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Archive – 今だからしたい“楽器の大掃除”その1 スネア・ドラム・メンテナンス

  • Contents:Rhythm & Drums Magazine Text:Naoki Ito[riddim Custom Drums] Photo:Takashi Yashima

新型コロナウイルスの影響で続く外出自粛期間。家で過ごす時間が増えたことにより、あらためて楽器と向き合うドラマーが増えたのではないだろうか。そこで、ここでは2020年2月号(2019年12月発売)に掲載された“楽器の大掃除”企画をあらためて掲載。この機会に、愛器のコンディションを整えてみては?

はじめに〜メンテナンスの考え方〜

みなさんはどのくらいの頻度でメンテナンスをしているでしょうか? スネア・ドラムの場合、ヘッド交換の際に軽く拭いてテンション・ボルトにグリスアップ……という程度の方が多いのではないでしょうか。

使用後に乾拭きをするだけでもサビやホコリから楽器を守ることができますが、それもなかなか難しいもの。使用頻度にもよりますが、年に1度くらいは分解してのフルメンテナンスをお勧めします。

分解して組み直すだけでもサウンドが変わることがあるというリスクはあるものの、メンテナンスすることで楽器が良いコンディションで長持ちするのであれば、それに勝るものはないでしょうし、分解することで楽器の構造を知る良い機会だと思います。それではさっそく、まずはスネア・ドラムのメンテナンスから見ていきましょう。

スネア・ドラム編

メンテナンス・アイテム

メンテナンスに使用するアイテムのほとんどがホームセンターなどで比較的安価に入手できるもの。車用の油落としクリーナーやグリス、スチール・ウール以外は家庭にあるもので対応可能です。ヤマハのパーカッション・ポリッシュ(楽器店で購入可能)は、金属パーツだけでなくシェルのクリーニングにも使え、ワックス効果もある優れものです。

写真左上から時計回りに、2L用ペットボトルを半分に切った容器(洗浄用とワックス用)、綿棒、ヤマハのパーカッション・ポリッシュ PP1(クリーナー)、KUREのブレークリーン(金属パーツの汚れを落とす強力洗浄剤)、AZのホワイトグリース(金属専用潤滑剤)、プラス/マイナス・ドライバー、ドライバー型ハンドルのボックス・レンチ、ラジオペンチ、スチール・ウール、使わなくなった歯ブラシ、金ブラシ(ワイヤーブラシ)、細かなパーツを入れるトレイ、使い古したタオル。

※スチールウールは000番以下の細かいものを使用。ブラックやゴールドのパーツには使用不可。色が剥げてしまいます。

メンテナンス

Point
メンテナンスは大きく分けて、“クリーンアップ”と“グリスアップ(ワックス・コーティング)”の2つに分類されます。グリスの重ね着けは、逆効果(ホコリを寄せつけてしまう)となることもあるので、とにかく一度油や汚れを落とすことが重要です。そのためにも分解が必須なのです。

▲今回メンテナンスしたスネア・ドラムはラディックのクラシック・メイプル(14″×5″)。

スナッピー、テンション・ボルト、フープ、表/裏のヘッドを取り外す。

ストレイナー、バット・プレートを取り外す(全面当たりなど、複雑な機構のパーツで復元が難しい場合は無理に外さない)。

ラグを取り外す(細かなパーツが多いため紛失に注意)。六角頭のボルトの場合は、ネジ穴があってもボックス・レンチを使うことでネジ穴の破損を防ぐことができる。

すべてのパーツが取り外されたシェル。

外したパーツやボルトは、種類別にまとめてトレイに保管する。

ラグナットを固定している留め具(写真の黒いパーツ)をラジオペンチで抜き取る。

留め具を外すとラグナットが脱落し、ラグの分解が完了。

ペットボトルの容器にラグナットと留め具を入れ、洗浄スプレー(油落とし)を吹きかけ、ガラガラとシェイク。

布の上に取り、拭き取る。

ラグナット内部にグリスが残っている場合は綿棒を使いかき出す。

ラグ・フレームも洗浄スプレーで油を落とし、拭き取る。

表面にサビが出ていたり、曇りがひどい場合は、スチールウールで磨く(メッキの内側がサビで腐食している場合は不可)。

ストレイナー、バット・プレートも同様に分解し洗浄(ストレイナーはメーカーやモデルによって構造が異なり、複雑な構造の場合は無理に分解しない)。

テンション・ボルトからワッシャーを外し、それぞれ洗浄スプレーをし、シェイクした後、拭き取る(ワッシャーが磨耗している場合は交換)。

テンション・ボルトが曲がっていないかチェック。そして、ネジ部分にサビが出ている場合は金ブラシで落とす。

洗浄を終えたパーツはそれぞれクリーナーを垂らした後、軽くシェイクし、ワックス・コーティング。

綺麗な布で拭き取りつつ磨く。

フープもサビが出ている場合はスチールウールで磨く。

布にクリーナーを垂らしフープ全体に塗布し磨く。

同様に布にクリーナーを取り、シェルの汚れを落としつつワックス・コーティング。

ラグ、ストレイナー、バット・プレートを組み立て、シェルに装着。

ヘッドとフープを載せる。

テンション・ボルトにワッシャーを取りつけ、ネジ部分の下部1cm程度に歯ブラシでグリスを塗布。

余分なグリスを布で拭き取り(ここが重要:グリスの塗りすぎはゴミやホコリを寄せつけ、逆効果になることも)、ラグに通し、ヘッドに軽くテンションをかける。

スナッピーもクリーナーで汚れを落としておく。このときコイルのヨレなどがないかチェック。

スナッピーを取りつける。ケーブルやベルトが傷んでいる場合は交換する。チューニングを施し、メンテナンス完了。

●講師

伊藤直樹
[riddim Custom Drums]

Profile●いとうなおき:ドラマー、パーカッショニストとしてレコーディング、ライヴ・サポートを中心に活動する一方で、ドラム・レンタル、チューニング、リペア、カスタマイズなどを通じて国内外のドラマーをサポートしているドラム・カンパニー「NASH」に所属。ドラムテックとして幅広い現場で経験を積む。2014年、自らの工房「riddim」(https://www.riddim.info)を設立し、オリジナル・ドラムの開発、製作、販売を行っている。

さらに詳しく知りたい人は

『リズム&ドラム・マガジン
ドラム・チューニング&メインテナンス・ブック』
ISBN:9784845618903