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【連載】博士 山本拓矢がデジマートで見つけた今月の逸品 ♯10

  • Photo & Text:Takuya Yamamoto
  • illustration:Yu Shiozaki

第10回PURESOUND CUSTOM SERIES P1416

ドラム博士=山本拓矢が、定番商品や埋もれた名器/名品など、今あらためて注目すべき楽器たちを、楽器ECサイトであるデジマート(https://www.digimart.net/)で見つけ、独断と偏見を交えて紹介する連載コラム。第10回目は交換パーツであるスネア・ワイヤーにフォーカス。セッティングのポイントを含めて掘り下げていきます!

いつもご覧いただき、ありがとうございます! 今回は、さまざまな音色にアプローチできる交換パーツ、スネア・ワイヤーに注目してみます。

ヘッドに比べて消耗がわかりにくく、そもそも交換したことがない方や、切れるまで交換しないという方も少なくないと思いますが、スネア・ワイヤーはスネア・ドラムの音色を構成する上で、重要なパーツです。音量感や音色はもちろん、タッチへの追従性は、ワイヤー、コード(テープ)、ストレイナーのセッティングで大きく変化します。

定番から変わり種まで、さまざまなメーカーのものを100本ほど所有する博士

ドラム・メーカーが自社で開発している純正スナッピーは、楽器の特性にあった設計になっていることが多く、ベストな組み合わせの1つであることは間違いありません。それを踏まえつつ、スネア・ワイヤー専業メーカーとしてスタートし、現在は米国のD’Addario傘下にある、PURESOUNDのワイヤーを軸に、スペックから導き出される性質と、セッティングのポイントを解説して参ります。

多くの楽器で優れたパフォーマンスを発揮できる、交換用スナッピーの代表格と言えるのが、PURESOUND CUSTOM SERIESP1416です。

今月の逸品 【PURESOUND CUSTOM SERIES P1416

日本市場では伝統的に20本ワイヤーが標準とされてきましたが、PURESOUNDはこの16本を標準として開発/発売されました。0.55mm径のスティール製ワイヤーと、フラットでプレーンなデザインのカッパー製エンド・プレート、細かめに巻いて質量と柔軟性を稼いだコイル形状という組み合わせです。明るく、硬質な響きを付与するクロームメッキは施されていません。以前は、金属製の芯が入った、ほとんど伸び縮みしない、特殊なブルーケーブルが同梱されていましたが、現在は、同社のクラシック/コンサート・スネア向けのモデルに採用されていた、やや伸縮性の大きいブラウン・コードが同梱されています。

前述のようにしっかりした作り故に、パワフルで発音がはっきりしているので、16本程度でも十分な音量感が得られます。同仕様で本数だけが異なる20本(P1420)、24本(P1424)、本数に合わせて全長が短縮されているSuper 30(S1430)といったバリエーションがあるので、まずはこの16本から試すのがオススメです。

バリエーションの例。時期により、プレートのデザインが異なるとのこと。
同仕様で20本タイプのP1420

また、より繊細な反応を求める場合、1割ほど細い0.5mm径のワイヤーが使われている、C1412もオススメです。巻きが緩く、細くしなやかなワイヤーは、全体的に軽量であることもあって、タッチに対して敏感に応えてくれます。繊細一辺倒ではなく、キレの良さもあるので、ヘッドの振動が長くなりがちなロー・ピッチのスネアに合わせるのも性質を生かした使い方と言えるでしょう。

左から、C1412、P1416、C1416。コイルの巻幅が異なっているのがわかるだろう。

セッティングのポイント

セッティングのポイントは、プレッシャーとテンションの関係を理解することです。プレッシャーはワイヤーをヘッドに押しつける力、テンションはワイヤー自体にかかる張力です。一般的なスネアは、この2つのパラメーターを独立して調整することができず、例えばプレッシャーをかけようとすると、同時にテンションも高まってしまいます。テンションを低く保つと、ワイヤーは自由に振動できるので、敏感に反応してくれます。テンションが上がると、反応する閾値が上がり、残響のキレが良くなる方向に作用します。ただし、テンションをかけてゆくことで、製造時に生まれるワイヤーごとのテンションの差が減少して、弦楽器に張った弦のように固有のピッチを持ち始めるため、ヘッドの振動との共振が発生してくるので、それを念頭において、締めたり緩めたりすることも必要になってきます。

テンションには、保持するコードやテープなどの伸縮性と、引っ張り角度が影響します。伸縮性がない金属製のコードや、プラスチック・テープなどを用いると、テンションが低いまま、プレッシャーをかけることができます。逆に、多少の伸縮性がある紐を用いると、適切なプレッシャーに至るまでに必要なテンションが上がるので、結果としてテンションが高めになります。コードの方が全体が自由に振動して、繊細な反応をするようなイメージをお持ちの方もいるかもしれませんが、むしろテープの方が敏感に反応してくれる場合もあるので、セッティングの容易さと安定性、耐久性などを天秤にかけながら、いろいろ試してみるべきでしょう。

引っ張り角度は、コードとフープもしくはエッジの接点の角度を指しており、90度を最も鋭角とすると、鈍角になるほど、テンションが上がります。打面を床と平行にセットしたとき、奏者から見て真上に引っ張り上げるとテンションが低く保たれ、外に開くほど、テンションが高くなるということです。この角度は、ストレイナーの構造にもよりますが、調整幅に連動する傾向があります。

調整幅をテンションが低く保たれる側(締めつけた側)で運用すると、コードの全長が伸びるため、コード自体の伸縮性が増し、結果としてテンションは高くなる方向にも作用します。調整ノブを回す方向に対して、パラメーターの合計が変化する幅が一定ではなくなるどころか、同じベクトルに向かい続けるとも限らないのが、楽器本体によってさまざまな表情を見せることのあるワイヤーの面白いところであり、難しいところでもあります。

というわけで、まずは交換用スナッピーを1つ購入して、純正の紐やテープとの組み合わせで、4種類を試してみてください。この関係を整理して把握しておくことで、起きている事象に対し、意思に沿った方向に舵を切ることができるようになります。

エンドプレートの折り曲げ回数で、角度をつけたタイプの例。
奥からCustom、Blaster、Customと並ぶ。
Customは水平に引っ張るフラットなタイプ、Blasterは引っ張る力を利用して、ワイヤーをヘッドに押しつける構造の、くの字型に折り曲げたタイプ。
くの字型のバリエーション。緩めに張ると繊細に反応し、きつめに張るとキレの良さが際立つ傾向があるという。
自然なテンションのかかり方になる、フラットなエンドプレートのタイプ。
コイルの高さに合わせた金属製の2回折り曲げが一般的だが、溶かしたプラスチックにコイルを封じ込めた、いわゆるプラエンドも存在。

Profile
ヤマモトタクヤ●1987年生まれ。12歳でドラムに出会い、高校時代よりプレイヤーとして音楽活動を開始。卒業と同時に入学したヤマハ音楽院にて、さまざまなジャンルに触れ、演奏活動の中心をジャズとクラブ・ミュージックに据え、2013年、bohemianvoodooに加入。 音楽と楽器の知識・スキルを生かして、ドラム・チューナーとしてレコーディングをサポートしたり、インタビュー記事や論説などの執筆業を行うなど、音楽全般への貢献を使命として活動中。

Twitter:https://twitter.com/takuya_yamamoto

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