフアン
別次元のコントロールをしながらも
与える印象はどこまでもハッピーでどこまでも甘い
バーナード・パーディの最新ソロ・アルバム『テスティファイ』(国内盤)が3月26日にリリースされた。バーナード・パーディといえば間違いなく世界最高のドラマーの1人であり、2024年に久しぶりの来日公演を果たしたことでも記憶に新しい。今作でもその聴き手の心と身体を操るかのような別次元の演奏を聴かせてくれている。もはや当然のことなのかもしれないが、あらためて演奏でコントロールしているものの次元の差を痛感する。タイミングというより聴き手の時間感覚。音の重い軽いではなく重力そのもの。それだけ別次元のコントロールをしながらも、与える印象はどこまでもハッピーでどこまでも甘い。強靭なグルーヴはもちろんだが、その一発でとろけてしまうような甘いシンバルの音色にもぜひ注目してみてほしい。最強のゲスト陣を迎えたこのアルバムで、現在進行形で伝説を作り続けるバーナード・パーディのその演奏を、ぜひ体感してもらいたい。(高橋 武/フレデリック)
◎Disc Information
【参加ミュージシャン】バーナード・パーディ(d)、ステファン・サンフアン(per、vo)、ビル・チャンプリン(vo)、ロベン・フォード/ケニー・ブラック/ウォルター・パークス(g)、チャック・レイニー/クリスチャン・マクブライド/ロイ・ベネット/ポール・ノーウィンスキー(b)、ジャック・ホーバン(vo、g)、ポール・シェーファー(vo、key)、スティーヴ・ジャンコウスキ(tp)、ニコラス・ビアード/ロブ・パパロッツィ/ヴァネス・トーマス/エマヌエーリ・アラウージョ(vo)、他
発売元:Pヴァイン 品番:PCD-26137 発売日:2025.03.26
【A】リンゴ・スター『ルック・アップ』

d:リンゴ・スター
リンゴのカントリー・ミュージック愛や
T・ボーンのリスペクトがビッシビシ伝わってくる
昨年12月にロンドンのThird Man Recordsで『ルック・アップ』の完成を祝ったパーティーが行われていて、T・ボーン・バーネット(11曲のうち9曲を作曲)や、ジミー・ペイジ、エリック・クラプトン、ロン・ウッドなどが集って楽しそうな写真が上がっていたので、最高なアルバムができたんだろうなぁと楽しみにしていました。リンゴ・スターのカントリー・ミュージック愛や、T・ボーンのリンゴへのリスペクトが、ビッシビシ伝わってきます。1曲目「ブレスレス」のビリー・ストリングスとの絡みもたまらんです(最初のドラム・フィルから)。ビートルズ初期のような“愛の衝動”を感じる歌詞や、“ブロークン・ハートな気持ち”、“でも希望はあるんだぜ”って言ってくれているような、84歳になっても自分の好きな音楽、仲間達と最高のメッセージを届けてくれるリンゴに大感謝です。日本で会いたいなぁ。PEACE&LOVE★LOOK UP!!(ジェットセイヤ/go!go!vanillas)
◎Disc Information
【参加ミュージシャン】リンゴ・スター(d、per、vo)、デニス・クラウチ(b)、T・ボーン・バーネット(g、b、p)、ダニエル・タシアン(g、cho、etc.)、ビリー・ストリングス(g、cho)、モリー・タトル(g、mandolin、vo、cho)、ポール・フランクリン(pedal steel guitar)、ロリー・ホフマン(g、cl)、コリン・リンデン/ジョー・ウォルシュ/グレッグ・レイズ(g)、マイク・ロハス/アンディ・ケイタ(p)、アリソン・クラウス(cho)、他
発売元:ユニバーサル 品番:UICY-16264 発売日:2025.01.10
【A】ドリーム・シアター『パラソムニア』

d:マイク・ポートノイ
ドラム1つ1つの音の分離が良く
ポートノイのお馴染みのフレーズが随所に炸裂
オリジナル・ドラマーであるマイク・ポートノイ復活という衝撃のニュースから待ちに待った復帰作‼︎ そういった背景もあり、今作はかなりドラムにスポットが当たっていると言って良いアルバムに仕上がっています。タムのサウンドなど、ドラム1つ1つの音の分離が良く、手足のコンビネーション・プレイや3連符を駆使したフィルなど、ポートノイのお馴染みのフレーズが随所に炸裂していて、まさに“マイキー is back‼︎”という印象です! 特に「Night Terror」は派手なフィルからの王道メタルなギター・リフ、そしてキメといった流れが最高で、サビもキャッチーさがありながらしっかりプログレな展開もあり、まさにドリーム・シアターらしい魅力に溢れた曲に仕上がっています。「A Broken Man」でのコーラスにポートノイの声が帰ってきたのも胸が熱くなります! しっかりとテーマのあるアルバムなので、通して聴くと映画1本見終わったような充足感を感じることができます! 最高の1枚です!(Allen/Serenity In Murder)
◎Disc Information
【参加ミュージシャン】マイク・ポートノイ(d)、ジョン・マイアング(b)、ジョン・ペトルーシ(g)、ジョーダン・ルーデス(key)、ジェイムズ・ラブリエ(vo)
発売元:ソニー 品番:SICP-31750 発売日:2025.02.07
【A】ONE OK ROCK『DETOX』

d:Tomoya
ワンオクによるロック逆襲絵巻
Tomoyaのドラミングも激しさに満ち満ちている
リリース日が迫るごとに徐々に解禁されていく情報や先行楽曲から、多分こうくるだろう、とある程度の予測は立てていた。しかしここまで一貫したバンド・サウンドに立ち戻った形で構成されているとは。前作の煌びやか(であることに、世間に対する痛烈な皮肉を感じたのだが)な要素は鳴りを潜め、シリアスなトーンの中で鳴らされる生楽器と歌は、満足できぬ現状へのもがきや叫びのよう。歌詞もストレートに“疑問を持つこと”、“怒りを持つこと”、“それに伴って行動すること”をこちらへ投げかけるような言葉が並ぶ。ワンオクによるロック逆襲絵巻といったところであろうか。Tomoyaのドラミングも激しさに満ち満ちている。M4冒頭の3連キックやM5のフィルの豊かなバリエーション、M6イントロの複雑怪奇なフレーズやトリッキーなキックにスパイス的なツーバス使いなどはマジで聴き逃し厳禁。どこまでも伸びやかなメロディが目が眩むほどに美しいM2はヘビロテ確定。(庄村聡泰)
◎Disc Information
【参加ミュージシャン】Tomoya(d)、Ryota(b)、Toru(g)、Taka(vo)
発売元:ワーナー 品番:WPCR-18719 発売日:2025.02.21
【A】チック・コリア・トリオ『トリロジー3』

d:ブライアン・ブレイド
人間にしか成し得ない感情&芸術を
人間とは比べものにならない高い次元で表現し続ける
2021年2月9日に歴史的偉人チック・コリアがこの世を去ってから丸4年……彼の最後のプロジェクトが2010年からスタートした、現存する最高峰の2人、クリスチャン・マクブライドとブライアン・ブレイドとの奇跡のトリオ。2013年の第1弾『トリロジー』、2018年の第2弾『トリロジー2 』と2作連続でグラミー賞を獲得。そして何とこのタイミングで、その直後の2019〜2020年のツアーからの未発表ライヴ・テイク集がリリース。ブライアン・ブレイド……個人的には目の前で観られる機会があったらすべて観ないわけにいかない、自分にとってもはや完全に人類の能力を遥かに超えた宇宙人レベルのスーパー・ヒーロー。しかも人間にしか成し得ない感情&芸術を、人間とは比べものにならない高い次元で表現し続ける。人類には不可能という、あまりにも正確無比で高すぎる技術を終始駆使しながら、それを一切感じさせない、果てしなくソウルフルな真の芸術家による、またしても100%以上の感動。(沼澤 尚/シアターブルック、ブルーズ・ザ・ブッチャー、他)
◎Disc Information
【参加ミュージシャン】ブライアン・ブレイド(d)、チック・コリア(p)、クリスチャン・マクブライド(b)
発売元:ユニバーサル 品番:UCCJ-3048 発売日:2025.02.28
【A】パフューム・ジーニアス『Glory』

d:ジム・ケルトナー/ティム・カー/ブレイク・ミルズ
ジム・ケルトナーが現代ポップスで織り成す
奇怪で大陸を表現するような図太いリズム
2010年代USインディー・シーンを代表する天才音楽家、パフューム・ジーニアスのまさに集大成と言える大傑作アルバム。ポップとアメリカーナを最大限に昇華したサウンドを作り上げたのは、プロデューサー兼現代ギタリストの最重要人物の1人、ブレイク・ミルズ。このタッグによるサウンド・スケープの素晴らしさに鳥肌を立てながら、酔いしれた。参加ドラマーはブレイク・ミルズ作品には欠かせないザ・レジェンド=ジム・ケルトナー(ボブ・ディラン、ジョン・レノン、etc. )の他、ティム・カー、ブレイク・ミルズ。ジムさんが現代ポップスで織り成す、奇怪で大陸を表現するような図太いリズムが、どえらいことになっています!!(神谷洵平/赤い靴)
◎Disc Information
【参加ミュージシャン】ジム・ケルトナー(d、per)、ティム・カー(d、per、cho)、ブレイク・ミルズ(b、g、p、syn、d、per、etc.)、マイク・ハドレアス(vo、p)、パット・ケリー(b)、メグ・ダフィー/グレッグ・ウルマン(g)、アラン・ウィッフルズ(p、organ、fl、cho)
発売元:Matador/ビートインク 品番:OLE2105CDJP 発売日:2025.03.28
【A】Steve Smith & Vital Information『New Perspective』

d:スティーヴ・スミス
曲への対応の安定性と懐の深さがより増している印象
ジャズ・フュージョン好きには必聴のアルバム!
2023年に活動40周年を迎えたスティーヴ・スミスのライフ・ワークとも呼べるグループの最新作。今作ではトリオ編成となり、スティーヴが過去在籍したジャーニーやステップス・アヘッドの楽曲を多く取り上げているが、そう言われなければわからないようなジャズ・アレンジも施され、ジャズとフュージョンの壁を完全に取っ払ったようなプログレッシヴ・ジャズといった内容である。変拍子を用いた楽曲も多く、彼が長年研究しているトニー・ウィリアムスと同じような3フロア・タムでプレイしていて、持ち味のドラミングはそのままに、“トニー風味”が加味され、曲への対応の安定性と懐の深さはより増している印象。ジャズ・フュージョン好きには必聴のアルバム!(菅沼道昭/る*しろう)
◎Disc Information
【参加ミュージシャン】スティーヴ・スミス(d)、ヤネク・グイズダーラ(b)、マニュエル・ヴァレラ(key)
輸入盤(配信リリース) 発売日:2025.02.07
【A】Sachal Vasandani『Best Life Now』

d:ネイト・スミス
ASMRのような耳心地の良さと
気の利いたフレージングがもたらす興奮の両立
パンデミックの混乱と閉塞感にアーティストとして真摯に向き合い、そのときにしか生まれ得なかったであろうエモーションを、歌とピアノだけの静謐な音世界に落とし込んだ前2作は、とても美しかった。それに続く新作はタイトルからも感じられる通りのポジティヴな開放感に溢れている。サシャルの表現力と楽曲自体の魅力もさることながら、今作のトータル・プロデュースを務めたネイト・スミスの手腕がとてつもなく素晴らしい。ASMRのような耳心地の良さと気の利いたフレージングがもたらす興奮の両立は、なかなか成し得ることではない。録音/ミキシングを含めた楽曲ごとのカラーリング・センス、当然ながらドラムの音色と演奏もいちいち素敵です。(木暮栄一/the band apart)
◎Disc Information
【参加ミュージシャン】ネイト・スミス(d)、ブライアン・コッカハム(b)、チャールズ・アルトゥラ(g)、ジョン・カウハード(p)、デイナ・スティーヴンス(sax)、サシャル・ヴァサンダーニ/グレッチェン・パーラト/シャイナ・スティール(vo)
輸入盤(配信リリース) 発売日:2025.02.14
【V】Petit Brabancon『Petit Brabancon EXPLODE -02- “LIVE LOG”』

d:yukihiro
正確無比なドラミングの中にも確かな感情が存在
その姿はまさに猛獣そのもの
これだけヘヴィなサウンドの中でも、オープン・ハイハットやクラッシュでのビートは一切使用せず、絶妙なダイナミクスの変化と緻密に構築されたドラミングには、確かなテクニックと美学を感じます。クリア・
ピンストライプを装着したメイン・スネアの存在感は強烈で、ブレイクビーツとの馴染みも最高でした。ロートタムやダブル・ストロークのフィル、複雑なスリップ・ビートが多用されていて、無機質でありながらもしっかりと楽曲に色を与え、アンサンブルを導いていました。特にトレードマークであるセンターのチャイナを絡ませた畳みかけるようなフレーズは圧巻で、正確無比なドラミングの中にも確かな感情が存在し、その姿はまさに猛獣そのものでした。(KYOHEY/XY)
◎Disc Information
【参加ミュージシャン】yukihiro(d)、高松浩史(b)、ミヤ/antz(g)、京(vo)
発売元:DANGER CRUE RECORDS 品番:DCXA-9 発売日:2025.02.21
【A】THE ORAL CIGARETTES『AlterGeist0000』

d:中西雅哉
同期を完全に“従えた”と感じざるを得ないほど
バンドとしての進化が窺える
同期を大胆に取り入れた『SUCK MY WORLD』から4年半、今作ではその同期を完全に“従えた”と感じざるを得ないほど、バンドとしての進化が窺える。中西のドラム・サウンドもより太く、よりクリアに、プレイは潔さと彼らしいトリッキーなフレージングが同居し、格段にスケールアップ。作曲やゲスト・ヴォーカルなど、多くのコラボによって中西も大いに刺激を受けたのだろう。特にcoldrainのMasatoが参加したM3は必要最低限のアプローチで大きなグルーヴを生み出し、まるで海外ドラマーが叩いているかのようなパワーと貫禄を感じる。一方M8やM11、M13では中西のアイディアが爆発。山中の歌を押し上げる合間に、曲をドラマチックに展開させるアプローチこそ、THE ORAL CIGARETTESの真髄である。(笹 京佑/リズム&ドラム・マガジン編集部)
◎Disc Information
【参加ミュージシャン】中西雅哉(d)、あきらかにあきら(b、cho)、鈴木重伸(g)、山中拓也(vo、g)
発売元:ポニーキャニオン 品番:PCCA-06351 発売日:2025.01.22
【A】マチルダロドリゲス『月夜のモンキーダンス』

d:小関純匡
メロディにぴったりくっついてギター/ベースと絶妙に混ざる
オープンなドラム・サウンドでのビートの気持ち良さ
小関純匡のイマーシヴ・ドラム炸裂! メロディにぴったりくっついて、かつギター/ベースの音色と絶妙に混ざるオープンなドラム&シンバル・サウンドでのビートの気持ち良さは、それだけで曲に没入してしまうが、「昭和月光伝」で突然の“Tomorrow Never Knows”フレーズや、「GGの香り」バースでの“ドドンパ!”からアフロ8ビートへの戻りなんてハンパないカッコ良さ。「自由が一番」シャッフル・ビートはブリティッシュから“えらいこっちゃ”まで出てきて締め方も巧妙! 「夫婦別姓の歌」、「四割増し」はままトゥンバオだし、「ぶつかりそう」の4+3拍リフもあって、本作はとにかくリズムの宝庫! そして「バソキヤ」の激ロックで大爆発だ!(村田誠二)
◎Disc Information
【参加ミュージシャン】小関純匡(d)、笠原直樹(b)、玉城宏志(g、vo)
発売元:ミディ 品番:MDCL-1566 発売日:2025.01.22