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【連載】博士 山本拓矢がデジマートで見つけた今月の逸品 ♯8

  • Photo & Text:Takuya Yamamoto
  • illustration:Yu Shiozaki

第8回ZILDJIAN 16″ K Dark Crash Thin

ドラム博士=山本拓矢が、定番商品や埋もれた名器/名品など、今あらためて注目すべき楽器たちを、楽器ECサイトであるデジマート(https://www.digimart.net/)で見つけ、独断と偏見を交えて紹介する連載コラム。第8弾はシンバル選びのポイントなどを詳しく解説しつつ、博士が選んだ逸品に焦点を当てていきます。

いつもご覧いただき、ありがとうございます! 突然ですが、シンバルのウェイトと、サウンドの関係は把握できていますか? 今回はいつものようにお勧めモデルを紹介しつつ、運用のヒントや選択のポイント、シンバル・ワードローブの揃え方など、新品中古問わず、楽器探しの参考になりそうな情報としてまとめてみたいと思います。

シンバルのサウンドを決定する要素はたくさんあります。大きさ、表面の仕上げ、形状、ハンマリング、コンディションなどなど。その中でも数字で把握しておくことで、理解の解像度が一段階上がるのがウェイト。シンバル自体の重さです。ドラマー同士の会話で通じるであろう、一般的な表現としては、薄い方から、ペーパー・シン(エクストラ・シン)、シン、ミディアム・シン、ミディアム、ミディアム・ヘヴィ、ヘヴィ、エクストラ・ヘヴィといったものが挙げられます。

ウェイト/重さ/重量と謳いつつ、厚みに関しての情報にも言及しているのがポイントで、ライト、ミディアムといった表現も一般的です。“重い”の対義語は“軽い”、“厚い”のそれは“薄い”だと思いますが、シンバルにおいては“薄い”に対して“重い”という構図になっていることがやや独特ですね。それらの概念をまとめて、“ウェイト”という言葉で括っていることを記しておきます。

“ウェイトの違いで何が変わるか?”という問いに対して、真っ先に挙がるのはピッチ(音程)でしょう。重いとピッチが高く、薄いとピッチは低くなります。重いシンバルをごく小さな力でそっと弾くと低域が強調されますが、薄いシンバルでそれを行った場合、相対的に高域が出やすいので、シェイプやベルからエッジにかけてのウェイトの分布との関係もあって、逆の性質であると感じられる場合もあります。この特性については、“同じモデルで、重さが違うもの同士を、演奏するときのタッチで鳴らしたときに、ピッチがどうなるか?”という観点で捉えていただくと、理解しやすいと思います。その他、音の広がりやサステイン、ボリュームなどにも影響がありますが、これらは他の要素との兼ね合いも大きいので、今後の楽器の紹介に織り込んでみることにします。

さて、ここで数字の領域に進んでまいります。

自分の好みや基準となる重さを、具体的な数字で把握しておくと、シンバル選びが効率的になります。例えば、20″のライドは1,950g前後、18″は1,200g台、といった具合いです。仮に「しなやかで、タッチに敏感に反応する、22″のライド」を探そうとしたとき、3,000gオーバーの楽器は試す前に除外できる、ということです。デジマートでシンバルを検索する際、キーワードに“g”の一文字を入れると、グラム表記がなされているものが見つかりやすくなるので、ぜひ検索してみてください。なお、同じ重さでもピッチが同一とは限らず、ある程度の幅は容易に逆転しうるので、あくまで1つの側面ではありますが、把握しておいて損はないものです。

参考までに、私はレコーディングに臨むとき、16″のクラッシュをピッチ違いで重点的に持参します。昨今、世界的にクラッシュ・シンバルの大型化が進んでおり、16″を選択するドラマーは減少している印象ですが、セクションのアタマに鳴るアクセントとしてのクラッシュのピッチが曲の印象に与える影響は大きく、ハイハットを除いたシンバル同士のハーモニーのトップノートを担う1枚の重要性を、高く評価しているためです。

ということで、今回紹介するのはZildjianの16″ K Dark Crash Thinです。

今月の逸品 【ZILDJIAN 16″ K Dark Crash Thin

マイナーチェンジを繰り返しながら製造され続けているモデルで、私自身も80年代の個体をメインの1枚として愛用しています。16″という小さな口径ならではのピッチの高さと、薄さと口径に由来する立ち上がりの速さ。Kらしいダークな倍音構成。音ヌケとブレンドのバランスに優れ、交換候補としてA Zildjianシリーズのような、より明るいトーンのシンバルも存在しつつ、シリーズ内にもわずかに厚めなK Dark Crash Medium Thinや、さらに薄いK Cluster Crashなども存在し、ベーシックとして据えるのに適した要素を持つモデルです。

表面。モデル名にはシンとミディアム・シンが含まれていませんが、アメリカ製K ZildjianのDark Crashという系譜に連なる楽器です。この個体は1,105gで、Kロゴは元々印刷されていません。
裏面には現行と同じビッグロゴが入ります。

今回はZildjianで整理しましたが、各社この楽器に相当するシンバルがラインナップに存在しています。K Dark Crash Thinが幅広くお勧めできる楽器であることは間違いありませんが、好きなドラマーが使っているメーカーを使いたいというニーズもあることでしょう。

16″ K Dark Crash Thinの音色はこちらの動画からチェック!

数字で情報を記す文化もだいぶ浸透してきた印象ですが、まだまだ専門的な知識の領域でもあります。これまで気にしたことがなかった方は、この機会に、具体的な重さを参考情報として取り入れてみてください。きっと理解が深まります!


Profile
ヤマモトタクヤ●1987年生まれ。12歳でドラムに出会い、高校時代よりプレイヤーとして音楽活動を開始。卒業と同時に入学したヤマハ音楽院にて、さまざまなジャンルに触れ、演奏活動の中心をジャズとクラブ・ミュージックに据え、2013年、bohemianvoodooに加入。 音楽と楽器の知識・スキルを生かして、ドラム・チューナーとしてレコーディングをサポートしたり、インタビュー記事や論説などの執筆業を行うなど、音楽全般への貢献を使命として活動中。

Twitter:https://twitter.com/takuya_yamamoto

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